ホロホロ山から見る羊蹄山とニセコ連山、左はルスツスキー場と竹山
|
プロローグ
|
南白老岳、雪を繋げない状態だった。
ホロホロ山には何回も訪れている、夏場には東側のヒゲ小屋ルートと西側の徳舜瞥山から、冬は大滝の北西尾根からだ。
でも、北尾根を辿るのは初めてである。
上手く雪を繋げるかも判らない、地図もなくルートも良く判らない、正直不安で一杯である。
北側のせいか、取り付きから雪は十分あり締まっている。つぼ足で大丈夫のようだ。特徴の無い樹林帯が続く、しばしば振り返っては見え隠れする南白老岳との位置関係をC'Kして頭に叩き込む。
南白老岳(左)と白老岳(右奥)
歩き出してしばらくは不明瞭な地形を登っていく、ルートが正しいのか不安が募る。
時折付いているピンクテープを見つける度に少し安堵する自分が居る。C820mへの急登をひと頑張り、C850mで明瞭な尾根筋になってきた。
どうやら、ホロホロ峠からは北尾根に北東側から合流しているようだ。
帰りにルートを間違えないよう、要注意箇所としてしっかり地形を頭に刻み込む。
正しく北尾根に乗っていると確信できただけで、正直嬉しい。
大きな岳樺やトドマツの樹林帯で見晴らしは無いが、比較的緩やかな斜度の尾根を淡々と歩く。ふと、目の端に何か動くものが・・・。
見るとすぐ脇の木の根元から真っ白いオコジョだかイイズナが上半身を出して私を見つめている。
10〜15cmほど、小さくて可愛い。
立ち止まって私もじっと彼を見る。
2・30秒位だったろうか可愛い可憐な姿を見せてくれた後、すっと根元の穴に隠れた。
何だか、とても幸せな気分で嬉しい。諦めず登ってきたご褒美だったのかな?標高1050mで樹林帯が切れ大雪原が広がり始めた。
右前方には何度も歩いている北西尾根が見えている。もう安心だ。
振り返ると、支笏湖と樽前山・風不死岳、恵庭岳が存在を美しくアッピールしている。
見慣れている光景だが、何時見ても気持ちが洗われ、清々しくなる光景だ。
支笏湖(中央)を挟んで左に恵庭岳と漁岳、右に風不死岳と樽前山
高度を稼ぐにつれて、北〜北西方向の景観が広がり出す。
何と言っても眼を惹くのは、ニセコ連山を従えた蝦夷富士・羊蹄山の姿である。
そして北には、喜茂別岳や無井根山、遠く積丹の山々の姿も見えて来た。
蝦夷富士
この2月に地吹雪で撤退したのはこの辺りだったのかなと思いつつ、C1200mを越えると正面に1281mPのホロホロ山の肩が見えてきた。
1281mP
ハイマツが姿を出し始めていて、迂回しながら雪を繋いでいく。
ホロホロ山の肩、1281mPに着いた。
数年振りに見る、この方角からの懐かしいホロホロ山や徳舜瞥山の姿である。
肩から見るホロホロ山
肩からホロホロ山山頂へは両側が切れ落ちた岩稜を渡って15分ほどなのであるが、すでに岩稜の雪は溶けハイマツや灌木がしっかり姿を見せている。
今日はここまで来れただけで十分だ、ハイマツ漕ぎをしてまで山頂まで行く事は無いと素直に思った。ホロホロ山から延びる徳舜瞥山への稜線、そして屹立する徳舜瞥山。
静かに密やかに佇んでいる。
徳舜瞥山
ザックを降ろし、スノーシューを敷いて腰を下ろす。
陽射しが降り注ぎ温かく風も無い、ただボケ〜としているのが気持ち良い。
ホロホロ山山頂にも、徳舜瞥山にも人影はない。いつも通りの一人きりの世界だ。
熱いコーヒーが何よりのご馳走だ。香しい香りに夢心地。南の白老の海岸線は近いのに霞んでいる、今朝の霧の影響なのかしら・・・。
支笏湖方面も見えているがやや霞んでいる。
反対に北西側はすっきりとした大展望だ。
恵庭岳と支笏湖、手前は白老岳
眺める山肌は雪もかなり溶け、ハイマツの緑が目立ち初夏の山の雰囲気だ。
そろそろ、北国の山も雪のシーズンから花のシーズンへと移ろっていく。羊蹄山が美しく裾野を引いている。
まだ白く見えるニセコ連山にも春の、花の季節が訪れ始めているのだろう。
ニセコ連山と羊蹄山
カミさん心づくしのお弁当を大景観をおかずに頂く。
まったりとした眠くなるような平和な時間が過ぎていく。
グレープフルーツやゼリーも食べ、行動食のドライフルーツにも手が伸びる。
これじゃ、山に来て太るのも仕方ないか・・・?
風不死岳と樽前山
先週登った風不死岳、わずか1週間で雪が殆ど消えてしまっている。
樽前山も風不死岳も我が家から見慣れているのとは反対側だけに少し妙な感じだ。
白老大地の大きさと平坦さに改めて新鮮な感じを受ける。
小1時間ものんびり過し、下山にかかる。
大雪原の中で北西尾根を左に分け、北尾根を下る。
見覚えのあるC850mに戻ってきた、ここで間違えたら厄介な事になる。
念のためGPSでC'Kする、間違いない。
北へ延びる尾根と別れ、北東へと降りていく。
不明瞭な地形が続くが、南白老岳の右手を狙って降りていけば良い筈だ。やがて車の走る音が聞こえ、さらに進むと峠の雪崩防止のトンネルチューブが見えてきた。
南白老岳を訪れるつもりだったのに、このところ続いた6月並の陽気で稜線の雪が溶け、諦めざるを得なかった。
そして急遽、変更して登ったのがホロホロ山。
何の準備もしておらず、地図さえ持たなかった。
道迷いして神様から叱られても仕方ないのに、上機嫌で受け入れてくれ出迎えてくれた。ホロホロ山の肩からはハイマツ漕ぎが嫌で、僅かの苦労を惜しんでしまったが悔いは無い。
大景観に浸れた事、オコジョに出会えた事、道迷いもしなかった事、全てラッキーだった。こういう時もあるけれど、これが当たり前と思ったらきっとしっぺ返しを喰うだろう。
今回訪れたホロホロ山北尾根、疎林が続き傾斜も適度、山スキーを楽しむには絶好のルートだと思う。
ただ、冬期は白老・大滝間の道路が閉鎖になるので、取り付きまでが大変かも知れない。