0330頃には薄明るくなり始め小鳥の声も聞こえ始めます。
0400頃に起床し身支度を整え、0430北広島の人たちにお先にと声をかけ、いざ出発です。
天気は薄曇りですが、低い霧から変わったような層雲が山肌に掛かっていて気がかりです。
山荘を出てすぐにニシュオマナイ川を右岸に渡ります。このときの状態で山靴のまま行くか、沢靴にするか決めようと思っていましたが水量は多くなく、山靴のまま進みます。
30分程は川に沿った林の中の道を行きますが、やがてニシュオマナイ川の河原に出て徒渉を繰り返しながら進みます。要所要所には徒渉地点を示す赤テープや石積みがあるのですが、間違えやすいところもあるので注意が必要です。
出発して約2時間で710m二股、ここまではイメージ登山のお陰でしょうか、極めて順調です。
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ニシュオマナイ沢
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さて、ここからがガイドブックの梅沢さんによれば「急峻な尾根の登山道はいかにも日高らしい」と言う尾根に取りつくことになります。
取りついている尾根にも、南側の尾根にも所々雪が残っています。トドマツの樹林を抜け岳樺の林に入るころ、気がかりだった低い雲が一面に広がり、とうとうその中に入ってしまいました。
ガスで視界は30〜50m位。風も強くなってきて、霧雨も降ってきました。
カンカン照りよりはずっとマシだと言い聞かせ登り続けますが、いやはやとてつもない急斜面です。
木の根や笹に捉まりながら芋虫のように這い上がって行きます。
キツイ、苦しい、つらい、シンドイ、50歩行っては一休み、30歩登っては一息です。
そんなとき励ましてくれるのは、可憐に咲いている花達です。
数も種類も多くないのですが、いつもは足下にあるのに急斜面のため目の前で咲いています。
「ありがとう、頑張るよ」と声をかけ、黙々と登ること2時間半。
やっとの思いで稜線に出ましたが、ガスのため地形判読もままなりません。
傾斜が緩やかになってきたのと時間からそろそろだろうと思っていると、道の真ん中に倒れてしかも横真っ二つに割れた看板標識が。
離れ離れになっていて、何て書いてあるのか分かりません。
離れていた片割れを引っ張ってきて、繋ぎあわせて、神威岳山頂を確認です。
勿論、期待していた日高の大展望は望むべきもありません。
それでも時々薄明るくなる空に期待して、40分程強風と雲の中、イジイジと待ったのでした。
下山開始です。今年還暦を迎える私にとって、下りは正念場です。
小さなステップで足を置ける場所を探しながらビブラムに体重を平均に掛けて慎重に降りていきます。
こんな時、私にとってはストックが大変強い味方です。これが無いと降りると言うより、落ちるに近くなりそうです。
カラマツソウ
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ミヤマハンショウズル
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やっとたどり着いた710m二俣、大きなテーブル状の岩を見つけて食事と大休止です。
ここまで降りてくると雲の下に出て暖かく、急勾配の下りを終えての安心感からか、ウトウトしてしまいました。
ここからはゴロゴロ石の河原歩き、有終の美を飾るためにも慎重に歩きます。
でも何処かに安心感と気の緩みがあったのでしょう、赤いテープが見えないなと思いつつその内合流するだろうと歩いていくと函に。
両側は崖になっていて水に落ち込んでいます。
水面に出ている大岩を辿っていけば行けそうな感じもします。
行こうと決心しかけた時もう一人の私が、「今日の計画には沢歩きは入っていないぞ!それに沢歩きは大昔ちょっと体験したぐらいじゃないか!」と。
結局、元の道まで戻り、赤いテープを探し直して山荘まで戻りました。
この間20分程度のロスでしたが、色々反省すべき出来事でした。
ミヤマキンポウゲ
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オオイワツメクサ
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今回の神威岳登山を振り返ると、確かに大展望を楽しめず残念な思いもありますが、何とも言えない充実感で1杯です。
この何年か、いや十数年、私は只楽しいからと何となく山に行っていたのではないか。
そこには惰性やマンネリに近いものがあったのではないか。そんな気がするのです。
今回は、新しい事に取り組む姿勢で、チャレンジ精神で、準備をし気持ちを高めてきました。
それが忘れかけていた、充実感を味合わせてくれたような気がします。
良い経験でした。良い山行でした。今後の人生にとっても。
苦しく、頑張っていた急斜面で、何十年も忘れて思い出す事も無かった、かって好きだった言葉を突然思い出しました。
体が覚えていたものが、日高の山で湧き出してきたのでしょうか。
きっと私にとって、日高と同義語のような存在になるのではと思います。
"NO GUTS, NO GLORY"
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