風不死岳山頂付近より恵庭岳と支笏湖を望む
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風不死岳
プロローグ
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支笏湖の南側を走って北尾根登山口へと向かう。
276号線から登山口へ入ろうとすると雪が溜まっていて入れない。仕方なく道路沿いに車を停めた。
例年この時期には登山口まで車で入れるのに、今年は雪が多かったのかな?雪も多いし、緩んでズタズタ雪になることを予想しスノーシューもザックにくくり付け歩き出す。
林道から北尾根に入り3合目までは雪道と土道が入り交じっていたが、それ以降は残雪がたっぷり残っている。
昨年の今頃は6合目まで雪が無かったのだから、大違い。もっとも昨年は異常な小雪だったのだ。目映い陽射しも豊か、温かい、薄手のシャツ1枚で丁度良い。
緩んだ雪に足を取られつつ、急ぐ事は無いとおしゃべりを楽しみつつのんびり足を運ぶ。
小鳥たちも気持ち良いのか盛んにさえずりを交わしている。
今年初めて聞くウグイスが上手に鳴いている、コゲラが騒がしい、アカゲラだろうかドラミングが森に響いている。
支笏湖の森の豊かさを感じさせる一コマである。振り返ると、支笏湖のむこうに紋別岳が静かに佇んでいた。
支笏湖と紋別岳
風不死岳北尾根は緩む事の無い斜度で一直線に登っていく。
5合目からは斜度が一層増し、雪に靴先を蹴込みながらの一歩一歩である。
カミさんは「後ろを振り返ると怖い、だから後ろは見ないようにするわ」とストックを押す腕に力を込めている。
雪の北尾根を登る
6合目付近から風が急に強くなって木々が轟々と騒ぎだした。
吹かれて寒い。鼻水がとまらない。
カミさんは日焼け防止の為につばの広い帽子を被ってきたため、飛ばされそうになり苦労している。パーカーを着込み、ついでにアイゼンを付ける。
カミさんはフードも被り、帽子止め。
風を遮ると気持ちにも余裕が出てくる、アイゼンのお陰で靴がズレ落ちる事もなくなり快適だ。C800mを過ぎるとこれまで左側に平行に走っていた大沢が合流してくる。
木々の葉が無いため良く見通せ、まだ雪が一杯詰まっていて穏やかな表情をしている、今年の夏には大沢を遡ってみたいな。
大沢が合流してきた
C950mを越えると傾斜は一段と増し、小さな岩場やロープ場が連続する。
夏場だと何でもない所だが、雪が張り付き壁になっている所もある。
岩陰は堅く凍り付いているし、ロープも雪に覆われ何所にあるのか良く判らない。
ピッケルは持ってこなかったで手で雪を落とし、カミさん用に大きめの足場を作りながら慎重に乗り越えていく。
それでもヤバそうな所はシュリンゲを延ばして引っ張り上げる。
甘く見ないでロープやピッケルを持ってくるのだった。反省!ようやく岩場を乗り越えると視界が一気に開け、支笏湖が目に飛び込んでくる。
支笏湖ブルーが目にしみる。
支笏湖ブルーが鮮やか
支笏湖に飛び込んでいくかのような錯覚にとらわれる。
紋別岳や恵庭岳が湖に引き立てられ美しく聳えている。
何度見ても美しく風不死岳に来た事を感じさせてくれる光景である。
恵庭岳を見ながら
山頂部に出て少し歩けば、風不死岳山頂である。
ゆっくり来たせいか、思わぬ雪に手間取ったせいか、いつもより大分時間がかかったけれど無事着いた。
北尾根の風から想像して、山頂はどんなに吹き荒れているのかと少しビビっていた。
だが、地形なのか山頂は穏やかで風も無い。
燦々とした陽光が降り注ぎ、温かい日溜まりが待っていてくれた。樽前山が堂々たる姿を見せている。
例年この時期は樽前山の雪模様が独特の縦縞となるのだが、今年はもう少し先のようだ。
樽前山
ザックを降ろし、誰も居ない静かな風不死岳山頂でゆったりした時間を味わう。
グレープフルーツやゼリーが美味しい。風不死岳と言えば、何と言っても支笏湖だ。
今日も深みがかったブルーが冴えて引き込まれるようだ。
そして湖のむこうには恵庭岳、漁岳、丹鳴岳などの山々の連なりが続く。
支笏湖と背後に連なる山々
西側には白老岳、ホロホロ山、徳舜瞥山、オロフレ山などが広がっている。
少し霞んでいて残念だ、羊蹄山等が微かに見えている。
先日遊んだ、竹山も大きな雪原で存在を主張していた。
上の写真の左側、徳舜瞥山などが目立つ
まったりとして暖か、眠くなってくる平和な山頂である。
山々の姿を見ながら、あの山に行ったときは・・・この山の時はと、たわいもない話が弾む。
山頂にて山ならではの幸せなひとときだが、余りゆっくりしていると気持ちが弛んでしまいそう。
そろそろ下山する事にしよう。
山頂直下からC900m位までは登りでも慎重になった所である。
下りでは更なる慎重さが要求される。
一歩一歩確認し、確かめながら下っていく。
岩場の部分は特に気を使う。後ろから「あっ!」と言う声とザーという音。
振り返るとカミさんが足を滑らせた、斜度は50度以上ある岩場の下りである。
アッ!と思ったら、運良く設置してあったロープに引っかかるように停まった。
ロープが無かったら5・60mは滑り落ちていただろう。良かった〜!
家に帰り、見たら左脇に青あざが残っていたと言う。
慎重に・・・
それ以降もC600m付近まで慎重に意識してゆっくり下ってきた。
緊張から解放され、やれやれと前を見ると紋別岳がご苦労様と見守ってくれているかのように佇んでいた。
一息ついて
残雪期にも何度も訪れている風不死岳、今回は特に雪が多かった。
そのため、8合目から上はかなり厳しい状況もあった。例年通りで不要だろうとピッケルもロープも持っていかなかったが、甘かった。
北尾根は初めてのカミさんを連れていたのに・・・。
危うく、怪我をさせる所だった。「厳しい状況を想定して準備」を肝に銘じていかなくてはと改めて思った。
・ ストックに体あずけて佇めば 眼下に碧き支笏広がる
・ ふきのとう春の疾風を受け流し 力蓄え青空めざす
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