長官山山頂から石狩平野南部を見る
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長官山
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今年に入って私が住む千歳市などの石狩南部はすっきり晴れる日が少なく、どんよりした日が続いている。かと言って毎日雪が降っている訳でもなく、雪は例年より少ない位だ。
山に行けないので街中ウオーキングをしているが、山とは気持ちも雰囲気も全く違う。
山恋しい気持ちが極限近くまで高まってきたこの日、曇り時々雪の予報とは異なり、晴れ間が見えている。
午前中ぐらいは持つかも知れないと、急遽出かける事に。
自宅を出ながら見ると支笏湖方面は雪雲がかかりそう、夕張方面は黒い雪雲の覆われている、馬追丘陵や安平の丘陵は何とか大丈夫そう。
「よ〜し、馬追の長官山で遊ぶにしよう!」話は変わるが、地球温暖化が叫ばれて久しい。
北海道でも十数年前から、真冬に湿った雪や雨が降って翌日にはスケートリンクと化したり、夏にはエアコンが欲しくなったりと、温度上昇を如実に感じるようになった。その影響なのかどうか分からないが、以前には数えるほどであった越冬する白鳥が年々その数を増やしている。
数年前までは大半が南の本州で越冬していたのにである。
その代わり、本州を縄張りにしていたサギが冬でも見られるようになってきた。馬追に向かう途中の川には、そんな横着者の白鳥達が朝寝を決め込んで丸くなっている。
厳冬期ならではの川霧の立ち上る河原で休む白鳥達の姿はなかなか絵になる光景でもある。
厳冬の川霧が立つ河原で休む白鳥達
馬追丘陵には何本もの自然遊歩道が整備され、入り口も何カ所かある。(概念図参照)
馬追の遊歩道の概念図
長官山へは北側の長沼スキー場から入るのが一番近いが、今日は南側の馬追温泉から訪れる事にした。スキー場の騒音を浴びる事無く、静かな山を楽しめるからである。
温泉の駐車場は遠慮して、道々傍のスペースに車を止めて歩き出す。
左手の建物が馬追温泉
温泉の匂いがかすかに漂う小さな沢沿いの林道をのんびり歩きだす。
雪は全体に少なめで、スノーシューを付けていれば10cm位沈むだけだ。まだ朝日が差し込まない谷間は冷気が漂い、寒くそして薄暗い。
ハルニレやハンノキ、桂の巨木が次々にヌゥ〜とお化けのように現れ、ゾォ〜とする。
カミさんが「熊は出ないわよね?」、やはり何か出てきそうな気に緊張しているのだ。
久しぶりの感触を楽しみつつ・・・
沢沿いの谷間を10分ほど歩いて、稜線に通じる支尾根に取り付く。
尾根と言っても傾斜は緩やか、動物の足跡クイズなどをしながらのんびり歩く。狐と鹿の足跡が多い、ウサギが少ないのは何故だろう?
少し大きめの指先が尖った足跡は最近増えたと言うアライグマか。自分たちの足音だけが響く林の中を15分も登れば、稜線は真近だ。
稜線はもうすぐ
周りはトドマツ、ウダイカンバ、アズキナシ、ハウチワカエデ、イタヤカエデ、シウリザクラなどの木が多くなってきた。
シ〜ンと静まり返ったしじまの中、雪を踏みしめて歩くのは何とも気持ちがいい。
「やっぱり山は良いな〜!」木々が混んでいて視界は利かないが、時々長沼の町や由仁の町並みや平野が垣間みられる。
その度に立ち止まり、歓声を上げたり、あそこは何処? とひと休み。
あそこは何処かしら?
稜線上では緩やかなアップダウンを繰り返しながら北上、似たような小さなピークを3つ程越えると長官山の山頂である。
山頂直下にはキタコブシの巨木が印象的に立っていた。
春になったら花を見に来たい、そう思わせる立派なコブシである。山頂部は木々が刈られ展望台も設置され、眺望は欲しいままである。
長官山山頂 (下山時撮影)
残念ながら霞んでいてはっきりとした遠望は得られなかったが、西には石狩平野が漠として広がりその向こうには支笏湖から札幌に至る山並みが連なっている。
ここから石狩平野の開拓構想を練ったという昔のお役人さんはこの光景を想像出来たのであろうか?
漠とした広がりを見せる石狩平野
東には由仁や栗山の町並みと夕張の山々が佇んでいる。
北から北東にかけては暗い雪雲に覆われ、何も見えない。
お天気が良ければ、増毛や樺戸の山々や夕張・日高の山々の勇姿も見られる事だろう。
長沼の町並みと雪雲に沈む山々(左端は恵庭岳)
山頂の見晴し台で熱いコーヒーを飲みながら景観を堪能する。
思いがけない展望に何か得をしたような、もうけ物をしたような幸せな気分である。
日射しも暖かく風もない、私たちだけの貸し切り・独り占めの長官山。
申し訳ないような気持ちですべてに感謝しながら、空と大地の広がりに酔いしれ、大きなおにぎりにかぶりつく。南には馬追丘陵が延び、もう一つの顕著なピーク瀞台も見えている。
長官山から南を見る。左のピークが瀞台(273m)
瀞台には数年前まで航空自衛隊のレーダードームが無粋な姿を見せていたのだが、今は無用となり取り払われてすっきりした姿になっている。
瀞台
3週間振りに山の雰囲気を味わればと訪れた長官山。
静寂さと思いがけぬ展望で迎えてくれた。
おまけに超手軽にである。これまで瀞台には何度か訪れているが、長官山は初めて。
こんなに良い山だとは思っても居なかった。
お天気の良い日に気軽に訪れられる、とっておきの山の一つになりそうである。
・見晴るかす石狩平野は雪景色明治の人の描きしままか
・朽株を囲み幹成す桂あり馬追の森は静かに息づく