貫気別山(ぬきべつ) (1318m) 貫気別川西面沢 (日高)  2007.6.27(水) 霧後晴れ



2007.6.27(水)
入渓地点
貫気別川440m
0705
510m二股 0730
604m二股 0800
760m滝 0830
1050m 0950
1255m稜線 1100
貫気別山山頂 1120
1155
780m滝 1320
510m二股 1415
入渓地点 1440
貫気別山は日高主稜線から新冠湖を挟んで西に外れ、リビラ山・ピュウ岳と一つの山塊を作っています。
南西面に巨大な岩壁を馬蹄形に巡らせ、独特の山容と雰囲気を持っている山です。
語源としては「濁った川の山」の意味であるらしい。

夏道の無い山ですので、積雪期以外は沢を利用して登るしかありません。
貫気別川南面沢が面白いという情報でしたが一ヶ所難しい滝があるとの事なので、私達は貫気別川西面沢から訪れてみました。
沢自体は比較的容易なものでしたが、源頭からの笹藪漕ぎは濃密、HYMLの山仲間SGさんと御一緒せず私一人だったら途中でリタイアしてだろうと思う程でした。

前日の午後SGさんから「貫気別山に行こうと思っているが一緒にどうか?」との電話があり、オプタテシケ山の疲労がまだ残っているものの、願ってもないチャンスと同行させていただく事にしました。

平取町振内にある鉄道記念公園で待ち合わせ、荷負・旭を経てリビラ沢を渡り貫気別川の河原を走り行き止まりのC440m地点まで入りましたが、リビラ沢、貫気別川とも数年前の台風などで荒れ放題、砂防ダム工事の為造成された河原の中のブル道を走るのですが、余り気持の良いものではありませんでした。

準備を整え、荒れた河原を歩き出します。
お天気は霧から変わった低い雲が掛かっていますが、明るい所もあり晴れてきそうです。
この時は見えませんでしたが、入渓地点からは貫気別山の山頂部が望まれます。


独特の姿の貫気別山(帰路撮影)

かって整備されていた川沿いの林道は一部を残して跡形も無く崩壊していますし、河原は殺伐とした雰囲気です。


荒れた殺風景な河原を行く

目的の沢の入り口である、510m二股を二人で慎重に評定し、左股に入っていきます。
思っていたより小さな沢の入り口です。


期待させる沢相で始まる

最初から良い雰囲気のナメや小滝などが出て来て期待も高まります。
水はまだ冷たく足先が痺れるよう、石には良く滑る藻が生えていて気を遣わされます。


気持ち良い沢歩きを楽しむ

期待に反し、沢は直ぐに倒木や崩壊地形で埋まった面白みの無い岩屑帯や伏流地帯となり720m付近まで続き、黙々と足を進めます。
この間、604mで南面沢を右に分け700m二股を右に進みました。

SGさんが「こりゃ、豚沢だな〜」と嘆いています。
720mから再び水が流れ始め小さな滝を越え右に曲ると、予想もしなかった大滝が姿を現しました。
「オゥ〜!」と歓声が上がります。


殺風景だった沢相が一変する

760mの2段20mの滝は直登も出来そうでしたが、右から入る沢を利用し左に乗っ越し滝上に出ました。

780mにある10mの滝は左から水際を直登、苦戦するSGさんの足裏を手で支え登り切ります。


核心部を心から楽しみながら遡行する(SGさん撮影)

その後も900m付近まで滝が連続し、巻いたり、細いチムニー状の滝ではシャワーを浴びながら直登、幅広の滝では中央突破を図るなど気持ち良い登高が楽しめる、まさにこの沢の核心部が続き時間の経つのも忘れ楽しみました。


濡れるのも厭わず水と戯れ、笑顔が溢れる

950mで地図では読めない二股があり水量の多い右股に入りましたが、東に進む筈の方向が南東に変わっていきます。
下手をすると山頂直下の岩壁にぶち合ったってしまうかも知れないと戻り、左股を進みました。

900mを越えると水流は少なくなり狭くなった沢地形を登って行きますが、小さな二股、三股が幾つも出て来てその度二人で判断、SGさんがGPSを私が高度・方向をC'Kし概ね東に進路を維持しながら進みました。


水の涸れた沢地形を行く

この付近には僅かでしたが、ミゾホオズキやハナシノブなどが可憐な花を付けていて花好きの二人の気持を和らげてくれるようでした。


ヒダカハナシノブ

1020mで源頭となり、沢地形は益々細く草が目立つようになってきました。
SGさんが「これは何の足跡だ? 鹿じゃないよね」、平たく丸みを帯びた15cm位の足跡、羆しか思い当たりません。
「ここは羆道かよ、怖いけれど利用させてもらいましょう」
しばらく行くと、湯気の出ていそうな新しい緑色の糞が山盛りにしてありました。

1050mで覚悟していた薮漕ぎに突入、稜線コルまでは標高差200mです。
最初は背丈も低かったのですがすぐに2メートル以上の太い笹が密生し苦しい薮漕ぎが続きます。


いよいよ薮突入、どこまで続くのかな〜?

笹を踏みつける足は笹の幹でツルツルと滑ります、腕力で身体を持ち上げざるを得ません。
見通しが利かない為、沢型を外れ支尾根に取り付いてしまうと笹はさらに濃さを増します、その都度下を見て沢型を確認しトラバースしながら登って行きます。

キツイ、苦しい、汚い、笹にメガネを何度も盗られそうになり、顔や襟元には笹の葉がベッタリ貼り付き、埃を吸い込んで咳き込み、私一人だったら音を上げて登頂を諦めていたに違いありません。
SGさんが一緒だったから、いや二人だったから頑張れたのかも知れません。
高度計の目盛りが上がるのだけが支えです。
「あと150m、90m、50m、頑張ろう後30m!」

稜線空際の感じになってきました。
「出た〜!」SGさんの歓喜の声です。
狙ってきた1255mの稜線コルにピッタリと出ました。
そこにはどこから通じているのか、薄い刈り分け道が付いていました。


薮はもう終わり、嬉しい!・・・(SGさん撮影)

薄い刈り分け道に帰路のテープを付けながら登ると、笹が丸く刈られ三角点がある山頂です。
SGさんと思わず握手、霧が流れる山頂からは何も見えませんが達成感で充実しています。


貫気別山山頂

疲れ過ぎたのか食欲もありません、キュウリやスモモが美味しい。
SGさんは裸になって身体を干しています。

上空は青空になってきましたが周囲には霧が流れ、楽しみにしていた日高主稜線は雲の中です。
一時的に隣のリビラ山がかすかに望まれたのが唯一の景観でした。


かすかに見えたリビラ山

30分程山頂に滞在し、下山です。
テープを回収しつつコルまで戻り、再び薮に突入。
あれだけ苦労した登りの薮漕ぎですが降りは薮滑り状態、僅か30分で突破してしまいました。

水流が出てからは沢の核心部を堪能すべく慎重且つ大胆に降りていきます。


倒木とチムニーの間を遊ぶ

降りは流れ込む支流を気にしなくても大丈夫なので、水や岩を純粋に楽しみながら降りていきます。

沢のあちこちに100年は経とうかという大木が根っ子から倒れているのが目に付きます。
岩盤の上の表土が薄いのでしょうか?、土砂と一緒に流れ落ちた感じです。
こんな環境なので川の水が濁る事が多く、「濁った川」の意味で貫気別山と名付けられたのかも知れません。


780mにある10mの滝では、折角ロープを持ってきたのだから使ってみようとロープ頼りで降りて遊びました。


780m、10mの滝

700mまでの沢の核心部を楽しみつつ降り、後は荒れた沢や河原を歩いて入渓地点に戻りました。

そこからは朝は見えなかった貫気別山の姿をしっかりみる事が出来ました。


無事下山し、喜びもひとしお

SGさんから誘って頂かなければ、訪れる事も無かったろう貫気別山。
思えば、昨年のイドンナップ岳、一昨年のピパイロから1967峰もSGさんに声を掛けて頂いて御一緒したのでした。
そしてその度に私の体調が思わしくなく御迷惑をお掛けしました、今回もSGさんにおんぶに抱っこ状態で連れて行って頂いたようなものです。

良い仲間を持ちました。
感謝です、「SGさん有り難う、これからもよろしくね」

GPSトラック
同行させて頂いたSGさんのページ
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