楽古岳 (1472m)コイボクシュメナシュンベツ沢 (日高)   2006.9.16(土) 晴れ時々曇り

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9.16(土)
楽古山荘 0630
C530m二股 0730
C640m 0820
0840
C780m二股 0910
C950m二股 1000
C1135m二股 1040
C1320m 1130
C1420m稜線 1150
楽古岳山頂 1200
1300
C1317m肩 1315
楽古山荘 1505
楽古岳は三角型の山が多い南日高の山々の中でも一際目立つ二等辺三角形、そして夏道の付けられた数少ない山の一つでもあり、多くの人達に愛され登られている山だと思います。

今回は夏道では無く、コイボクシュメナシュンベツ沢から念願の挑戦です。
コイボクシュメナシュンベツ沢は一気に楽古岳に突き上げている沢で、美しさと高度感溢れる沢として評判です。

何とかして、この沢を登ってみたいと思っていましたが、沢初級者の私一人で歩ける所ではありません。
今年七月に「ganさんが遡行(ゆく)北海道の沢登り」と言う評判の本を出版した、私の沢登りの師匠でもあり、HYMLのお仲間でもあるganさんにお願いして連れていってもらえる事になりました。

朝6時過ぎ、楽古山荘に集合した今回のメンバー、ganさん、NMさん、KTさん、そして私の四人、挨拶もそこそこに出発準備を整えます。
それにしても、私が千歳から4時間近く掛って到着したのに、彼らは札幌から3時間強で来たと言うのですから、どんな魔法を使ったのか私には? ? ? です。


楽古山荘で出発準備

すっかり明るくなった林道を歩き出します。
ここは昨年一人で十勝岳南面直登沢を登った時歩いた以来です、あの時は一人で酷く緊張しながら歩いたのを覚えていますが、今回は仲間と一緒ですので気が楽です。
林道からはその十勝岳がすっきりした姿が見え、懐かしさが甦ってくるようです。


十勝岳

C530m二股までは沢沿いの踏み跡を歩く事1時間、殆ど濡れる事もありません。
見覚えのあるC530m二股に着きました。
ここからは初めての沢、どんな所か、期待が高まります。


C530m二股から楽古岳方向、十勝岳へは左に入る

この二股の左上には小さなテン場があり、焚き火の跡もありました。
遡り始めると直ぐに右から枝沢が入る所に滝が出て来て、なかなかの迫力です。
ここは右の枝沢から岩肌のテラス状の所を伝って乗り越えていきます。


右の枝沢から岩肌を左上に登り、トラバースして滝上に降りる

ganさんの話では、水量は例年に比してかなり少ない方だそうですが、水は清く透き通り、青色に染まる釜や淵では感嘆の声が上がります。

C565mの5mの滝は釜の左をへつり、滝の左を緊張しながら直登します。


C565mの滝

僅かな手掛かりを確認しながら、慎重に攀じ登る緊張感は何とも堪らなく気持の良いものです。


この緊張感が堪らない、攀じるNMさん

C585mの幅広の滝は水量が少ない為か、二本の滝のように見えます。
ここは左のガレから登りました。


C585m、15mの滝

しばらく平凡な河原歩きをして、C640mで右岸から30mほどの美しい滝が落ち込んでいる所に来ました。
支笏湖の美笛の滝を思い出させる端正な滝です。


C640mの滝

ここで一休み、ganさん特製の手でちぎっては入れ、ちぎっては放り込む葱と油揚げのラーメン味スープが振る舞われ、その豪快さに圧倒されながらも美味しく頂きました。


葱をちぎり、油揚げをちぎって放り込む男のスープ
左からganさん、KTさん、NMさん

C700mの四つ股からガレ場となり、流れは一旦伏流となります。
C760mを過ぎると、両岸とも岩が迫り、狭い谷の正面には大きな滝が流れ落ち、本格的に沢登りが始まるという雰囲気が出て来ました。


C760m付近、正面に大滝が落ちている

C780m二股を右へ進路を南東に取ると、切り立った岩壁に真上に延びるナメ滝が続いているのが見え始めました。
いよいよ、核心部です。


一気に高度を上げる滝が連続する

手掛かりはしっかりあり、岩も滑らないので不安は感じませんが、下を見るとお尻がムズムズするような高度感です。
ganさんが要所で出してくれる、お助けロープが恐怖感を吹き飛ばしてくれます。


慎重に、でも大胆に

この怒濤のような天を衝く登りが高度差400m以上続くのです。
惚け気味の頭を働かせルートを決め、指先・つま先に神経を集中させ、二手三手先を読み自分を確保しながらせり上がってゆく。
時間が経つのも、疲れも感じない、緊張の時が過ぎていきます。


次から次に現れる急峻な流れ

谷底が真下に見え、振り向くと身震いする

このような急峻な場所を遡る時は先行者との距離を開けて、万一滑っても巻き込んだり、巻き込まれないようするのが常道なのですが、せっかちな私は夏道を歩くのと同じように前を登るganさんの直ぐ後をぴったりと登って、何度か注意されました。
沢初級者が陥りやすい間違い、良い教訓として順守しようと心に刻みました。


素晴らしい高度感に喜びも最高潮

C950m付近は左岸の岩が崩壊し埋まっています。
美しい沢の景観が一部ですが失われたようで残念な感じです。


ganさんに確保されて遡る

振り返ると、先程まで遥か高くに見えていた十勝岳と楽古岳を結ぶ稜線が目の高さになってきました。
C1130m二股は右に進みます。


C1130m二股

この辺りからさすがの急傾斜も少し緩み、岩を掴んだり、四つん這いにならなくても歩けるようになりました。
それでも、微妙なトラバースなどもあり気は抜けません。


微妙なトラバースに神経を使う

C1220m付近で水が涸れ、昼食用の水を汲みます。
すぐ上のC1230涸れ二股は左にピンクテープがありましたが、右を取ります。
涸れた沢を潅木に掴まりながら登って行くと、C1320mで錆びたドラム缶がうち捨てられていました。
何でこんな所に?と思う反面、美しい自然に似付かわしくない人工物に違和感を感じざるを得ませんでした。
正面に稜線空際が見え、沢を詰め上がる気配が漂ってきます。


稜線も間近か

踏み跡を辿りハイマツを10mほど跨ぐと薮漕ぎ無しに稜線、札楽古からの夏道に合流しました。
広尾方面の展望が一気に広がります。


稜線に出ると広尾岳などの景観が広がっていた

やや雲が掛かり霞んでいますが、広尾の港や太平洋も見えています。


広尾方向

しばし稜線からの展望を楽しんで、ほんの少し登ると、ド派手な看板が待つ楽古岳山頂です。
素敵な素晴らしい沢を登り切った感動を共有した皆さんで握手、嬉しい。
圧倒的な大きさの十勝岳が存在を主張しながら、私達を祝福してくれているようです。


十勝岳、主稜線は雲に隠れ残念

オムシャ、野塚岳、トヨニ岳、ピリカなど主稜線の山々は残念ながら雲に隠れています。
十勝岳の山頂へ突き上げている南面直登沢が良く見えて、昨年の感動が甦ってきます。

一方、南東には広尾岳など襟裳岬に続く主稜線が広がっており、南にはアポイ岳、吉田岳、ピンネシリが見えています。


山頂看板と広尾岳、襟裳岬方面

やや雲は多いものの、風も無く穏やか、山頂に腰を下ろし、のんびりおしゃべりと昼食です。
ビールで乾杯し、ganさんお得意のもやし・葱・ワカメ・油揚げ入りの豪華山頂カレーラーメンに舌鼓を打ちます。


達成感をおかずにラーメンタイム

穏やかでまずまずのお天気なのに、誰も居ない私達独占の楽古岳山頂。
のんびり1時間大休止し、下山後の大宴会を楽しみに夏道を下山です。
肩まではこんなにハイマツや笹が被っていたかなと思うほど覆われ始めていました。
肩からは良くこんな所を登るなと思うほどの一直線の急斜面を降りていきます。


夏道7合目付近から見る、ポン楽古岳

いい加減嫌になった頃、沢音が聞こえ始め急な下りから解放され、後は沢沿いの踏み跡を辿り、楽古山荘に帰り着きました。

時間は午後三時、帰ろうと思えば帰れる時間ですが、山荘でゆっくり大宴会をしようと泊まる事にしました。
宴会を始めると、二組のグループがやって来ました。
迷惑にならないよう最初は気を使いましたが、後はどうなったのか良く覚えていません。
もしもうるさく御迷惑をお掛けしたなら、どうか勘弁して下さいね。

念願かなって、沢から楽古岳を登る事が出来ました。
評判に違わぬ素晴らしい沢でした。
険しい岸壁を流れ落ちる垂直にも見える高度感溢れる滝・滝・滝。
そこを登れた喜び、感激はひとしおです。良い教訓も得ました。

コイボクシュメナシュンベツ沢からの楽古岳、私にとってお尻のムズムズ感と共に忘れられない沢となりそうです。

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