松倉川 (道南)   2006.5.27(土) 晴れ



5.27(土)
市民の森駐車場 0800
水の沢林道分岐 0850
アヤメ湿原、車デポ 0920
水の沢林道分岐 0945
C300m入渓 0955
C320m雑魚の滝 1005
C355m滝 1050
C405m滝 1150
C420m御神木 1220
昼食 1305
1345
C570m3段の滝 1350
C720m黒滝 1450
アヤメ湿原 1520
「松倉川、私がこれまで行った沢の中でも十指に入るしっとり苔生した美しい沢」と私が所属しているHYML(北海道の山メーリングリスト)の沢の達人ganさんにそう言わしめる松倉川。
その松倉川を再訪するのでどうかと誘われ、どういう川か、何処にあるのかも知らないまま、同行する事にしました。

急遽調べて見ると、松倉川は函館の袴腰岳(1108m)付近を水源とし、湯の川温泉を経て津軽海峡へ注ぐ全長約24kmの川で、東北の奥入瀬渓谷にも匹敵する美しい渓谷美で名を馳せている川との事。

また数年前、松倉ダム建設計画に対し、自然保護市民団体が環境調査の結果、反対、取りやめになった事でも有名なのだそうです。

今回は松倉川の上流部の約5km程を遡る計画です。
函館の市民の森駐車場に集合した札幌方面からの遠征組5名と函館の2名の7名がメンバーです。
挨拶を済ませ、早速車2台に分乗し、入渓地点である水の沢林道分岐に向かいます。

水の沢林道分岐までの林道から川は深くて流れはほとんど見えません。
途中にも「白滝」「立岩の滝」など見どころの滝があるそうで、林道から降りて行く道がつけられていました。

下山の為に目的地のアヤメ湿原に車をデポして、いよいよ入渓です。


水の沢林道分岐

林道分岐から200mほどにある木製の橋から松倉川に入って行きます。
春とはいってもまだ5月、身を切るような冷たさだろうと覚悟していたのですが、然程冷たくありません。
天気も上々、気分は最高、盛り上がります。

沢水も苔の付いた岩も奇麗で美しく、新緑も清々しい限りです。
苔の付いた岩はやや滑りやすく、今シーズンから履き始めたAQUAと言う新素材の沢シューズ、フェルト靴よりホールド感は今一の感じです。

入渓して間も無く、C320mで5m3段の滝が現れました。
「雑魚止りの滝」と言うそうです。


雑魚止りの滝

新緑の緑と水の青、明るい日の光とが入り交じった滝の深い釜は神秘的な感じ。
ここから滝やナメが次々と続き、素晴らしさに歓声の途絶える事が無いくらい。
川床は岩盤で歩きやすく美しい。


静かで緩やかなナメ

続々と現れる小滝やナメ

次々に現れる滝の美しさを堪能しながら遡って行きます。
二股や合流点では地図と照合し、現在地点を特定しながらの遡行です。

そんな中、小さな滝の淵を渡るメンバーの姿を撮影していたら、目の前でSGさんが足を滑らせ釜に落ちてしまいました。
最初は皆さん大笑いでしたが、様子が変です。
釜の中で水流が渦巻いているのでしょう、泳ぎ着こうとしても引き戻されてしまうようです。
皆が真剣に救助をと動き始め、ようやく引っぱり上げました。


泳ぐSGさん

全身ずぶ濡れのSGさん、お天気で暖かい日差しがせめてもの救いでした。

沢沿いの緑はさすが道南、ブナの新緑です。
ブナの新緑の美しさは良く耳にする通り、優しく何とも軟らかい感じの色。
春の日差し、ブナの若葉、木洩れ日、豊かな自然を実感した時間でした。


ブナの新緑と木洩れ日

松倉川は小滝が連続していますが、流れは緩やかです。
2時間近く歩いても、標高は50mほどしか上がっていません。
この辺が日高の沢などとは大きく違う所なのでしょう。


飽く事なく連続する滝

魚も数多く見られます。
2・30cmはあると思われるアメマスやヤマメが一つの釜に何匹も見られ、釣り師には堪えられない沢なのではないでしょうか。

C355mで幅10m高さ5mの滝、簾のように流れ落ちる水が優雅です。


C355mの滝

これまで特に問題になるような場所は無く、スムースに遡ってきましたが、C405mに高さは4m程なのですが釜が大きく渡れない滝が待っていました。


高巻くルートを思案中のganさん

ここは右岸を高巻きました。
高巻いて沢に降りる場所は急斜面、ロープを出して慎重に降り立ちます。


安全を期して

C420mには御神木と呼ばれる大きなブナの木が立っていました。
直径約1mの立派な大木です。
何時から信仰の対象となっていたのでしょう、古びた小さな鳥居も立っていました。


御神木

このようなブナの大木が沢沿いにあると言う事は、長い間洪水が無かった証左なのだそうで、この御神木の存在が治水対策の為のダム建設は必要ないと言う議論の根拠になったのだそうです。


1枚1枚も美しいブナの若葉

間も無く顕著な二股を左へ、ここを右に行くと天女の滝、羽衣の滝と言う30mもある滝があるとの事でした。

1300を過ぎてお腹も空いてきました。
ラーメンの具にしようと下流には沢山あったアイヌ葱を探しますが見当たりません。
仕方なく葱無しで我慢しようと小さな滝の所で昼食です。


昼食、ラーメンまだ?

メンバーの一人、元営林署勤務のTHさんがウドの新芽とアズキナをいとも簡単に集めてきてくれました。
さすが専門家と感謝しつつ、何とも良い香りのウド入りラーメンで舌鼓です。

この付近には白い可憐なタチカメバソウと言うムラサキ科の花が咲いていました。
私にとっては初めて見る花です。


タチカメバソウ

御神木まではしっとりとした実に美しい渓相だったのですが、御神木を過ぎてからはやや荒れた荒涼とした雰囲気になってきました。
C570mには3段の滝がかかり、上の滝には大きな流木が引っ掛かっています。


直登出来ない3段の滝

ここは左岸を高巻いて乗り越す事にしました。
高巻くと言っても両岸の壁は急斜面ですから安全な所まで高巻くには50メートル以上登らなくてはなりません。
笹が生えている所を狙って、笹を頼りに身体をずり上げて行きます。

やっとの事で高巻きましたが、今度は降りなくてはなりません。
壁はほとんどが草付き斜面で頼りとする笹は疎らにしかありません。
ロープを使おうにも支点となるような木もありません。
協力しながら笹のある所を選び、慎重に降りて行きました。
この高巻きを全員がクリアーするのに30分近く掛ったと思います。

ワイルドな沢と変身した松倉川、この後もお助けロープがリーダーから何回か投げられました。


しっかり掴まって!

雪の残る滝を攀じる

そしてC720m源頭も近くなった時、20mの大滝が現れました。
大小二本の滝が並んで落ちています。


行く手を阻む大滝
左の小さい方の滝を登った

この滝は黒滝と呼ばれているとか、黒い岩肌のせいでしょうか。


迫力満点の黒滝

右の大滝は登れそうにありません。
左の細く流れ落ちている滝にganさんとKTさんが取り付きますが、岩が脆くボロボロ崩れて苦戦しています。


岩が脆く、さすがのganさんも苦戦

KTさんが何とか乗り越えました。皆で拍手です
ロープを出してもらい、それを頼りに乗り越えます。
ロープ一本の威力を実感した場面でした。

空が近く見えます。
源頭が近い雰囲気、流れが緩やか、これまでの緊張がほぐれていくようです。


緊張も解け、笑顔で源頭に

流れはそのまま今日の目的地のアヤメ湿原に繋がっていて、林道に飛び出しました。
皆さん、達成感と満足感の笑顔笑顔で握手です。


やったな! 有り難う!

アヤメ湿原はノハナショウブが7月には咲き乱れるそうですが、今は静かに佇んでいました。



アヤメ湿原

松倉川、山頂に至る為の沢登りではなく、沢を純粋に楽しむ為の沢歩き。
いつもとは大分雰囲気の違う沢歩きでしたが、本当に美しく素晴らしい沢でした。
御神木までの前半はしっとりとした小滝やナメの連続する実に気持の良い美しい沢、そして後半は荒涼とした感じでワイルドな沢。

沢歩きの達人が惚れ込むだけある、とても印象的な沢でした。
沢歩き初級者の私ですが、これからも機会を見て色々な沢を体験して行きたいと改めて感じました。

ちなみに今回から使用したAQUAという沢靴、最初苔付きの岩はやや滑る感じでしたが、次第に馴染んだのかその後不安は感じませんでした。
土や岩場ではフェルトよりかえって滑らない感じです。
しばらく使用して、さらにレポートしたいと思います。

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