花、花、花の、二日目
時折、鼾だけが響く寝静まったテントサイト。
トムラウシへ縦走するパーティでしょうか、0230頃から朝食の準備を始めています。
ボランティア活動も終了し二日目は自由行動、私達は夕方までに帰宅すれば良いのでそれほど急ぐ事もありません。
0400に起きる事にして寝袋の中でヌクヌク過します。
起床して簡単な朝食を摂り、テントを撤収し荷物をザックに詰め込みます。
0500前には準備完了し、御一緒した皆さんに御挨拶してひと足早く緑岳へと出発です。
御一緒した皆さんと記念写真を一枚 |
朝日を浴びて輝いている高根が原を眺めながら避難小屋から雪渓を渡り緑岳のコルへ向かいます。
避難小屋前からトムラウシへの道を分け、緑岳へ |
緑岳のコルへの登りに掛ると、直ぐに花のお出迎え。
「ワァ、奇麗!」「カワイイね〜」三歩歩けば花に引き止められ、五歩歩いては写真を撮る。
こんな調子ですから、ちっとも前に進みません。
チョウノスケソウ |
花の時期の大雪は初めてのカミさん、チョウノスケソウやキバナシオガマ、ホソバウルップソウ、クモマユキノシタなど、初お目見えの花達に興奮気味。
クモマユキノシタ |
「この先の稜線はず〜と御花畑だよ」の声にもしゃがみ込んで動きません。
タカネオミナエシ |
コルに荷物を置き、空身で緑岳を往復します。
広い稜線はまさに花と展望の楽園、天上の散歩道です。
キバナシオガマ |
ルンルン気分で着いた緑岳、そこからはトムラウシから高根が原、白雲岳、旭岳、東大雪の山々と雄大な景色が待っていてくれました。
緑岳山頂にて |
朝日でシルエットになった東大雪の石狩岳やニペソツが雲海の上に佇んでいます。
東大雪の山々が広がる |
緑岳からは先程のコルまで戻り、小泉岳への緩やかな稜線を辿ります。
この稜線は展望と花の尾根道、オヤマノエンドウ、タカネスミレ、ミヤマツメクサ、キバナシオガマ、チョウノスケソウ、ホソバウルップソウ、タカネツメクサなどが一面に咲いています。
ホソバウルップソウ |
大雪を「カムイミンタラ」、「神々の遊ぶ庭」と名付けたアイヌの人達の自然を見る目、感性に敬服してしまうほどの天上の楽園です。
コマクサ |
チョウノスケソウのアップ |
花を見たり、写真を撮ったり、下ばかり向いている目線を上げれば、新鮮な感じの景色が広がっていてこれまた見入ってしまうのです。
雲海に浮かぶ浮き島 |
そして又「私を見て!」と言っている花達に「奇麗だよ〜」と声を掛けながらしゃがみ込むのです。
ホソバウルップソウのアップ |
タカネスミレ |
緑岳から僅かな距離を一時間以上掛け、大満足で小泉岳に着きました。
次は小泉岳の分岐に荷物をデポし、水とおやつだけの軽装で白雲岳を目指します。
白雲岳分岐までは昨日歩いた道、縦走装備を下ろしサブザックだけで歩く気分は最高、背中に羽根が生えたようです。
白雲岳分岐に着くと、避難小屋から登ってくるKDさん御夫婦の姿が。
相変らず律義に山トイレの幟を掲げながらです。
周囲の人が「アイス屋さんか? 食べたいね」と言っているのを聞き、思わず吹き出してしまいました。
アイス屋さん? |
分岐から広い岩礫の尾根を緩やかに登り詰めると、白雲岳の巨大なクレーターが現れます。
このクレーター周辺も一面の御花畑です。
小泉岳周辺とは花の種類も変わり、エゾノツガザクラ、エゾコザクラ、ミネズオウなどが目立ちます。
エゾノツガザクラ |
チングルマやエゾノハクサンイチゲ、イワウメで白く染まっている所も。
チングルマ |
エゾノハクサンイチゲ |
大雪のあちこちに「○○庭園」と名付けられた場所があります、最初は何と大げさなと思っていましたが何ヶ所も見ている内に、本当にその通りだなと感じるようになりました。
ハイマツの緑と配置されたような岩、そして見事としか言う他ない御花畑、有名なお寺などの庭園はこれらの自然を模したものではないのでしょうか?
白雲岳の御花畑の一部 |
エゾコザクラ |
ミネズオウも沢山咲いています。
花は直径僅か4〜5mmほどですが、白から赤の間で色の変化もあり、絨毯を敷き詰めたように咲いている様子は可憐です。
ミネズオウ |
エゾツツジ |
クレーターの花々を堪能し、急な岩の斜面を登ると岩礫の白雲岳山頂です。
北海道第3位の高峰(1位旭岳、2位北鎮岳)から見る景観は素晴らしく、旭岳から北海岳にかけての沢型の雪渓の縞模様が独特の風情を作り出しています。
大雪独特の縞模様、左に旭岳 |
そしてトムラウシから十勝連峰にかけての大景観、私の心を惹き付けて止みません。
白雲岳山頂からトムラウシ、十勝連峰 |
今回の山旅は「山のトイレを考える会」のボランティア活動に参加してのものでしたが、1泊二日の大雪花三昧の旅でもありました。
北海道の山地の内、日高は「急峻、荒々しさ」と言う言葉が似合っています。
それに対し、大雪は「雄大、たおやか」と言う言葉が似合っていると思います。
そして加えるならば、花の山。特に小泉岳は大雪山の中でも最も高山植物の種類と数が多いと言われています。
そんな花の山々を時間を気にせず歩き、堪能し心から満足した山旅でした。
年に一度ぐらい、こういう山歩きも良いものだな〜。