伊達紋別岳 (714m) (道央) 2006.2.28(火) 曇り、小雪
頂上直下から見る伊達紋別岳 |
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伊達市の裏側に位置する伊達紋別岳は花の山として知られ、特に2004.6に訪れた時のシラネアオイ群生は素晴らしいものでした。 花だけではなく眺望も素晴らしかった伊達紋別岳の冬を歩いてみたい、冬の噴火湾や有珠山、洞爺湖等を眺めてみたいと訪ねてみました。 幸い天気予報は晴れ。 目指す伊達紋別岳もその稜線は雲の中のようです。 太陽の里まで道路は乾いており夏道状態でした。 登山道にはつぼあしで歩いた足跡が沢山付いていますが、私はスノーシュー、クランポンの刃が気持ち良く凍った雪に食い込み、柏の木々で混んでいる尾根を軽快に登って行きます。 |
20分も歩くと3合目の一望台、洞爺湖や有珠山、羊蹄山などが見えた記憶があるのですが、残念ながら今日は煙っていて見ることは出来ませんでした。
一望台からの眺め 本来なら有珠山や洞爺湖などが出迎えてくれるのだが・・・ |
標高500mの5合目を過ぎ、東に延びる単調な尾根を緩やかに登って行きます。
一匹のエゾリスが走り出てきました。
キョトンとした顔でこちらを見ています。
「やあ、やあ!」と近づいて行ったら、10mほど近づいた所で谷へ駆け降りて行ってしまいました。
後には可愛い足跡だけが残っていました。
7合目手前には「ガンバレ岩」と書かれた岩があり、反対側には確か「マタキテネ」と書いてありました。
「ガンバレ岩」、裏側からは「マタキテネ岩」 |
歩き始めてから約1時間で7合目、いっぷく平に着きました。
天気は相変らず曇り空、でも時折雲の切れ間から日が差し込んできて周囲を明るく照らします。
7合目から稀府岳、室蘭岳方面 |
東側の稀府岳や室蘭岳が少し霞ながら見えていました。
伊達紋別岳の山頂は7合目からは見えませんが、これから辿る稜線にはかなり大きな雪庇が出ています。
7合目から山頂へ続く稜線 |
稜線に出ると風が出てきてかなり寒く感じます。
気温は−8℃なのですが、風の強い分寒く感じるのでしょう。
パーカーを着込み、フードを被るとホッとする気分です。
風や寒さに負けず、雪庇に注意して慎重に歩こうと自分に言い聞かせ、稜線に足を踏み出しました。
横殴りの風に乗って雪が舞い始め、積もった雪も舞い上がり、時折地吹雪状態になり始めました。
吹き飛ばされた雪が舞っている稜線から山頂方向を見る |
雪庇が怖いので極力マージンを取って風上側を歩いて行きます。
夏の稜線は花を愛でながらの楽しい散策でしたが、冬は緊張しながらの一歩一歩です。
8合目の前紋別岳付近から7合目方向を振り返る |
9合目の「シラネアオイの丘」と呼ばれるシラネアオイの群生地を過ぎれば山頂へはあと僅かの登りです、でも大きな雪庇には割れ目が出来始めていて何となく嫌な感じです。
歩きにくいのですが、風上側の斜面をトラバース気味に登って行きました。
この稜線を登れば伊達紋別岳の山頂 |
山頂に着きました。
お天気は相変らずで曇り空、時折陽射しが出たり、雪が舞ったりのお天気です。
伊達紋別岳山頂 |
期待してきた展望は全般に煙っていて望めません。
噴火湾も暗く、鉛色に沈んでいます。
羊蹄山はおろか、有珠山や洞爺湖も良く見えません。
山頂から伊達市方向へ延びる尾根があります。
この尾根、山頂から見る限り、冬の登山路として使えそうな感じです。
広く木々も混んでなく斜度も適当で、スキーでも楽しめそうに感じました。
何とか見えた有珠山と洞爺湖 |
しばらく待ってみましたが変化は期待出来ないようです。
寒さも厳しく、諦めて風のない所まで降りて食事にしようと、10分ほどで山頂を後にしました。
雪庇には割れ目が出来、気持悪い |
雪庇に注意しながら風のない樹林帯で簡単な食事をとります。
温かい食べ物と熱い飲み物が体にしみ渡るようです。
気力を回復し、9合目までの短いですが気の置けない急斜面を登り返し、稜線を引き返して行きます。
緩やかな雪原をショートカットして |
稜線上のトレースは吹き飛ばされて跡もありません。
どうやら7合目まで、戻ってきました。一安心です。
これを越えれば7合目の「いっぷく平」 |
7合目に戻ってくると、一人の男性が登って来ていました。
挨拶をして雑談していると、地元の方でお天気が良ければ支笏湖も見える等と教えてもらいました。
もう少し進んでみると言われるので、雪庇などの情報を伝えて別れます。
後は緩やかな尾根を下るだけです。
のんびりと下り、太陽の里に帰ってきました。
太陽の里で装具などを片づけていると、一人の園生が話し掛けてきました。
山に行ってきたこと、雪が沢山あったこと、寒かったこと、山から見えた海のこと、施設での仕事のこと等などを話題に話します。
彼の言うことを真剣に聞き、聞き取れないことは誤魔化さず聞き直し、彼と話していてフッと気が付くと7〜8人の園生が私を取り囲んでニコニコしています。
僅か10分ほどでしたが、楽しくも真剣な一時でした。
彼らの何気ない言葉の中には重い、深い、輝く、本質的な意味合いが含まれている事があり、その度にドキリとさせられました。
伊達紋別岳は今回、美しく素晴らしい顔で出迎えてはくれませんでした。
少し残念な反面、厳しい一面を見せてくれ良かったとも思えます。
そして僅かな時間でしたが、太陽の里の人達と交流出来た幸せを感じました。