第三日目


トムラウシ山(2141m) 化雲岳(1954m) 五色岳(1868m)

十勝
トムラウシ山から十勝連山方面

 

2008.8.6(水) 晴れ
二つ沼 0520
三川台 0535
南沼 0705〜0715
南沼キャンプ場 0730
トムラウシ山 0800〜0840
天沼 1035
ヒサゴ沼分岐 1120
化雲岳 1200〜1225
五色岳 1325〜1335
忠別岳避難小屋 1425

別天地

三川台へ辿り着けず、昨日テントを張った二つ沼はユウトムラウシ川の源流、三川台の馬蹄形断崖下に広がるカールに位置している。
緑のカールには雪渓から何本もの水が流れ、池があり、美味しい水が採れるそこは美しい別天地。

三川台の朝
トムラウシの朝

朝食を摂り、テントを撤収しながら二つ沼の景観を眺めていると、何とも清々しい気分になる。
NMさんがパッキングをしている間に行動用の水を汲みにいく。
岩を流れる清冽な水、顔を洗い歯を磨くと気力と元気が湧きだすような感じだ。

出発して標高差50mも登れば、そこが三川台であった。
僅か15分を頑張る気力も失せていた昨日の自分が情けない。
3グループがテントを張っていた、彼らに挨拶しながらも忸怩たる思いが心を支配していた。

二つ沼三川台から二つ沼を見る

満喫

三川台で俵真布への道を左に分け、トムラウシへと黄金が原を歩く。
お花畑の中をうねうねと進む快適なプロムナードだ。
正面にはトムラウシ山、右手には二つ沼のカール、左手には一面のお花畑、夢の中の道。

黄金が原を行くNMさん黄金が原

朝日を浴びてチングルマの穂が光り輝き、アキノキリンソウ、ダイセツトリカブト、オヤマリンドウ、イワギキョウ、イワイチョウ、リシリリンドウ、ミヤマリンドウなどの秋の花が競い合っている。

チングルマチングルマの穂

今回の縦走の核心部は昨日の行程であった、さすがに大変な思いをしたがここから先は天候さえ安定していれば大景観と花を楽しみながらの行程だ。
NMさん共々、大いに楽しみ満喫しながら歩いて行こう。

堪能!

しばらく行くとトムラウシの南沼、青く水と白い雪、黒い岩のコントラストも美しい。

トムラウシ南沼南沼

南沼から一登りすれば南沼キャンプ場、何張りものテントが張られていたが水はすでに枯れかけていた。

キャンプ場から堆積したゴロゴロ石の斜面を可憐に咲くイワギキョウに元気をもらいながら登ると3年振りのトムラウシ山山頂である。

イワギキョウ可憐に咲くイワギキョウ

トムラウシは前回同様、上機嫌で迎えてくれた。
正に遮るものの無い大展望である。何回見ても素晴らしく嬉しい。

旭岳
トムラウシから旭岳(左)、白雲岳(中央)

東には石狩連山やニペソツ、ウペペサンケ、北見富士、武利岳、武華岳が
南には歩いて来た十勝の山並み、山また山の世界である。

トムラウシ山頂にて私

昨日に比べて気温も低く風も適度にあり快適な天候ですこぶる気持ち良い、だがNMさんは寒いと言う。
南国住まいの彼とは快適な気温が5度位違うような気がするな。

痛っ!

トムラウシ山頂で40分近くもゆっくり過ごし、腰を上げる。
ゴロゴロした岩の斜面を重いザックのバランスに注意しながら下ると北沼、ここからは基本的に表大雪らしい緩やか且つ雄大な散歩道。

北沼北沼

会話を楽しみながら緩やかなアップダウンを気持ち良く歩いて行く。
北沼を過ぎた1995Pからのゴロゴロ石の下り、足を滑らせバランスを崩し転んでしまった。

「痛っ!」右の脇腹を岩に打ち付けてしまった。
脇腹の他は異常なし、痛みはあるが打ち身だろうとそのまま歩き続ける。
荷物の重さもあったのだろうが、バランス感覚も老化し始めているのかも知れないと少し悲しくなった。

NMさんが「どうしてこんな山の中に平野があるのだろう」と驚く広い台地、その台地の向こうに秋空を思わせる空を背景にして今回の最終目的地である旭岳がどっしりと端座している。

旭岳

羨望!

クヮウンナイ川の源流部でもある天沼を過ぎると緩やかな斜面の向こうに化雲岳から小化雲岳を通り天人峡へ通じる稜線が見えてきた。
私はまだ歩いたことが無く、何時か歩いてみたいコースでもある。

小化雲岳小化雲岳

そして間もなくヒサゴ沼への分岐、青い水を満々と蓄え石狩岳やニペソツを従えて佇むヒサゴ沼の姿は一幅の絵のようだ。

ヒサゴ沼ヒサゴ沼

この辺りまで来ると登山者の数が急に多くなり始めた。
沼の原や天人峡、白雲岳方面からトムラウシ山を目指す人が多いのだろう。
挨拶を交わしながらすれ違う。

やがて化雲岳に到着、7人の大学生パーティがのんびり寛いでいる。

旭岳化雲岳から旭岳・白雲岳

私達も時間は十分あるとのんびり寛ぐ。
三川台でテントを張っていたカップルもやって来て、たわいのない会話を楽しみ談笑する。

化雲岳の大岩と稜線化雲岳

のんびりしているうちに西からの雲の流れが速くなり、旭岳は見えなくなり忠別岳にも雲がかかり始めた。

トムラウシ化雲岳からトムラウシ山

今日の予定地、忠別岳避難小屋へ向け出発する。
直ぐに大学生パーティに追い抜かれる、その足取りの軽さ・早さに圧倒的な体力差を感じざるを得ない。
俺にもああいう時があったのだと慰めを言いつつ、羨望のまなざしを向けるしか無いのが寂しい。

夏の花

化雲岳から五色岳まではかって道がぬかるんでいる事が多かった記憶があるのだが、今は木道が整備され靴を汚す事も少なくなったようだ。
一部ハイマツが混んでいる所もあるが、さすが大雪よく道は整備されている。

忠別岳避難小屋は稜線から10分程東側に降りた所にある奇麗な小屋である。
この日は小屋に20人程、テントが8張りの利用者数だった。
水もすぐ傍の雪渓から十分な量が流れ出ていた。

雪渓が溶けて間もない場所にはエゾコザクラやチングルマが咲いていて思わぬ幸運であったが、時期外れの印象を受けた。

エゾクザクラの群落エゾコザクラ


チングルマチングルマ

一抹の不安

三日目にして持参したアルコールは底をついてしまった。
仕方なく清貧に徹し、他の登山客達と会話を楽しみ、早々に就寝する。

外は風が強くなり、小屋の窓が揺れヒュウ〜ヒュウ〜音を立てている。
寝返りを打つと、右脇腹が痛む。咳をしても痛い。
嫌な予感がする。ザックに入れて来た腰痛ベルトを脇腹に巻くと少しは良いようだ。

風の音、小屋の軋む音、脇腹の痛み、お隣さんのジェット戦闘機のような鼾、なかなか寝付けない悶々とした時間が暗闇の中に続いたのだった。

 

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4日目に続く

 

 

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