豊似岳(1105m) (日高)     2004.3.28(日) (晴れ)



豊似岳から真直ぐ太平洋に落ち込んでいく襟裳岬

3.28(日)
追分峠 0630
登山口 0720
反射板分岐 0910
豊似岳 1015
豊似岳 1050
オキシマップ山 1300
肉牛牧場 1400
追分峠 1430
日高山脈の南端に位置する豊似岳、ここから一気に太平洋に落ち込んでいく襟裳岬の景観を見てみたいと、残雪で登りやすいこの時期に訪れてみました。
もちろん、日高の山々の雄姿も楽しみです。

前日の3.27(土)は低気圧が千島方面で急速に発達し、北海道は猛烈な風に見舞われました。オホーツク地方では季節外れの猛吹雪になったそうです。

襟裳町でも物凄い風で、「何もない春」どころか風だけはある襟裳岬でした。

3.28(日)明るくなって外を見ると、快晴で心配していた風も幸い止んでいるようです。そそくさと朝食を済ませて豊似岳の登山口がある追分峠に向かいます。


夕日を浴びる豊似岳(3.27)
右の風車の尾根から左側の尾根へ一巡した。

道営肉牛牧場のゲートは開いていましたが、万一閉められたら大変とゲート前に車を置いて登山口までの約3kmを歩き出します。
牧場の中の道には雪は無く、フキノトウが所々顔を出していて春の雰囲気です。正面には豊似岳のゆったりした姿が横たわっていて、登る予定ルートの反射板のある970m峰、そこから豊似岳に延びる稜線がハッキリ見えています。


まずは正面の尾根筋を登る

登山口からは残雪が道をしっかり覆っていますが、朝のせいか春のせいか雪は固く締まっていて、ツボ足で登ることにしました。
明るい落葉樹の林の中を適当にルートを見つけながら進んでいきます、朝のせいかカラ類を中心とした小鳥達がさえずりながら飛び回っています。キツツキのドラミングもあちこちから聞こえてきます。
斜面には鹿の足跡が至る所に残っていて、群れが通ったのでしょう溝のようになっているものもあります

しばらくして林が開けてきました、振り返ると襟裳岬が見えています。
「そうそう、これが見たかったんだよなー」としばらく見入ってしまいました。


襟裳岬が見えてきた。

樹林が丁度切れている尾根筋を淡々と登っていきます。疲れてきても振り返れば襟裳岬、左を見れば姿、形の良いオキシマップ山が元気をくれるようです。
新しい足跡と交差します、どうも先行者が居るようです。こんな山を登る人も居るのだなと、自分のことは棚に上げてどんな人だろうと想像してしまいます。


オキシマップ山
帰路はこの稜線を降りた。

反射板のある分岐直下の急斜面を二人の人が登っているのが豆粒のように見えました。きつそうな斜面です、彼らも頑張っている、私も頑張ろうと気持ちを入れ直します。
斜度が急になってきました、先行者の足跡がアイゼンのそれに変わっています。ゆっくりした一定のペースで直登していきますが、たまらずジグを切ると不思議に先行者のラインとが一致しています。面白いものだと思わずニヤニヤしてしまいました。

反射板との分岐に出ると直ぐに、壊れて放置されている小屋の残骸が屋根だけを雪の外に出して佇んでいました。
ここからは1088m峰を経て豊似岳に続く稜線が手に取るように見え、今回の登山も峠を超えた感じです。


1088m峰とそこに続く稜線

1088m峰への稜線はなだらかで気持ち良い稜線歩きなのですが、東側は雪庇が出ていて切れています。雪庇にクラックは入っていないようですが、マージンを十分取って進みます。先行者は私より注意深く、安全ですが歩きにくい木々の中を通っています。
稜線の右手には観音岳が鋭く形の良い姿を見せています。


稜線上から見た、観音岳

1088m峰が近くなると、目指す豊似岳の姿が急に大きくなってきたようです。
あそこまで行けば、日高の大展望が待っているに違いないと、いつの間にか急ぎ足です。でもこの辺りから雪が柔らかくなってきて、心構えをしていないとズボッ!と埋まってしまうようになってきました。


豊似岳山頂はもうすぐ

スノーシューに履き替えたほうがベターだったのでしょうが、大した距離でも無いし行っちゃえと、何度かズボッ!に悲鳴を上げながら山頂に辿り着きました。

そこには


重畳と連なる南日高の盟主たち。

来て良かった、苦しい思いをして苦労してここまで来た者だけが、味わう事の許された景観なのです。
思わず歓声を上げてしまいます。なんという素晴らしさ、なんという神々しさなのでしょう。

喜びを噛みしめながら、すでに到着していた先行者のお二人に挨拶です。御夫婦かと思ったら山仲間とか、細身の男性は雪焼けで南洋の美人も顔負けの色つやです。
早めの昼食をとりながら、広尾岳は? 楽古岳は? と山座同定を楽しみます。日高は少ししか登っていないし、南から日高山脈を見ることの無かった私には良く分かりません。日高の山に詳しいその男性の持っていた地図とコンパスで特定した山々の山容を頭に刻みます。


豊似岳山頂から登ってきた1088m峰、
反射板の970m峰を見る。

西側にはアポイ岳、吉田岳、ピンネシリが残雪を見せています。

快晴のお天気と風も全く無い気持ち良い中で、のんびりゆったり時間を過ごしていると、先行者達は出発準備をし始めました。聞けば、オキシマップ山を経由して下りるそうです。


左からアポイ岳、吉田岳、ピンネシリ

見送ってから、さらに一人で景色を眺めながらコーヒーを入れたり、ゼリーを食べたり至福の一時を過ごしました。
下山は往路をそのまま帰る予定でしたが先行者のプランを聞いて、時間は早いし地形も見えている、地図やGPSもある、3時間もあれば降りられるだろうし万一の時は先行者達も居ると、私もオキシマップ山を経由して下りることの変更です。

豊似岳から南に延びている大きな谷を囲むように連なっている稜線を当初は西にそして南に向かいます。


先行者の足跡が残る稜線を進む

日の当たる所は雪が緩んできたのでしょう、ツボ足ではハマッテしまうのでスノーシューに履き替えて下山開始です。
美しく連なる日高の山々や襟裳岬の景色を楽しみながら、忠実に稜線を辿ります。
スノーシューは潜らなくて良いのですが、ハイマツ帯や岩が出ている所は歩きにくいだけでなく、注意しないと引っ掛かって危ない感じです。

下りのハイライトである、オキシマップ山の登り返しに掛かりました。
一見するとトレースのような跡が沢山あります。こんなに人が登っていたのかな?と行って見ると、何と全て鹿の足跡でした。他に通る所が無くて鹿の群れが稜線を上り下りしているのかと思うと可笑しくなってくるようでした。


オキシマップ山への登り返し
手前のトレースは鹿の足跡

登り返しは思ったほどではなく、オキシマップ山です。
ここで休んでいた先行者に追いつきました。雑談をしていると、なんとこの男性、HYML(北海道、山メーリングリスト)の会員で、個人的にも私とメール交換をし、HP上でもリンクを組み合っていた仲間だったのです。メール上では親しくしていても顔を合わせたことが無い、メル友の不思議ですね。
改めて挨拶し、握手をして本当の顔見知り、友人になりました。


オキシマップ山からの襟裳岬

と言うことで、ここからは3人で一緒に降りることに。
真下に見える肉牛牧場に向かって、ズボッ、ズボッ埋まり、転びそうになりながら一直線です。あっという間に牧場に着きました。牧場の側の草むらにはフクジュソウが咲いていて春の到来を告げていました。


下山して、友人のEさん(右)と

再会を約束してEさん達と別れ、追分峠のゲートへ向かいます。

滅多に人の訪れることも無い豊似岳、天気にも恵まれ、思い切って来て良かった。
思いもかけなかった人に出会えたのも、思い切って来たからです。

メジャーな山、マイナーな山、色々ありますが、自分の気持ちが動く、引かれる山々をこれからも訪れて、楽しみたいと改めて思った山行でした。

EさんのHP「山の時計」の豊似岳
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