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初山
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車の外気温計は-16℃を指している、道は一部乾いているが大半は凍って黒く光っている、いわゆるブラックアイスバーンである。
慎重にいつもは30分で着く支笏湖まで40分を掛け、紋別岳登山口へ着いた。
紋別岳
すでに停まっていた車から作業員風の男性が降りて来て「電波塔整備のため、ブルトーザーが入って除雪作業を行っています。十分注意して登山して下さい。」とのこと。
除雪作業中の紋別岳南東尾根に付けられている管理道路を歩くのは面白みが無いと、南尾根に付けられている送電線尾根ルートで登ることにした。
紋別岳には電波塔の保守管理のための管理道路とは別に、電力供給の為に最短距離の南尾根に送電線が通され、そこには保守点検用の道も整備され薮が刈り払われているのである。
15分程進んでから管理道路と別れ、送電線が引かれている南尾根へと踏み入る。
道は忠実に送電線沿いに行くので迷う心配は無いが、通る人は少ないのでラッセルを覚悟した。ところが、昨日のものと思われる数人のトレースがしっかりと付いている。
「ラッキー!」今年はついているのかも・・・と、有り難く利用されて頂く。
直ぐに小さな沢を掛けられた丸木の橋を渡る、凍っているので少し怖い。
慎重に、慎重に!
丸木橋を慎重に通過
この送電線尾根は紋別岳への最短ルートでもある、それだけ斜度もきつい。
スノーシューでも直登するのが厳しい所が何カ所もあり、小さなジグを切りながらのんびり登って行く。
汗をかかないようにと思っていたが、急斜面の頑張りで汗が滴り落ち眼鏡も曇る。
たまらず休憩、上着を調整する。
左後ろには支笏湖と樽前山・風不死岳が木々の枝越しに姿を見せ始めた。
送電線尾根
いくら空身とは言え、先を行くカミさんに次第に離されていく。
その度に「オ〜イ、なかなかの景色だぞ〜!」とか「チョット写真撮ってくれる〜?」と苦しさを隠して追いつく、もう齢なんだから少しは気配りしてくれよ〜!
一寸待ってよ〜!
空は快晴、陽射しも強い。サングラスをしていても眩しい位だ。
気温は低いが風も無く寒さは感じない。
鹿道が何本も横切っている、彼らも国立公園で禁猟区だと言う事を知っているのだろう、最近は我が物顔で悠然としている。
右側から管理道路が延びて来て、それと合流するようになるとそれまで見えなかった恵庭岳、漁岳、空沼岳などが視界に飛び込んでくる 。
なだらかに広がる雪の斜面と横たわる山々、まさに白銀の世界である。
恵庭岳〜空沼岳
管理道路では一台のフルトーザーが除雪作業中、邪魔にならないよう避けてやり過ごす。
ここからは紋別岳山頂まであと僅かだ、のんびり景色とおしゃべりを楽しみながら足を運ぶ。
真っ青な空に雪が付いた電波塔が白く映える山頂に到着。
澄み切った空、清々しい大気、支笏湖ブルーが一段と映える湖の向こうに樽前山と風不死岳が一段とその存在を主張しているようだ。
紋別岳山頂
紋別岳は標高は低くても独立峰、360度遮るものが無い広がりは何度立っても素晴らしい。
東から南東にかけ南北に延びる日高山脈が千歳市を前景にその白く輝く峯峯を惜しげも無く見せている。
その雄大さに言葉も無く、カミさんと只只見入ってしまう、何と言う素晴らしさ、何と言う神々しさ。
日高の峰峰
東側には夕張岳と芦別岳が雲をたなびかせながら横たわっている。
大雪や十勝の山々は雲に隠れているが、その姿が眼に浮かぶようだ。
そして北には札幌の大市街地を挟んで石狩湾、増毛山地は雲の中だが樺戸山地がよく見えている。
芦別岳、夕張岳
大景観を堪能していると汗が引き寒さを感じるようになってきた。
パーカーを羽織り、温めて来たおにぎり、熱いコーヒー、干し柿、チョコなどをお腹に納め、体を温める。
恵庭岳をバックに
風が弱く樽前山の噴煙も苫小牧の煙突から立ち上る煙も真っすぐに立ち上っている。
気温は低いが平安な幸せな気分を心から感じる一時だ。
樽前山
そして支笏湖ブルーの湖水を満々と蓄えた湖面の向こうには、白老三山・ホロホロ山・徳舜瞥山・オロフレ山が凛々しく聳え一幅の絵のようだ。
紋別岳からの支笏湖
寒さを凌ぎつつ紋別岳山頂での時間を満喫し下山。
下りも送電線尾根を降りる事にした。下りだから少々潜っても関係ないとスノーシューをザックにくくり付け、つぼ足で急斜面を駆け下る。
途中、尾根から左の谷へ一本のスキーのシュプールがほれぼれするような曲線を描きながら落ち込んでいた、あんなに滑れたらと羨ましい程見事で上手なシュプールであった。
雪の下りは足や膝に優しくて有り難い、僅か40分で登山口へ降りて来た。
今年の初山「紋別岳」は上機嫌で私達を迎えてくれた。
新雪に輝く山肌、透き通った空気、素晴らしい大展望、本当に素晴らしかった。
有り難う!下山して支笏湖休暇村の温泉につかりながら、今年も多くの山々に英気をもらい楽しんでいこうと静かに思った。
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