チロロ岳 (1880m)千呂露川三俣右沢 (日高)  2006.10.5(木) 晴れ


曲沢からのチロロ岳はこちらから

10.5(木)
千呂露川北電ゲート 0640
北電取水ダム 0730
C870m右沢出合 0830
C1180m二股 0935
C1350m滝 1015
C1440m二股 1055
C1600m源頭 1120
C1840m稜線 1245
チロロ岳山頂 1300
1330
チロロ西峰コル 1355
C1490m源頭 1430
C870m左沢出合 1615
北電取水ダム 1720
千呂露川北電ゲート 1805
チロロ岳は日高山脈第3位の高峰1967峰から芽室岳に続く北日高山脈主稜線から西に派生する山列に位置し、ルベシベ山・1790峰・チロロ岳と続いています。

その為か北日高の大展望に優れていると評判ですし、西峰はカンラン岩特有の花達の名所として名を馳せています。
昨年その大展望を楽しみに夏道である北側の曲り沢から訪れたのですが残念ながら雲で視界ゼロ、リベンジの意味を含めて秋の晴天の一日に再び訪れてみました。

今回は南側からの沢ルート、今年当初から目標の一つとして計画し温めておいた千呂露川の三俣右沢を遡り左沢を下降するものです。
私の沢の師匠、ganさんからは「たかさん一人で大丈夫、でも右沢上部のハイマツ漕ぎはかなり手強いよ」とアドバイスを受けています。
地図を見る限り、C1440m二股を右に取る方が沢地形がはっきりしているようでハイマツ漕ぎも少ないような感じですが、左を取ると山頂直下に出られそうです。
出来れば山頂へ真直ぐ登りたいと思いますので、現地で様子を見てから判断しようとペンディングです。

午前4時前に一面の星空を確認し自宅を出発、一路千呂露林道二岐沢の北電ゲートを目指します。
ゲート前に車を停めて、林道を歩く事約一時間、北電の取水ダムに到着です。

ここから何度か徒渉を繰返しながら踏み跡を辿り、C870mの三俣出合へ向かいます。

取水ダムのすぐ上で左岸に徒渉し踏み跡を10分ほど歩くと右岸から4・50mはあろうかと言う立派な滝が落ち込んできます。
水量が今一でしたが、水量が多い時には迫力満点なのではないでしょうか。
この滝のすぐ上で右岸に渡り踏み跡や河原を進んでいきます。
川の両岸は紅葉が進み、しっとり落ち着いた秋の佇まいを見せています。


秋の彩りを楽しみながら遡っていく

しばらく行くと明瞭なC810m二股を過ぎ10分程で再び左岸へ、そして踏み跡が次に川に出る所がC870mの三俣となります。

ここで間違えたら大変です。顕著に右に曲る川の屈曲点を確認し、高度を確認、GPSでも確認して、右沢へと入っていきます。
当初、沢は倒木が多く荒れた感じで滝も無く期待していた沢相とは異っています。

C1000m辺りから滝が出始めました。
茶色っぽい苔が付いた岩はとても滑り、注意しながらいずれも流れの横を直登して行きます。
沢水は覚悟してきたのに思ったより冷たくなく、濡れるのも気持が良いぐらい。


C1000mの滝

10m、15mの滝を幾つか乗り越えC1200mを越えると、急に沢全体が明るく開放的になってきました。
日を一杯に受ける、南に開けた沢ならではの光景なのでしょう。


明るく開放的な雰囲気になってきた

気持ち良い陽射しの中で一休み、冷えてはと温かい飲み物を持ってきましたが冷たいものが欲しいぐらいの陽気です。
傍らにリンドウが可憐に咲いています。


リンドウなどの花々が秋の風情を

C1350mの15mの滝は手掛かりが少ないツルツル岩でスタンスが微妙、一人では無理は禁物と右手前の小沢を利用して巻きました。


巻いた15mの滝、正面はチロロ岳山頂部

その後も滝や小滝が現れ、快適な沢登りを存分に楽しみます。
沢の正面にはチロロ岳山頂部が見えていて、登頂意欲が否が応でも高まります。


続々続く滝や小滝

C1440mの二股に着きました。すぐ下にも右から支沢が入ってきていて三股とも思える地形です。
右を取れば山頂東側のC1780m稜線に出る筈で、地図で見る限り沢地形もしっかりしているようです。
左の方が7:3で水量は多く、こちらは山頂の東側直下に出る筈です。
問題のハイマツ漕ぎはどちらが少ないのか、此処から見ても分かりません。
ままよと、左に入りました。

C1600mで源頭となり水が涸れました。
ここからはハイマツ帯の中に延びる草と潅木の急な沢地形を忠実に辿っていきます。
沢地形も途切れ、C1690m付近から遂にハイマツ帯に突入です。


源頭上部から登ってきた右沢を見下ろす

最初は薄い踏み跡らしき形跡を辿ったのですが、すぐに分からなくなり、周囲は太いハイマツの枝が入り組み絡み合った背丈より高いハイマツ・ジャングル。
押したり、引いたり、広げたり、色々試してみますがびくともしません。
まさにハイマツ達がスクラムをガッチリ組み、どんな相手もはじき返すぞと立ちはだかっているかのようです。

枝を押し広げ、枝の上に乗り、腕力で身体を引っぱり上げます。
強烈なハイマツの抵抗にもがいてももがいても遅々として進みません。
ハイマツの枝に刺されたり打ち付けたりとその都度痛みが走ります。
枝に叩かれメガネを何度も盗られそうになりました、ヘルメットがハイマツ漕ぎにも有効な事を実体験です。

枝に乗ってハイマツ帯から頭を出し周囲を見ても一面ハイマツの緑、ルートなど探しようもありません。
東側の1790峰から延びている稜線が少しずつ近づいてくるのが励みです。


苦戦のハイマツ帯から見た、ルベシベ山へ続く稜線

ハイマツ帯に突入してから約1時間、やっと本当にやっとC1840mで稜線に出ました。
標高差僅か150mを登るのに一時間掛ったのです、疲れた〜!

山頂へは後僅か、でも稜線はハイマツに覆われています。
もう嫌だと稜線の北側の草付きをゆっくり登ります、それでもハイマツと格闘するよりずっと早い。
これ以上高い所は無いと思われる所に近づくと、何も書かれていない殺風景な山頂標識の裏側が目線に飛び込んできました。
歩き初めて6時間20分、今年の目標の一つであり念願だった千呂露川右沢から遡り山頂に立つ事が出来たのです。


チロロ山頂から伏美岳、ピパイロ、1967峰、遠くに十勝幌尻岳

ganさんのアドバイス通りハイマツ漕ぎは苦しく辛かったけれど、耐えて乗り切った喜びは何ものにも替え難い。

そして、素晴らしいお天気、大展望が歓迎してくれているようで、喜びを一段と大きくしてくれます。


山頂から南側の展望、右奥に幌尻岳と戸蔦別岳

南側には伏美岳からピパイロ岳、1967峰北戸蔦別岳、ヌカビラ岳、戸蔦別岳、幌尻岳十勝幌尻岳などが重々しく並び立っています。
すぐ南の1853峰に一本の滝のように見える白い水流が「来れるものなら来てみろ」と言っているかのようです。


山頂東側の1790峰、ルベシベ山へと続く稜線

東側には1790峰や昨年登って大好きになったルベシベ山に続く稜線が見えています。
此処から見る限り、C1440m二股からは右を取った方がハイマツ漕ぎは少ないように思えました。でも稜線上のハイマツを漕がなくてはならないので同じかも知れません。


芽室岳方向、手前に三角錐のような1723峰も見える

北東方向には双耳峰の芽室岳や主稜線上の1723峰が屹立しています。
全体に赤が少ない感じですが、全山紅葉の山々です。


北側のペンケヌーシ岳方向

北側にはペンケヌーシ岳から芽室岳に続く山列がチロロの山列と並んで走っています。

疲れて食欲も感じないのですが、食べなくてはと温かいコーヒーでパンを流し込みます。ゼリーや果物が美味しい。
風も無く暖かい、この時期としては珍しいほどの小春日和。
昼寝をしたいマッタリとした気分ですが下山にも時間が掛かります。
山頂での幸せな時間、もう少しのんびりしたい気分を振り払って、下山に掛ります。


チロロ西峰と手前にコル

下山は西峰とのコルから左沢へと降りていきます。
西峰は時間的に無理ですが、昨年歩いた時の花の豊かさを思い出し懐かしく感じました。


コルから降りる左沢を俯瞰する

左沢には明瞭な踏み跡がありハイマツや薮漕ぎはありません。
C1490mが源頭で水が流れ始めます。
この後、流れの中を歩いたり、涸れ沢を利用した巻き道を歩いて下降を続けますが、滝と呼べるような滝はありません。
この左沢は、登るには多少面白みに欠けるかも知れませんが、下降には安全で有り難い沢だと思います。


左沢のナメ滝

途中巻き道を歩いているつもりでいつの間にか鹿道に入り込んでしまい、あらぬ方向に行きそうになっているのに気付き、笹を漕いで沢に戻るという体力と時間の無駄をしてしまいました。

C870mの三俣に着いたのが1615、急がないと取水ダムまでに日没になってしまいそう。やはりあのハイマツ漕ぎがくせ者でした。
お天気なので空はまだ明るいのですが、谷間はどんどん薄暗くなっていきます。
ヘッドランプだけで徒渉したり、岩の河原を歩く気はしません。
イザとなったら、ツェルトもある、フリースやパーカー・レインウェアーも食料もある、無理をするよりビバークだと思い始めた頃、取水ダムの姿が薄暗い中からボンヤリと現れました。

ここまで来れば、後は整備された林道を歩くだけ、ヘッドランプの光と満月に近い月明かりを頼りに淡々と疲れた体を運びます。
でも、暗く誰も居ない林道を一人で歩くのは余り良い気分のものではありません。
笛を吹き鳴らし、大声で歌を唄いながらの約1時間でした。

追記
今年の山行記録の中で何回か(株)キャラバンの「奥利根アクア」と言う沢靴について報告しています。
水中や濡れた岩などではフェルト底の沢シューズと遜色なく滑りにくいこと、草付きの急斜面ではフェルトより明らかに滑らないこと、アプローチシューズとしても使える事など、私は良い沢シューズだと感じています。
ですが3回目の使用である、イドンナップ岳登山中に靴のステッチ部分の糸が10cm以上切れてしまい、クレーム修理をしてもらいました。
修理後2回目の使用であった今回のチロロ岳登山中に再び同じ所が綻び始めているのに気付きました。

キャラバン社に連絡してみましたら、色々検討しているようで改修に努めるとの返事がありました。
沢靴や山靴は私達登山者の命綱でもあります。
一日も早く、信頼出来る製品に改修・発展させて安心して使える製品にしてもらいたいものです。

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