トヨニ岳 (1493m) (日高)   2006.5.3(水) 晴れ



5.3(水)
野塚トンネル 0515
稜線出合い 0640
1251P 0735
トヨニ岳山頂 0830
0915
東峰 0930
0945
530m二股 1050
野塚トンネル 1155
2006年のGW、お天気の良い日に南日高の野塚岳を訪れようと計画していました。
三つのルートを検討し、イメージ登山を何回も行いました。
ですが何かが心に引っ掛かっています、そう「トヨニ岳」なのです。

「まだ自分一人では無理だ」と言う気持と「行ける所まででいいから行って見たい」と言う気持が交錯しています。

気持の整理がつかないまま、晴天の5.3(水)計画を実行することにしました。
野塚岳の地図の下にトヨニ岳のを滑り込ませました。
カミさんには「野塚トンネルの所にある山に行ってくるよ」と言ってあります。

5.3(水)早朝、野塚トンネルの十勝側出口のパーキング場にはすでに7台の車が停っていて、いずれも登山者のようです。
お天気は最高、素晴らしい青空が広がっていて、見える野塚岳とトヨニ岳を結ぶ稜線は白く輝いています。

「よし、トヨニだ!」
朝食を掻き込みながら、地図を眺めます。
野塚岳ほど準備してありませんが、ルートとして迷うような所はなさそうです。

まだ雪で埋まっている沢を渡って、直ぐ右手から延びている尾根に取り付きます。
朝早いせいと、冷え込んだせいで、雪は締まり潜るようなことはありません。
木々の混んでいる尾根を忠実に登って行きます。
時折木々の間から見える野塚岳が元気を与えてくれる感じです。


尾根の途中から見る野塚岳(左)

しばらく登るとコウモリの翼を広げたような姿の山が現れ、かって野塚岳から眺めたトヨニ岳の記憶が甦りました。
否が応でも登攀意欲が高まります。
C900m付近でアイゼンに履き替えて登ります。


姿を見せたトヨニ岳

尾根に取り付いてから約1時間半、稜線に飛び出しました。
素晴らしい!、凄い!、積雪期の日高の稜線、初めての新鮮かつ強烈な印象です。
野塚岳から続く稜線には踏み跡が続いていました。


野塚岳に続く稜線

明るい陽射しとあくまで透き通った青空、白く輝く山々の輪郭がスッキリとしています。
進む方向には見紛うことの無いトヨニ岳の雄姿が立ちふさがるように聳えています。


目指すトヨニ岳

西側の山地にかかる低い雲が少し気にかかります。
途中に難しい所さえ無ければ、トヨニ岳には2時間もあれば行けそうな感じです。
「慎重に、決して無理はすまい」と自分自身に言い聞かせ、歩を進めます。

アイゼンを気持ち良く効かせながら周囲の景観を堪能しながらの稜線歩きです。
狭い稜線には雪庇にクラックも目立ちますが、踏み跡の多くは雪庇上を通っています。
私は用心の為、風上側の斜面をトラバース気味に歩いて行きました。

トヨニ岳が本当にコウモリの翼を広げたように見えます。
左から南峰、北峰、東峰なんだなと一人納得です。
この独りよがりが後で残念な思いをすることになるとは・・・。


トヨニ岳、中央(南峰)を北峰と思い込んだ

1251Pへさし掛かりました。
ここの稜線の一部は雪が溶け、岩場が剥き出しになっています。
岩の周囲の雪はズタズタに緩んでいて要注意、慎重に乗り降りを繰返しながら進みます。


1251mP

1251Pから振り返ると、今まで野塚岳の陰で見えなかったオムシャヌプリ、十勝岳、楽古岳などが姿を現し、鋭い山々の連なりに心が浮き立つようです。


手前の双耳峰が野塚岳、次の双耳峰がオムシャヌプリ、
奥の右は十勝岳、左が楽古岳

ふと見やると、東峰を登っている人が見えます。
同じような思いで登っているに違いないと、勇気を貰ったような気持になります。
手を振りましたが、気が付いたかどうか?

やったぞ! 山頂です。今日の一番乗り。
慎重に、神経を使いながらでしたが、幸運にも然程危険を感じることも無く念願だったトヨニ岳の山頂に立ちました。

主稜線方向にはピリカヌプリから神威岳が実に優雅な姿で並び、気持が高ぶります。


ピリカヌプリから神威岳

夢に終わるかも知れませんが、何時かあのピリカヌプリの頂きに立ってみたい。
そんな気持に駆り立てられる素晴らしさです。
この歳で鍛えるなんて無理だし、益々体力は落ちて行く。
でも、夢は夢として持っておきたい。
素晴らしい絶景の中、そんな思いにふけっていました。

先程、東峰を歩いていた人がやって来ました。


東峰から登ってくる人達

笑顔で挨拶を交わします。
見ればテント装備でピリカヌプリまで行くと言う。
若い方と中年の方、その体力気力に嫉ましささえ感じながら、山の話に盛り上がり情報交換をしました。
聞くと、東峰から降りた上二股からは五六回の徒渉があるが靴を濡らすほどではないとの事、急遽こちらから降りようかと言う気持が頭をもたげます。


トヨニ岳山頂にて

ピリカに向かう二人を見送って、もう一度心置きなく景色を見回します。
直ぐ北の1529m峰がやけに気にかかります。
ピリカヌプリはとても無理ですが、1529m峰までなら行けそうな気がします。
そして1529m峰の東側遠くには十勝幌尻岳などらしい山々が並んでいます。
ピリカと神威岳の間にはペテガリなのでしょうか、主稜線の山が見えています。


いつまで見ていても見飽きない白き山並み

西から雲が次第に沸き上ってきています。
南のオムシャヌプリや十勝岳は雲に覆われ始めました。
その姿もいい感じです。


雲に覆われ始めた野塚岳、楽古岳方向。

1529峰まで行って見ようかとも思いましたが、トヨニ岳に立ったと言うだけで大満足です。
充実感に溢れたマッタリとした時間が気持いい。
そのまま、しばらく放心したかのように山頂に座っていました。

さあ、時間はまだ早いが下山しよう。
来たルートを戻るか、それとも東峰から戻るか?
先程の二人からの情報で東峰から降りる事にしました。

僅か15分ほどで東峰です。
ここからの眺望も素晴らしいものでした。


東峰からトヨニ岳

山だけでは無く、十勝平野や広尾の海も奇麗に見えています。
東峰からは南東に延びる尾根を下って行きます。
東峰直下はかなりの急斜面、アイゼンの刃を食い込ませながら慎重に降りました。
C1200m付近は細尾根でバランスを崩さないよう細心の注意で渡ります。


東峰からの下り

気温が上がってきた為、途中から雪は軟らかく、ズボ〜と膝近く時には股まで潜るようになってきました。
そんな中、登ってくる男女4人パーティに出合いました。
どこかの山岳会らしく独特の雰囲気で統制の取れた行動振り、勿論テン泊の装備で登って行きました。

東峰から約1時間、上二股まで降りてきました。
ここからは沢沿いに歩いて行きますが、潜りながらの上に徒渉も多く結構疲れます。
最後は濡れても良いと、ザブザブ登山靴のまま沢を歩きながら登山口へ帰ってきました。


豊似川左股川

今回の山行の直前まで躊躇していたトヨニ岳、何とも言えない充実感と満足感で胸震える思いです。
やったぞ!と言うウキウキした気分で家路につきました。

所が家に帰り、感激よ、もう1度と地図を詳細に見ていて愕然としました。
なんと私がトヨニ岳北峰だと信じ切っていた峰は南峰で、北峰は行こうかどうかしゅん巡したあの1529m峰だったのです。
野塚岳はあれだけ研究したのに、トヨニ岳については憧れていただけ、やっぱり思い付きのような状態で行くものではありません。
日高の山の神様に、チョッピリお灸を据えられた思いです。

ですが、夢のピリカヌプリを実現させる為の口実が出来た、と内心思い始めた私なのです。

GPSトラック

 

 

Homeへ Page Topへ 次に進む  

inserted by FC2 system