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恵庭岳は支笏湖を取り囲む山々の最高峰であり、独立峰でもある為、一際目を引く山、まさに支笏湖の盟主と言うのに相応しい山です。 その語源でもあるアイヌ語の「エ・エン・イワ」(頭の尖った岩山)の名の通り山頂部の大きな岩峰が特徴なのですが、最近この岩峰の崩落・崩壊が進み、山容が変わってしまうのではと心配され始めています。 |
登山口は支笏湖のポロピナイから札幌方面に進み、丸駒温泉へのT字路を左に分けてすぐ左側にあり、車は進入路の両側の林の中に20台ほど停められます。
トイレはありませんので、近くのポロピナイ休憩所で済ますと良いでしょう。
登山ポストで記帳すると、毎日何人か入山していて、登山道は大丈夫なのだろうと一安心です。
登山口周辺は昨年まで続いていた砂防ダムの工事も終わり、静けさを取り戻していました。
倒れている木々もなく、台風の影響は然程では無かったのかと思いつつトドマツ林の中を緩やかに登って行きます。
10分も歩いたでしょうか、突然トドマツ林の様子が変。
何だろうと近づいていくと、林の大半の木々が傾き、倒れています。
風倒木で塞がれた登山道
千歳山岳会の手で、枝などは最小限取り払われていて、何とか通過出来るように整備されています。
3合目手前までのしばらくの間、本当にメチャクチャになってしまったトドマツ林の中を潜り、跨ぎ、匍い、飛び移り、丸木渡りしながら登山道伝いに芋虫のように這い進んでいきました。
風の道のようになった所が特に酷いようで、直径20から40cmほどの木がバタバタ倒れています。風の力、自然の威力の凄まじさに唯々呆然としてしまいます。
倒れて空中に投げ出された木の根の土に、すでに芽を出して来年の準備をしているツバメオモト達は一体どうなるのでしょうか?
風倒木は1合目から3合目までが主体で、4合目から5合目の間にも多少ありましたが、それ以外の場所では台風の影響を感じさせる所はありませんでした。
5合目以降はいつもと変わらぬ恵庭岳、足場の余り良くない急登の中に色付き出したナナカマドの紅葉が気分を癒してくれるようです。
色付き始めたナナカマドの中で(6合目)
6合目を過ぎると、恵庭岳名物とも言える、上りと下り専用に分けられたロープ場です。
しっかりしたロープがダブル・トリプルで固定してあり、信頼感はありますが、それ程頼らなくても登れると思います。
ただ落石には注意して下さい、年々登山道が深くえぐれてきているようです。
ロープ場の急登が始まる
しばらく続くこのロープ場の急登を登りきると、僅かで第一展望台。
一気に展望が開け、下にはゆったりと広がる支笏湖、上には爆裂火口越しに山頂部が見えてきます。
曇天の柔らかい光が、風景を優しい感じにしているようです。
急登を登り終えると
展望台の岩場に腰を下ろして、しばし休憩です。
火口から立ち上っている噴気がいつもより多いような感じです。
第一展望台から山頂部
爆裂火口の中で風の当たらない所は紅葉が進んでいて奇麗です。
紅葉も進んでいる
第一展望台からは爆裂火口壁に沿って登って行きます。
所々開けた所から火口を覗き込んだり、木々の間から見え隠れするオコタンペ湖を見ながら、しばらくすると第二展望台。
山頂岩峰の崩落が始まってから、第二展望台から先は立ち入り禁止になっています。
昨年、乗り越えて入り怪我をしてヘリコプターで救助された英国人がいた為か、英語での注意看板も設置されていました。
第二展望台からの爆裂火口壁
崩壊が心配されている山頂岩峰は昨年よりさらに小さくなったような気さえします。
何とかこの恵庭岳の特徴でもある岩峰を保つ方法はないものでしょうか。
形が変わってきた山頂岩峰
目を転じると、曇天の為羊蹄山や尻別岳は裾野だけが見えています。
漁岳、小漁岳、空沼岳、狭薄岳、札幌岳などは少し霞んでいます。
眼下のオコタンペ湖はいつも通り、美しい色を湛えています、今日は乳白色と言うより瑠璃色かな。
オコタンペ湖と小漁岳
ゆっくり休んでいると少し寒いぐらいです。やはり季節なのですね。
早めの食事を楽しんで、第一展望台へ降りていきます。
何時見てもこの第一展望台からの支笏湖の風情はたおやかでゆったりしていて好きな景色です。
この日は曇り空と柔らかい日差しの関係か、天空の湖といった風情のように感じました。
秘境「天空の湖」・・・
恵庭岳の下りで注意するのは、やはりロープ場の下りです。
かなり急で足場が無いような所もありますので、慎重に降りましょう。
幸い、設置してあるロープはしっかりしていますので、頼りになります。
慎重に、ロープを頼りに
再び、あの風倒木の林の中で、あちこち枝に引っ掛かりながら何とか抜け、登山口に帰ってきました。
風倒木がきちんと処理され、元通りになるにはしばらく時間が掛かりそうな気配です。
風倒木処理や植樹の時には、ボランティアでお手伝いしたいな。