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雄阿寒岳
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前日の夕方まで温泉や阿寒湖の観光を楽しみ、雄阿寒岳登山口で車中泊。
木立に囲まれた登山口は1730にもなると日も暮れて真っ暗、ラジオも電波が遮られるのか入らない。
お酒の力を借りて早々に寝袋に潜り込む。
夜中トイレに行く途中、ヘッドランプの光の中に光る眼がこちらを見つめている。
ぞ〜! としたが狐であった。黒い大きな奴でなくて良かった〜。朝目覚めると、阿寒湖には朝霧が漂っていて何とも幻想的な景観が広がっている、まさに水墨画の世界であった。
朝もや漂う阿寒湖
夜に車で来てテント泊していた男性は朝5時過ぎには出発して行った。
私はゆっくり朝食を摂り6時前に出発準備を整えていると、70歳前後と思われるご夫婦がやって来てしばし雑談。
結構厳しい山なのに、あえて登ろうとするのは余程山好きなのだとお見受けした。登山道は直ぐに太郎湖の脇を辿り、次いで次郎湖を見下ろしながら森の中を進んで行く。
雌阿寒岳のアカエゾマツの森も素晴らしかったけど、こちらの森も負けず劣らず素晴らしい。
只、アカエゾマツでは無くトドマツの深い森である。
トドマツと臨床部に広がる苔がマッチし、斜めからの陽を受けて輝いているようだ。
トドマツ林に広がる緑の苔
昨日も感じたが、針葉樹林帯も自然林であれば陽射しも適当に差し込み、明るく気持ちの良い状態に保たれるようだ。
植林された針葉樹の林が真っ暗で下草も育たず、動物も居着かないのは人間のなせる業であるのだろう。
1合目から2合目、2合目から3合目、各合目間を歩くのに20分〜25分も掛かり長く感じる。
そしてC713mで尾根上に出るが、ここからの登りがキツイ!
ジグを切りながらであるが、見晴らしも利かず、ひたすら辛抱、たっぷり汗をかかせられる。
20分頑張って次の合目標識が出てくるのだけを楽しみに辛い登りに耐える時間が続いた。
時折響く、カケスなど野鳥の声を励ましと勝手に理解して自分自身に檄を飛ばした。
キツイ登りに耐えながら見れば、4合目の標識に「半分以上登りました」と書いてある。
「そうだ、5合目までが異常に長かったのだ」と思い出し、5合目までだと自分を励ます。そして急に傾斜が緩んだと思ったら視界が開け、そこには5合目の標識が立っていた。
「いや〜、良かった〜」安堵のため息、堪らずザックをおろし一休み。
ほてった体に冷たいゼリーがしみ通る。南西方向に昨日登った雌阿寒岳の姿が見えていた。
5合目からの雌阿寒岳
5合目からはそれまでの急な登りを思えば、まるで遊歩道。
10分も歩けば6合目、7合目で頂上台地へ出る。
頂上台地はかなり複雑な地形、グルリと西から南そして東へと回り込み山頂を目指す。
頂上台地から山頂を見る
阿寒湖側の展望に見とれながら歩けば8合目、以前ここには気象観測の建物があったそうで、その土台が残っていた。
阿寒湖と雌阿寒岳
8合目から少し下り、岩混じりのガレ場を一登りすれば雄阿寒岳の山頂であった。
岩がゴロゴロする雄阿寒岳山頂、汗を拭えば今まで見ることが出来なかった東側の景観が新鮮に映る。
真下には針葉樹林に囲まれた神秘の湖「ペンケトー」「パンケトー」を見下ろし、その先には斜里岳が摩周岳や標津岳、武佐岳などを従え大きく端座しているのが印象的だ。
左に大きく斜里岳、右に摩周岳・西別岳など
屈斜路湖や硫黄山も手に取るように見えている。
やや肌寒いが昨日のように風がないので気持ちが良い。
写真を撮りまくり、おやつのリンゴやコーヒーでのんびり時間を過ごす至福の一時である。やっぱり山は良いな〜!
雄阿寒岳山頂で
雌阿寒岳、阿寒富士を眺めていると、昨日の寒さや風、凄まじかった火口の様子等が生々しく甦ってきて楽しい。
雌阿寒岳と阿寒富士
山頂で1時間近くもゆっくりし、下山する事に。
大展望を楽しみながら5合目へと下る。
日曜日で大勢の人達が登ってくるのとすれ違い、挨拶を交わすのに忙しい。
5合目へ戻ると、朝お会いした老夫婦が休んでいた。
ゆっくりゆっくりだが着実に登って来ていて、ここでも雑談に花を咲かせる。
ご夫婦の結構真面目なけなし合いに、休んでいた女性達が少し困った顔をしながらクスクス笑っている。その後も厳しい急坂を苦しそうに登ってくる人達に激励の声を掛け、さらに下ると二組8名の外国人達に出会う。
最近、外国人登山者によく出会う。日本の山の魅力を解ってくれて嬉しい限りだ。
身振り手振りで5合目までだから「ファイト一発」と激励、大笑いした。
次郎湖の手前でトドマツの太い幹に羆の爪痕を見つける。
爪と爪の間隔が約5cm、長さ30cmもある大きな爪痕。
大きな羆の爪痕
こんなのに叩かれたら顔が千切れてしまうのではと思う程の大きさだ。
次郎湖の分岐に差し掛かり折角だから降りてみようとした時、下から「グェ〜」「クゥオ〜」という感じの鳴き声が二度聞こえた。
水鳥やカケスの声ではなく、動物のようだったが何だか解らない。羆の爪痕を見たばかりだし、「君子は危うきに近寄らず」の例え通り、笛を鳴らし大きな咳払いをしながら一目散に逃げ帰った。
太郎湖まで降りてくると、そこにはホッとする平和な穏やかな風景が待っていてくれた。
太郎湖
道東の山旅2日目も天候に恵まれ、雄阿寒岳と道東の大景観を楽しむことができた。
結構辛い登りもあったが、それはそれで充実感を感じた山であった。満足感に満たされ、弟子屈のアルカリ温泉で汗を流す。
ここの温泉はツルツル、ヌルヌルの温泉、料金もすっかり嬉しくなる300円だ。その後、道東の山旅三日目の登山のため摩周湖第一駐車場に向かう。
駐車場の係員のおじさんに事情を説明し車中泊する事を伝え、駐車料金410円を支払う。
水道や清潔なトイレがあり、快適な車中泊が過ごせる駐車場であった。