斜里岳(1545m)

道東 2008.9.30(火) 晴れ


 

斜里岳
清里から見た斜里岳

 

2009.9.30(火)
清岳荘 0545
下二股 0630
上二股 0800
馬の背 0835
斜里岳山頂 0950〜0945
龍神の池 1025
熊見峠 1055
下二股 1135
清岳荘 1215

斜里岳

オホーツクの秀峰、斜里岳。
オホーツクから見る斜里岳は長い裾野を山頂に向かって一点に絞り込むような優美なピラミット型をしていてとても美しい、斜里町や清里町のシンボルとなっているそうだ。
一方、摩周湖や阿寒方面からは幾つかのピークを持っているのが判別でき別の山のように感じる。

プロローグ

今回の道東の山旅では余り名の通っていない標津岳や武佐岳なども訪れようと考えていた、しかし前日摩周岳から眺めてやはりもう一度斜里岳には登りたいと強く思った。
それだけ良い思い出のある山であったし、登山口になっている清岳荘の管理人さんが私が所属しているHYML(北海道の山メーリングリスト)の会員で是非お会いしてみたいという思いもあったのである。

 

清岳荘

前回カミさんと訪れた時にあった清岳荘は残念ながら1998年に火事で消失していまい、現在の清岳荘は多くの人のご努力で再建された。
再建以来管理人をされ、山荘の維持管理のみならず、登山者への助言、山道の維持補修、コース案内の整備、ウオーキングコースの整備などをされて来たのが、私のメーリングリスト仲間の方なのである。
メーリングリスト仲間の特徴は、ハンドルネームは知ってはいても、顔も本名も知らないことが多い。
私にとって管理人さんはまさしくそういう人であり、彼にとっての私も同様なのである。

清岳荘管理人さんと愛犬のエル

清岳荘に着くとそこは山小屋というより、研修センターと言うイメージの立派な建物が建っていた。
丁度、管理人さんが愛犬エルを連れて買い物から帰って来た所で、早速ご挨拶。
簡単な手続きや食料等必要品を運び込み、しばし管理人さんと歓談。
真摯で実直そのもののお人柄、色々ご苦労はあるがそれを乗り越え、地元の人や多くの登山者達から慕われている方である。

 

沢コース

斜里岳登山の醍醐味は初心者でも沢歩きの魅力を楽しめる点にあると思う。しかも沢装備は不要なのだ、靴も登山靴でよく濡らす事も無い。
私も存分に楽しみ、その魅力をカメラに残すべく朝一番で山荘を後にした。
予定としては一ノ沢沿いの旧道を登り、帰りは熊見峠を経由する新道を降りるコースである。
出来れば南斜里岳をも訪れたいと考えていたが、管理人さんから最近羆がうろついているとの情報を頂き、即諦めた。

 

カメラぶれ

歩き出して15分もすると一ノ沢沿いの道となる。
まだ午前6時、谷筋で朝日も差し込まず全体に薄暗い。
この沢は酸性が強く鉄分を多く含んでいて魚は住めないそうだ、勿論人間も飲めない水である。

沢水

徒渉を何回もくり返すが、鉄分が岩にこびりついている為か殆ど滑らないのが有り難い。
河床の岩は赤く染まり異様な感じがする、鉄分が長い年月の末に沈殿し錆びて赤くなっているのだろう。
適時写真を撮りながら進むが、暗いためシャッタースピードを遅くせざるを得ず苦戦する。
特に滝や水の流れを表現しようとするとなおさら遅くする必要があるのだ。
こういう場面では三脚が必要なのだが、でも重いし、悩みどころなんだよな〜!
仕方なく、息を止め、筋肉を硬直させて、お地蔵様にでもなったつもりでシャッターを押す。

鉄を含んだ赤い河床が特徴流れ

 

滝三昧!

新道と旧道の分岐である下二股を過ぎて間もなく、この沢の核心部へと入って行く。
滝が次々と現れるのだ。

水連の滝水蓮の滝

滝が出てくるという事は傾斜も急になりルート取りも難しくなってくるのが沢の常識だ。
滝や地形を読みルートを判断するのが沢歩きの醍醐味なのだが、ここは一般登山道。
このため、ルートを示すピンクテープや赤ペンキマークが数多く付けられている。
少し見通せる所では5〜6のテープや赤ペンキが見える程で、折角の景観なんだからこんなに付けなくてもと感じるが、管理人さんによるとこれでも迷うという苦情が多いと言う。

羽衣の滝羽衣の滝

滝にはそれぞれ名称がつけられている、羽衣の滝・七重の滝・龍神の滝・霊華の滝・・・

羽衣の滝

急な斜面や岩盤をトラバースする場所にはロープや鎖が取り付けられ、特に危険な所はない。
それでもこのルートを下りで使う際にはかなりの緊張を要求される所が数カ所あると思う。

方丈の滝七重の滝

のんびり1時間以上掛けて登って来た。上部には稜線空際も見え始めそろそろ沢も終わりの予感である。
左岸から支流が合流してくる所に「龍神の滝」が落ちている。
この沢は上にある龍神の池から流れ落ちている沢である。

龍神の滝

本流には「霊華の滝」が掛かっていて、ここで沢は実質的に終りである。

零下の滝霊華の滝

 

一汗!

沢は源流部となり、新道との分岐である上二股に着いた。
ここから岳樺等の林の中のかなり急な沢型を詰め、次いで急なガレ場を登るようになり、一汗も二汗もかかせられる。
ここが斜里岳登山の一番の頑張りどころ、9合目の標識には胸突き八丁との表示も併設されていた。

30分ほどの頑張りが要求されるが、登りきればそこは稜線上のコル「馬の背」で、一気に展望が広がる。

馬ノ背から山頂を見上げる馬の背

馬ノ背から山頂まで見た目はかなりあるように感じられるが、歩けばすぐである。
山頂直下には「斜里岳神社」の小さな祠があり、無事歩けた事への御礼と斜里岳の美しさが未来永劫続く事を願って心を込めて参拝した。

神社の傍にはチングルマの葉が見事な紅葉を見せている。

チングルマチングルマの紅葉

 

チョット〜! 霞が

十数年振りの斜里岳山頂である。懐かしい風景が変わりなく出迎えてくれた。
北東側には海別岳その奥に雲を頂いた羅臼岳、野付半島や国後島も見えている。

知床方向の眺め海岳


北から北西にはオホーツクの海岸線が何処までも延び、オホーツク海の茫洋さが圧巻だ。
西から南側は摩周湖や屈斜路湖、阿寒の山々。

摩周湖摩周湖

素晴らしい景観だが、やや霞んでいるのが残念だ。
晴れてはいるが昨日までと違い霞んできているのは、明日から雨と言う予報通り下り坂なのかも知れない。

 

山頂にて山頂にて

斜里の町、畑、入り組んだ防風林が面白い田園風景を作り出している。

斜里の町を見下ろす

10分おきに3人の単独登山者が次々に登って来た。
皆さん満足そう、山座同定や地点評定等を皆さんで楽しむ。

約1時間も山頂でゆっくりし、下山する事に。
チョッピリ南斜里岳が気になったが、羆は恐い、火中に飛び込むより避けるのが賢明と素直に新道経由で降りる事にした。

 

龍神様

馬ノ背から上二股へ降り、近くにある「龍神の池」に立ち寄った。

龍神の池龍神の池

小さな池で透き通った湧水が流れ出ている。
これが下で龍神の滝となって一ノ沢本流に合流しているのだ。
この湧水は大量の鉄イオンが含まれた強酸性、その鉄分が沈殿して鉄釜となり池全体の器になっているのだそうだ。
龍神様の胃液が流れ出ていると思えばいいのかしら・・・?

 

甘酸っぱい!

稜線上の見晴らしの良い新道を熊見峠へ歩く。
前には摩周湖、振り返れば斜里岳、南斜里岳、右下深くに登って来た一ノ沢だ。

稜線には大量のコケモモが実を付けている。真っ赤を通り越して、透明がかった赤紫色で美味しそう。
熊さんの分を残して幾つか頂いた、甘酸っぱさの中に少しの苦み、中々乙な味である。

熊見峠で大展望とはお別れである。ぐるりともう一度眺めて一ノ沢への転げ落ちるような急坂に突入した。

熊見峠熊見峠からの斜里岳

 

ガクガク!

新道の辛い所は熊見峠からの下りである。
決してここを登ろう等思わない急傾斜、前回もここが一番辛かった記憶がある。
でも、段差が大きく苦労する所等は山荘の管理人さんが土嚢を幾つも置き整備してくれたお陰で多少歩き易くなっていた、有り難うございます。
それでも余りの急な下りに足はガクガク、途中で一休みしなければならない程であった。

やっとの思いで下二股へおり、旧道を山荘へ引き返す。
疲れが出る頃だし徒渉もあるので、気合いを入れ直し緊張感を持って歩いた。

山荘が見えほっと安心、管理人さんに帰着の挨拶。
千切れんばかりのエルの尻尾と管理人さんの笑顔が出迎えてくれた。

 

エピローグ

沢沿いの気持ちよいコース、立ち去りがたい大展望、気持ちが雄大に勇気をもらった気分になる山、忘れがたい山、それが斜里岳。
今回の山旅ではパスしようと思ったのも事実だが、訪れて良かったと心底思った。

予報では明日から下り坂、出来ればもう一山と思っていたが、今回はこれで良しとしよう。

本当に久しぶりだった道東の山、阿寒のアカエゾマツやトドマツの広大な森、恐ろしささえ感じた噴火口、摩周岳の新鮮な景観、変わりなく迎えてくれた斜里岳、毎日入った温泉と心の底から楽しめた。

思い切って出て来て本当に良かった「道東の山旅」、背中を押してくれたカミさんにも感謝。
何かお土産を持って帰らなくちゃ〜!

 

 

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