風不死岳(1102m) 樽前山(1041m)(道央)  2003.9.22-24



紋別岳からの風不死岳と樽前山

風不死岳、樽前山は支笏湖の湖畔方面から見ると、丁度正面に並んで端正な佇まいを見せています。
樽前山が火山礫で生木が生えないためスッキリした山のラインと隣り合わせているのに深い樹林に覆われた風不死岳は対照的な印象です。


9.24(水)
地点 所要時間
7合目ヒュッテ
風不死岳分岐 0:45
風不死岳山頂 1:30
樽前山西山 2:00
樽前山東山 0:45
シシャモナイ・コース入口 0:30
苔の洞門出合い 0:45
苔の洞門駐車場 0:45

千歳市が行っている支笏湖周辺の環境・自然調査の一環としてオコタンペ湖に続き、現在崩落の危険性から立ち入りが禁止させている樽前山と苔の洞門とを結ぶシシャモナイ・コースを歩いてきましたので、風不死岳・樽前山と共に現状をお知らせします。

樽前山のシシャモナイ・コースは苔の洞門を探勝しながら登れるコースとして人気があったのですが、ここ数年、苔の洞門での岩盤崩落が相次ぎ、立ち入り禁止となっています。

今回は植生調査として、風不死岳・樽前山を含め調査しましたにで分布植物についても記載したいと思います。いくつかの貴重な植物が消滅していたり、新たな発見も・・・。

シシャモナイ・コース付近は予てから風不死岳に棲む熊の生息地、通り道としても知られているところです。出来れば出会いたくないな。

樽前山7合目ヒュッテまでは冬期を除き車で入れ、駐車場・トイレも完備しています。
ヒュッテには管理人が常駐していて、山道の整備や清掃・情報提供などをしてくれ、登山者が気持ち良く歩けるよう配慮しています。ただ、原則として宿泊は出来ません。
管理人の菊池さんのモットーは、汚されても・汚されても、綺麗にし続けていれば、汚さなくなる。頭が下がる思いですし、協力したいと訪れる度にゴミ拾いをしています。

ヒュッテを出て樽前山を巻くように進むと直ぐに樹林が切れ、右手には樽前山の裾野に広がる樹海とその奥に支笏湖を見渡し、左手には樽前山のスッキリした稜線と山肌が、そして正面には風不死岳がいかつい姿でそびえています。
ここからしばらくは、私が勝手に樽前ロックガーデンと名付けた気持ちの良いお花畑が続きます。ここでは季節により、コメバツガザクラ・イソツツジ・イワヒゲ・マルバシモツケ・ウラジロタデ・ウコンウツギ・シラタマノキ・ススキ・ミネヤナギ・スノキ・イワギキョウ・エゾリンドウそして有名なタルマイソウなどを見ることが出来ます。
花好きの人は5月から、2週間置きに訪ねても飽きずに楽しめる、何とも気持ちの良い山道です。


7合目ヒュッテ

樽前ロックガーデンから見る樹海と支笏湖

砂礫の斜面を932m峰に向かって登っていくと、樽前山のドームを囲む火口原と風不死岳との分岐に出ます。
ここからが風不死岳に向かう登山道、岳樺やミヤマハンノキの森に入ります、この付近ではイチヤクソウ・ヤシオツツジ等が見られます。次第に本格的な登りとなり、所々出てくる急な岩場にはロープや鎖が付いていますが慎重に登りたいものです。この辺りが風不死岳の核心部だと思います。
山肌の岩盤には大きな一枚岩があり、ハーケンが残されているのを見ることが出来るでしょう。これらの岩にはコメバツツジやミヤマダイモンジソウがしがみついているのを見ることが出来ます。


風不死岳登山口の看板標識

岩場

岩場を越えると、一見頂上のように見え緊張が緩むのですがこれはニセ・ピークです、私も最初の時はここがピークだと思いよじ登りまだ先があるのを見て、ガクッ!とした経験があります。
このようなニセ・ピークを三つ越えると視界が急激に広がり、頂上は間近かです。

苦労して踏む風不死岳からの支笏湖の展望は圧倒的です。光線の具合にもよりますが、深いブルー・紫や水色に近いブルーや緑がかったブルーなど(絵の具で言うとコバルトブルー・セルリアンブルー・ミスティブルー・ブルーグレイ・ミストグリーン・カドミウムグリーン)が交錯した絵にも言われぬ彩りと恵庭岳・イチャンコッペ山・紋別岳などの支笏湖周辺の山々とのコントラスト、思わず息をのむ瞬間です。
さらに展望も、札幌近郊の山々、羊蹄山や尻別山・ルスツ、徳舜瞥山・ホロホロ山・オロフレ山、夕張岳・芦別岳、さらには日高の山々、道南の山々まで見渡せました。


風不死岳山頂から支笏湖と恵庭岳

山頂から美笛・羊蹄方面

風不死岳から一旦、分岐まで下山して次は樽前山を目指します。急な岩場の下りは慎重に、落ち着いて降りていきましょう。急いで、コケては血豆では済みませんぞ。
分岐まで戻ると、そこは再び乾いた砂礫の斜面です。埃を舞い上げながら西山を目指して歩きます。
この一帯にはタルマイソウが多く、その他にもガンコウラン・シラタマノキ・スノキ・ミネヤナギ・ススキ・ヒカゲカズラ・シラカンバやエゾマツの小木などを見ることが出来ました。
ですが、かってあったと言われるイワウメやミネズオウは今回見つけることは出来ませんでした、やはり心無い人による盗掘の結果なのでしょう。その代わり記録には無いネジバナが何ヶ所かで定着しているのを確認できました。
又、悪意はなかったのでしょうが、誰かが植え付けたコマクサは本来樽前山には無い植物と言うことで取り除かれています。気持ちは分かるような気もするのですが、自然のままが一番なのでしょう。

樽前山西山まで来ると、山頂ドームからの噴気、硫黄の噴出等の様子が良くわかり、活火山の勢い・凄まじさをじかに感じることが出来ます。そしてドームの形や噴出口は年々変化しているように感じられます。
西山から見ていると、東山の火口原を越えて禁止されているドーム付近へ入っていく人数人を見かけました。本当に危険な行為です、万一事故にでもなれば関係者や関係機関に多大な迷惑をかけるだけでなく、登山禁止になるなど多くの人々に影響が出る結果となります。絶対に止めるようにしたいものです。
このような人に限って、何かあると自分のことは棚に上げて、管理が悪いとか、責任をとれとか、賠償だとか、叫ぶ人種なのではないでしょうか。


樽前山(左が東山、右が西山)

西山から見る溶岩ドーム

西山からは火口原に沿って東山へ、途中、樽前神社・奥の院がありますのでお参りしてから進みます。この日は本当に快晴でしかも霞も無く、視界抜群で暑寒別の山々や日本海まで見ることが出来ました、何回も登っている私も暑寒別と日本海を見たのは初めてで驚きました。


西山からの風不死岳と支笏湖

樽前山の最高峰は1041mの火口原中央溶岩ドームになるはずですが、危険かつ変動が激しいためでしょう1024mの東山頂上が一応、樽前山山頂とされています。
東山から火口原を通って、いよいよシシャモナイ・コースの下山道へ向かいます。
このシシャモナイ・コースは苔の洞門の内部が崩壊し危険なため、ここ数年間立ち入り禁止になっています。10年ほど前一度登っているのですが、砂礫の急な登りだけが印象に残っているだけで良く覚えていません、コースもうろ覚えですし、荒れてしまっていないか、少々不安です。

立ち入り禁止の看板が立つ下山道の入口、砂礫の急坂におおよそのルートと苔の洞門の位置を確認し、下山を開始しました。


シシャモナイ・コース下山口

下山口から苔の洞門方向

道は思ったほど荒れていません。かって付けられていたペンキ・マークも概ね残っていますし、砂礫だけに木々も育たないようです。
砂礫の急坂を下ること約45分、苔の洞門へ続く樹林帯に入ります。林に入ると木々の枝が邪魔をしたり、苔や落ち葉で道が薄くなるところが出てきますが迷うほどではありません。
樹林の中にはシラタマノキが敷き詰められたようにびっしり生え、白い果実を付けていました。シラタマノキのこれほどの大群落を見たのは初めてでした。
苔の洞門に近づくにつれて、鹿などの足跡が目に付くようになり、いかにも熊が出てきそうな雰囲気です。鈴を鳴らし、大声を出しながら足早に進みます。

道は苔の洞門の中に入っていきます。ひんやりと湿度の高い洞門の中は苔に覆われ緑色が美しい別世界です。公開されていたときは、苔にいたずら書きがされて心配されていましたが、その跡も自然に修復され何種類もの苔に美しく覆われています。
ただ、洞門の両側の壁はもろい砂岩ですので、所々で崩壊していて、一抱えもある岩がゴロゴロしていますし、岩と一緒に落ちた岳樺やミズナラ等の木々が道を塞いでいました。


苔の洞門内部

苔の洞門内部

又手入れがされていないため落ち葉が大量に積もり、湿度が多い条件と相まって、ミズナラの幼木が至る所から芽を出していたのが印象的でした。
苔の洞門は貴重な文化財でもあり、観光資源でもあるのですが、もろく崩れやすい砂岩の崩落は収まりそうもありません。
残念ですが当分の間、あるいはずっと閉鎖が続くのではないでしょうか。

話が外れて申し訳ないのですが、少し熊のお話。
5年ほど前、樽前山南側の森に巣くっていた一頭の熊が生け捕りになりました。3・4歳と推測されたその熊には無線発信機が取り付けられ、活動範囲を特定するため放されました。
この熊を寅次郎と言います。寅次郎は樽前山の南に広がる広大な森を我が物のように歩き回っただけでなく、高速道路、JR、国道36号線を何回も越えて早来の森まで自分のテリトリーとして行き来していたことが分かり驚かされました。
無線発信機の電池が切れ、再捕獲しようとワナや檻が仕掛けられたのですが失敗し続けています。
寅次郎は頭が良い、あいつは俺達人間をちゃんと見ている。と関係する人達の間ではもっぱらの評判です。

また、風不死岳には3〜4頭の熊が巣穴を持っていると言われていて、ここの熊は風不死岳から美笛峠・無位根山・中山峠辺りがテリトリーなのだそうです。
熊の行動範囲の広さには、驚かされますね。さすが、山親父です。

2005年春の樽前山へ

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