群別岳 (1376m) 奥徳富岳(尾白利加山) (1346m) (増毛) 2006.5.9(火) 晴れ
浜益岳から見る群別岳 |
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群別岳はその天を衝く鋭い峰と気品溢れる姿で、誰をも敬けんな気持にさせる気高き山と言って良いように感じます。
私もかって暑寒別岳等から群別岳の姿を見て凄い山があるものだと感じていましたが、2004年の春、浜益岳から間近にその姿を眺めた時、余りにもの荘厳さに圧倒され言葉を無くし、登れるものなら登って見たいものだと憧れ続けてきました。 少しづつ雪山の経験を重ね、群別岳にチャレンジしても良いかなと思えるようになり、群別岳を訪れるなら稜線続きの奥徳富岳(尾白利加山)も歩いて見たいと計画しました。 残雪期ですから基本的にツボ足で大丈夫の筈ですが、念には念を入れてアイゼンとアイスアックスそれにスノーシューもザックに括りつけました。 10時間前後の行動が予測されますので、前夜に浜益の群別川沿いの林道に車が入れる所まで入り、車中泊です。 午前4時半に林道を歩き出しました、600m程行くと林道ゲートがありしっかり閉じられていました。 |
林道は群別川に沿って開放的な広々とした感じ、朝早くまだ薄暗い中、小鳥達が盛んにさえずっています。
開放的な雰囲気の林道、正面は奥徳富岳 |
途中、群青橋を渡り歩く事1時間半、やっと林道の終点です。
例年ですとここで沢を岩伝いに徒渉するそうなのですが、今年は雪が多かったせいでしょう、沢は雪で埋まっていました。
沢を渡り、尾根に取り付きC609m地点へ向かいます。
疎林の中から目指す群別岳が見え始め、斜め左には幌天狗から続く稜線が並んでいます。
正面に群別岳が見え始める |
C609からは谷が三方から集まっているようなやや複雑な地形の中を北上。
奥徳富岳からの帰路、使う予定の下降尾根をC'Kしつつ増田の沢へと進みました。
しばらく行くと谷地形が顕著となり、轟音を立てて流れ落ちる増田の滝が現れました。
雪の斜面に滝の落ち口だけがポッカリ口を開けていて、いささか不思議な光景です。
増田の滝 |
通常はこの増田の滝の左岸を巻いて行くのでしょうが、私は近くで写真ととった後、面倒だと右岸を巻きました。
これが以外に苦戦、大分余計な時間を潰してしまいました。
急がば回れですね。
増田の滝からは明瞭な広く大きい増田の沢を詰めて行きます。
お天気も良く、目指すコルも良く見えています、広く傾斜も然程ではないので雪崩れの危険もありません。
陽射しが強く暑くなってきました。
水分を補給し、おやつを食べ、谷を見渡しながらのんびりゆっくり登ります。
振り返ると黄金山が独特の姿で自己主張しているようでした。
C1007mコルへの登り、正面に群別岳南稜 |
幌天狗から延びる稜線のあちこちには雪崩れが何本も起きていて、大きなクラックも目立ちます。
当然、群別岳や奥徳富岳でも同じ状態の筈と、気持を新たにします。
C1107mコルに着きました。
ここからどうやって登って行くか? 南稜へ素直に取り付いて行こうか?
コルまで登りながら見当をつけておいた、南稜が縊れている中間付近へ取り付くのが良さそうな感じです。
群別岳南稜、右手のコル状の部分へ取り付いた |
コルまで来るとこれまで見えなかった浜益岳、雄冬岳の雄姿が見えています。
2004年春の浜益岳の思い出が甦ってきます。
コルからの浜益岳(左)と雄冬岳 |
コルから少し進んで南稜の中間部に進んで行きます。
これが間違い、大失敗でした。
一見、良さげに見えたこのルート、南稜の中間部に取り付くまで急斜面のトラバースが続きます。
しかも雪が締まっていればともかく、緩んでいてしっかり踏み込まないとずり落ちてしまいそう。
ずり落ちれば100〜200mは確実に落ちて、血豆で済めば御の字の様相です。
一歩一歩、バケツのような足場を作りながら慎重にトラバースして行きます。
南稜に取り付き、直登出来た時は心底ホッとしました。
ここは、コルから素直にそのまま南稜に取り付くのが正解でした。
南稜にやっとの事で上がると群別岳最後の急登が待っています。
群別岳山頂への登り |
群別岳の姿からも容易に想像出来る急峻な登りですが、僅かな距離です。
登り出してビックリ、山頂直下に縦横に亀裂が走っていて、大きいものでは幅が2m位になっています。
何時崩落するか分かりません。
大きく東側にトラバースしようかとも思いましたが、斜面左側の潅木とハイマツ帯に沿って何とか登り切りました。
念願の群別岳山頂です。
今まで見えなかった暑寒別岳方向の景観が目に飛び込んできました。
やったぞ! 憧れだった群別岳の山頂に立っている。
何とも幸せな気分です。
暑寒別岳から南暑寒別岳、手前はホンジャマ平 |
そして北西方向には浜益岳・雄冬岳が、南西には幌天狗、南には黄金山、南東には樺戸山地の山々、遥か遠くには積丹の山や芦別岳・夕張岳もかすかに見えています。
浜益岳と雄冬岳 |
誰も居ない群別岳の山頂で苦戦させられたこの山行を振り返ります。
自分のルート判断ミスなどで予想外の時間を費やしました。
でも、1時間やそこら予定より遅かったから何だと言うんだ。
嬉しさを率直に喜ぼう、自分を誉めてやろう。そんな気持になりました。
コーヒーや軽食を食べつつ、30分ほど物思いにふけって、次に行動に移ります。
稜線伝いに奥徳富岳へ、優雅な吊り尾根、軽やかに奥徳富岳へのコルへ降りて行きます。
コルから見上げる群別岳はこれまでのイメージとはチョッピリ違った顔を見せていました。
群別岳と奥徳富岳のコルから見る群別岳 |
この稜線にもクラックが何本も走っていました。
怖くてとても稜線上は歩けず、南側に大きく外れて歩いてきました。
コルから見上げる奥徳富岳の登りは潅木帯の中を登らざるを得ないようです。
奥徳富岳への登り |
潅木やハイマツ達が仲良くしようよと私を離してくれません、雪の軟らかい所では股まで潜ります、落とし穴も至る所で待っています。
奥徳富岳までコルから30分も掛らないと予想していたのに、1時間以上掛ってしまいました。
奥徳富岳山頂から苦しめてくれた潅木帯を恨めしげに睨みつつ、10分ほどの写真タイム。
奥徳富岳からの群別岳と雄冬岳 |
ここまで計画より2時間以上遅れていますが、何とか目的の2山に登る事が出来ました。
喜びと感動に何時までも浸っていたい所ですが、下山を急がねばなりません。
奥徳富岳の南峰を経由して1069pへ広い気持の晴れ晴れするような稜線を景観を楽しみながら下って行きます。
正面に黄金山が浜益の町と日本海と一緒になって目に入ります。
黄金山 |
見上げると降りてきた奥徳富岳が優美な姿を横たえていました。
1069Pからの奥徳富岳 |
南西には樺戸山地のピンネシリ・神居尻・隈根尻などが霞みながら見えています。
樺戸山地の山々 |
1069Pからは西に明瞭に延びる尾根を下ります。
尾根を忠実に降りても、途中から南の谷に降りても大丈夫です。
尾根を降り切ると群別川、かすかに水音だけがしていますが雪に覆われ姿を隠しています。
そのまま群別川沿いに降り、C609mへ登り返し、後は往路を戻りました。
疲れも出て、ここからの林道が長く感じられ、自分を鼓舞しようとでたらめの歌を大声で歌いながらの林道歩き、こんな時には軍歌とか応援歌が似合うものですね。
長らくの念願だった群別岳、やっとの事で登る事が出来ました。
でも、12時間は老体にはチョビッと厳しすぎるものでもありました。