白老岳(968m) (道央)     2004.2.13(金)



白老岳(南西方向から見る)

冬に登る山として多くの山スキーヤーに親しまれている白老岳に行ってきました。
思わぬ晴天に浮かれて、ろくな準備もせず、慌ただしく道具を積み込んで家を出ます。ですので地図も持っていません、これが今回の山行のポイントとなるのも知らずに・・・。

2.13(金)
中笛橋 0945
南白老岳とのコル 1110
白老岳 1200
白老岳 1245
美笛トンネル 1415
白老岳(968m)の周囲の地形は白老岳を挟んで北側に945m峰、南側に南白老岳(945m)と姿、形がよく似た三山から成り立っています。
共に東西方向に細長く、南北方向は短く切れ落ちている山容をしていて、同じ時期に造山活動が行われた結果なのかなと思えるほどです。
ともあれ今日はその中の主峰である白老岳にチャレンジです。先日訪れた945m峰から見た北斜面を滑ってみたいのです。

白老岳へのルートは幾つかあるようですが、いずれも白老岳の北または北西斜面を登るようです。美笛峠に向かいながら、私も中笛橋から白老岳に登り、帰りは945m峰の中腹をトラバースして美笛トンネルへ降りるコースにしようと心に決めました。

美笛トンネルを大滝側に出て、2つ目の橋である中笛橋の手前にあった除雪したスペースに車を停めます。ここには2台停められます、もう一つ下の橋には5〜7台位停められるスペースがあります。
準備を整え国道を乗り越え目の前の斜面を歩き出しますが、国道の除雪した雪壁を乗り越えるのに一苦労です。

10分ほどで取り付きの斜面を登りきると、広い概ね平らな緩やかな斜面を東に登っていきます。先日歩いた945m峰が見えていて懐かしいような気分です。


白老岳北側に立つ945m峰

雪は重く、滑りも良くありません。先週末から歩いた人は居ないのでしょう、トレースはありません。でも所々にかすかに雪が凹んでいるトレース跡が確認できますし、赤テープも随所に取り付けられています。
徐々に高度を上げていくと、恵庭岳の鋭峰が見えてきました。


姿を見せた恵庭岳

なだらかな斜面を気分良く登っていきます。周りの樹林は余り込み合っていなく、適度な間隔が空いていて、明るい開放的な雰囲気です。
一人でのラッセルの気分を変えるために、動物の足跡や鳥の姿を探しながら単調な登りをひたすら歩いていきます。

ふと気づくと随所に付けられていた赤テープが見当たりません。そのうち見つけられるだろうとしばらく進んで、何だかおかしいという予感が。
前方やや右に白老岳とおぼしき山が見えていてこれで良いはずだ。自分を納得させつつさらに進んで小さなコブを乗り越えたとき、「あっ!!」思わず声が出てしましました。
何と正面やや左にドッシリとした山頂があるではありませんか。慌ててザックを下ろしGPSをC'K。
白老岳と南白老岳の結ぶ稜線のコルに近いところまで来ています。


南白老岳

「ドジ」「マヌケ」と自分自身を罵りつつ、さーてどうするかと考えます。
天気も良いし時間もある、冬山だからどこでも歩ける。このまま行っちゃえ、ダメモトだー。そう決心し、気分を建て直して前進です。


南西からの白老岳山頂

白老岳と南白老岳のコルまで来ると、南白老岳は先程までの姿とは全く違った山容を見せています。
優しそうだった丸みを帯びた姿から二等辺三角形のような鋭い姿です。


コル付近からの南白老岳

白老岳の南西斜面に取りつきました、木々の様子もこれまでのウダイカンバとトドマツからダケカンバに変わっています。
斜度も急になっています。雪が重いのは嫌ですが、反面シールの効きはバッチリで難なく直登出来ます。

山頂まで標高差で50m位で樹林帯が切れ、ハイマツ帯に雪と氷がこびりついた凸凹の急斜面になりました。風を遮る木々が無くなり急に風も強くなって時折地吹雪状態、体温が急激に奪われていくのが分かるようです。
斜面は一面エビのしっぽが張り付いています、ガチガチに凍りついている所とハイマツの下に空洞状の所があり、凍てついた凸凹急斜面を神経を使い慎重に一歩一歩スキーを進めました。

こんな状態の中、登ることに集中しているはずなのに突然、何十年も前の学生時代に山形の吾妻連峰で行った合宿のことを思い出しました。
地吹雪の中、進むべき尾根を1本間違えて進退窮まり、部長先生とコーチの指示で雪洞を掘り2日間耐え忍んだ時のことです。下級生達の信頼の目が、次第に不安と不信の目に変わっていったこと。雪洞の天井が時間とともにどんどん下がって、寝ているうちに潰されてしますのではないかとの恐怖に夢中で掘り上げたこと、などが走馬灯のように頭に浮かんでは消えていきました。

この数年の山行で最も緊張した真剣勝負の場面の一つであったように思います。20〜30分の出来事だったと思いますが、気分的にはあっという間のことでした。

どうやら無事山頂に到着です。急に寒さが現実のものとなって襲ってきました。
強風にあおられ苦労しながらスキーを支柱にしてツェルトを張り、フリースとマウンテンパーカーを着込み、お湯を沸かします。
コーヒーで体を暖め、食事をしてやっと人心地になりました。


白老岳山頂
南西斜面はこんな状態が森林限界まで続いている

体が温まってからツェツトから這い出し、周囲を見渡すと素晴らしい展望が広がっていました。
遠くはやや霞んでいましたが北には945m峰を挟んで恵庭岳、フレ岳、支笏湖、紋別岳、風不死岳、樽前山。南には南白老岳を挟んでホロホロ山、徳舜瞥山そして羊蹄山、尻別岳、ルスツスキー場が、東には白老の町と太平洋が広がっています。


945m峰(左側)と樽前山、風不死岳

素晴らしい展望ですが、支笏湖やその周辺を見るには白老岳より945m峰の方が数段勝っていると思います。


樽前山と風不死岳

恵庭岳とフレ岳

徳舜瞥山の端正な姿が印象的です。機会を見てチャレンジしたい山の一つです。


徳舜瞥山(右側)とホロホロ山

下山は予定通り美笛トンネルへ降りることとし、まずは期待してきた白老岳の北斜面を滑ります。
北斜面に1歩出ると、風はうそのようにありません。こちら側は頂上直下まで樹林帯が形成されていて雪もふわふわです。
適当な間隔に生えている木々の間を滑るとあっけなく945m峰との鞍部に到着です。振り返ると白老岳の北斜面が良く見えています。


白老岳北斜面

ここからは945m峰の中腹をトラバース気味にひたすら辿っていきます。しばらくすると西側の視界が開けてきました。美笛トンネルに通じる北電の高圧線が走る尾根も見えてきました。その一本南側の尾根が滑るのに気持ちよさそうな感じですし、問題なく美笛トンネルにも行けそうです。

案の定、しばらくの間スキーを楽しむことが出来ましたが、斜度が緩んでくると雪が重いためスキーが滑りません。残り1km程はまたラッセルが待っていました。でも羊蹄山を正面に見ながらのラッセルは疲れた体を後押ししてくれるようでした。


やや霞んでいる羊蹄山と尻別岳

思い立ったような、準備もしない冬の山行は1歩間違えば大変なことになると言う事を身にしみて感じた白老岳登山でした。
天気も良いし、比較的慣れた地形だからと地図も持たず、事前検討もせず行ったのがそもそもの主因。そしてコースを間違えたのに気づいてから戻ろうとせず強引に登ったことが副因でしょう。

多くの人達がなぜ北や北西斜面を登っているのかを考えれば、安全だからと言う答えが出てくるはずなのに・・・。
今回の山行を良い教訓として、慎重さを旨とし、しっかり気分を引き締めて楽しんでいきたいと思います。

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