|
原始ガ原
|
この1週間は全国的に雨模様、中部地方を始め集中豪雨で大きな被害を受けた地域も多かった。
専門家達は寒気が強かっただの、高気圧にブロックされて動きが・・等と後付けの言い訳をしているが、「地球が何か変だ!」が一般庶民感情ではないのかな〜?北海道も例外では無く、ぐずついたお天気が続いたが、今日は晴れの予報である。
それなのに千歳から富良野までずっと低い雲に覆われ霧雨が降っていて、原始ガ原への期待とテンションは下がり気味。
おまけに布礼別から原始ガ原への入り口を見落とし、30分近くロスしてしまった。トイレも設置されているニングルの森入り口の広場に車を止め、朝食を作る。
作ると言ったって、スープ代わりのラーメンとおにぎり一個とキュウリ一本である。
薄暗く霧雨がそぼ降る中で、ズルズルとラーメンをすすっていると何となく周りが明るくなってきた。やれ嬉や! 下がり気味だったテンションは一変、急上昇だ。
ニングル達が可哀想と思って、ご褒美をくれたのかしら・・・?
いそいそと身支度を整え、出発する、雨続きでぬかるんでいるだろうと、足回りは長靴にした。
原始ガ原へは二本のルートが開かれている、滝コースと林間コースである。
林間コースの方が時間的に早く行けるが、今日はのんびり原始ガ原を楽しむのが目的。
滝コースから原始ガ原に上がり、ゆっくり散策して林間コースを降りてみようと思っている。
登山口から直ぐの分岐を右へ、布部川沿いに進む滝コースへ入って行く。雨続きだったのに、水量は思ったより多くない。
滝コースと言うし、多くの人が訪れるのだから遊歩道が整備されているのだろうと見くびっていたら、何の何の、河原を岩伝いに歩いたり結構な高巻きがあったりと、沢歩きの様相だ。
布部川の流れ
とは言っても、山靴でも濡れずに歩けるよう道は付けられてあり、徒渉する所には丸木橋がきちんと掛けられてあるが、ここを歩くには山靴より沢靴か長靴が楽しいと思う。
徒渉点にはこんな橋が
原始ガ原に続く布部川は、沢登りの対象になるような滝が連続するような急傾斜の沢とは異なり、緩やかに流れている。
滝が幾つもあるとは聞いていたが、この流れではあっても小さな滝だろうと思っていた。所が、最初に出て来た「不動滝」立派な大瀧である。
二本並んで落ちている。
不動滝
予想は大外れ! 次々に出てくる滝はどれも大きく立派。
嬉しい誤算、期待で歩くスピードも速まって行く。
不動滝を過ぎ「錦糸の滝」「二段の滝」と進んで行く。
「二段の滝」の上の滝
二段の滝は深い釜を持った滝。釜の緑色が吸い込まれそう。
下の滝のすぐ右横を登って行く。飛沫が掛かりそうな位置関係だ。
「二段の滝」の下の滝
直登すれば面白そうな感じがする、ちょっと怖いか?
水の勢いを映したくて、カメラぶれ覚悟のスローシャッターで切り取ってみた。岩場にミヤマダイモンジソウがひっそりと可憐に花をつけている。
こういう水の多い所が大好きな花だ。
ミヤマダイモンジソウ
お天気はどんどん良くなり、青空も見え始めて来た。気温も高くなって来て水の中が気持ち良い。
しばらく面白みの無い河原歩きを続けると、布部川本流では無く原始ガ原から三の沢が左から「蒼天の滝」となって合流して来た。
この滝も大層立派である。幅広で何本もの流れが細く糸となって落ちている様は涼しげだ。
蒼天の滝
両岸に迫った山肌からは至る所で小さな流れが落ち込んで来ている。
豊かな苔に覆われた岩の間を小さな水が流れ、何ともいい感じである。
この苔に真っ赤な紅葉でも数枚散っていたら絵になるのだが・・・、今は枯れ葉があるだけだった。
小さな流れ
しばらく歩くと、右に踏み跡があるのに気付いたが大して気にする事も無く本流沿いに進むと、またまた立派な滝が現れた。
三方をとても登れそうにも無い高い岩壁に囲まれた30mはあるかと思われる落差の滝。
「昇竜の滝」であった。
昇竜の滝
ここで地図を見て一つの失敗に気付く。
先ほど見過ごした踏み跡を辿ると、「赤岩の滝」と言うもう一つの滝に行けるのであった。
大した距離でもないので戻ろうかとも思ったが、何故か面倒くさくなって止めてしまった。時期的には少し遅い感じだが、エゾアジサイが咲いていた。
青色の奇麗な、私の好きな花の一つである。
エゾアジサイ
昇竜の滝で滝コースは実質的に終わり、滝を高巻き少し登れば一気に展望が開ける広い湿原。
「原始ガ原」だ。
スゲなどが茂る湿原は水が溜まり、その中をテープとかすかな踏み跡を頼りに歩いて行く。
矮性のアカエゾマツと笹が点々と生えているだけの世界。
ワタスゲが一面に穂を揺らしていたら別の表情を見せてくれるのかも知れないが、今は何も無い。
静かだ! 静かすぎる世界だ。
原始ガ原、右が富良野岳 左は前富良野岳
折角だから原始ガ原を当ても無く歩いてみるのも良いだろうと、東の五反沼方面へ進んでみた。
数日来の雨のせいか、背丈程の笹の刈り分け道はぬかるみ、くるぶしより深く沈み込む。
泥がまつわりつき長靴が何度も脱げそうになる。
ここでもいい加減嫌になって、五反沼は諦めた。
原始ガ原と富良野岳
今度は原始ガ原を富良野岳方向へ歩いてみる。
富良野岳への道の分岐には「松浦武四郎」が立ち寄ったと言う標識が立てられている。
何の目的でこの地まで彼は足を伸ばしたのだろうか。道案内のアイヌの人が良い所があると案内したのかも知れないなどと勝手な想像を膨らます。
いずれにしても、その行動力の凄さに改めて驚いてしまう。
武四郎通過の碑
富良野岳への道はアカエゾマツの林の中を通って行く。
明るい湿原とは又一味違った雰囲気である。小1時間、誰にも会わず、静かすぎる湿原を気ままに散策し堪能、林間コースから登山口へ下りる。
降り始めて間もなく、三沢沿いとなり「広原の滝」を見る。
広原の滝
岩肌の苔が印象的な滝であった。
しばらく下りると、「天使の泉」という伏流水が僅かに顔をのぞかせている水場があった。
試しに飲んでみると、柔らかい感じのとても美味しい水であった。
大した期待も無いまま、何となく訪れた「原始ガ原」。
一言で言えば、「たいして良がった〜!」こんなに素晴らしい所だとは思ってもいなかった。
春夏秋冬どの時期に訪れても、違った湿原の色々な表情を見せてくれそうな所である。
今度はぜひカミさんを連れて来てやらなくっちゃ。私の好みとすれば、華やかな時期より秋や冬の静かな落ち着いた時期の方がこの湿原には似合っているような気がする。
何時か冬に来てみたいものだが、アプローチが大変だろうな。
一人ではちょっぴり無理かも・・・。