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漁岳
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登山口である漁川林道の入り口に着くと、一台の車が停まっていて若い方が登山準備中である。
挨拶をすると、彼も漁岳に行くと言う。
出会った人とべったりくっついて行くのは気持ち悪い、かといって一人黙々と歩くのもつまらない。
相前後しながら歩ければ良いなと思いつつ、一足お先に出発する。ラッセルを覚悟して来たが新雪は無く、林道には数日前のものと思われるスキーのトレースがしっかり付いていて有り難く利用させてもらう。
漁川林道は特に見るべきものもなく淡々と歩くほか無い、時折漁岳から空沼岳に続く稜線が見える程度である。
林道から
約1時間の林道歩きの末、やっと尾根への取り付きまでやってきた。
ここで先ほどの若い方(札幌のFTさん)が追いついてきた。
彼に先を譲り後に付く。
ここから漁岳の東尾根の稜線に乗るまで見晴らしの利かない樹林の中、一汗かかされる。彼の後ろを歩きながら見ていると、ルート取りに少し自信がなさそうに見える。
聞くと漁岳は初めてとの事、急斜面の少ないルートをアドバイスしながら稜線を目指す。
FTさんに浅いラッセルをしてもらいながら行けば、歩くスピードは同じ位。何とか付いていける。
そんな訳で、何となく自然にパーティをくんだような形で一緒に歩く事になった。
力強く、心強い連れの出現である。
漁岳東尾根の稜線に飛び出した。
見晴らしの利かない樹林帯を登り詰めこの稜線に飛び出すと、何時もの事だが出迎えてくれる景観に心が躍る。
正面下にオコタンペ湖、稜線の左側には恵庭岳、支笏湖も見渡すことができるのだ。
目指す漁岳はもう少し行かないと全容を見られないが、冬ばれの日射しを一杯に受けた稜線の起伏の陰影、木々の織りなす影が美しい。
稜線上を行く
先頭を交代しながら気持ちの良い稜線を進む。
振り返れば恵庭岳や支笏湖が思いのほかくっきりとその姿を見せて気持ちも弾む。
恵庭岳と支笏湖、左は紋別岳・イチャンコッペ山、右に風不死岳と樽前山
漁岳東尾根の稜線はやや入り組んでいて単調な稜線より面白い、ルート取りの善し悪しによって辛苦の程度も違ってくる。
顕著なC1178mPの左を巻くと正面に漁岳の真っ白い大斜面が現れる。
その見た目の大きさにFTさん、「まだ1時間半位掛かりますか?」
「いやいや、精々30〜40分位ですよ。見た目には遠く見えるでしょう?」
漁岳
大斜面に取り付き下から約1/3位の所で、少し早めだが余裕を持ってアイゼンの履き替える。
斜面の所々に面白い風紋が出来ていて、自然の不思議と言うか面白さを感じさせられた。
一直線に延びた風紋
登るに従って斜度は急になり、雪も次第に堅くなる。
山頂直下などはアイゼンの前爪を利用したくなる程だ。
幸い風も弱く、立っているのに不安は感じないが、風が強かったらピッケル無しでは居られない漁岳の大斜面である。
大斜面を登るFTさん
山頂直下の急斜面を右から巻き気味に登り切れば、山頂はもう一歩である。
数年振りの漁岳山頂。
素晴らしいお天気の下、変わらない姿で漁岳からの大景観は私を待っていてくれた。清々しく、まさに心洗われる一時。言葉も無く只只見入ってしまう。
漁岳山頂からの景観。右下にオコタンペ湖。
支笏湖の周りを恵庭岳・風不死岳・樽前山、紋別岳・イチャンコッペ山が取り囲む
山頂に立つと弱く感じられた風が結構強く、冷たい。
パーカーを羽織り、熱いコーヒーで体を温める。支笏湖の広がりが大きくたおやかだ。
たおやかに広がる支笏湖
FTさんと山座同定を楽しむ。
初めてのFTさん、興奮気味に色々尋ねてくる。
感動した様子が新鮮で私も嬉しい。
紋別岳とイチャンコッペ山(左)
紋別岳・イチャンコッペ山、小漁山、フレ岳、丹鳴岳などなど、私が歩いた時の事も含めてお話しした。
小漁山への稜線とオコタンペ湖へ降りる急な尾根、グルリと廻ってオコタンペ湖を恐る恐る渡った時の事が思い出される。
小漁山と丹鳴岳(左)、遠くはホロホロ山
徳舜瞥山やホロホロ山は見えているがそれより遠い所は雲が架かっている、羊蹄山も雲に隠れ気味だ。
無意根山や札幌近郊の山々も雲が架かっていて残念だが、漁岳は支笏湖とそれを取り巻く山々の景観が堪能出来れば十分だ。
大景観に酔う
30分も山頂に居ると寒くなってきた。
漁岳の大斜面を尻滑りを楽しみながら滑り降りる。
あっという間に降りてしまう感じである。スノーシューに履き替え、東尾根をオコタンペ山へと辿る。
C880m付近で登りのトレースから離れ、概ね稜線に忠実に歩く。
正面に恵庭岳、右にオコタンペ湖を眺めながらの気持ちの良い稜線歩きである。
おまけに余り人が歩かない所で、トレースはおろかテープなど人工のもの、人の気配を感じさせるものは皆無である。
静まり返った空気の中に自分たちの息づかいだけが響いている。C920mPからはオコタンペ山の丸く可愛い姿を見ることができる。
オコタンペ山(左)と恵庭岳
一旦コルまで降りて登り返せば約30分でオコタンペ山山頂である。
一年振りのオコタンペ山山頂。
ここからの見物は、何と言っても周囲を圧倒してそびえ立つ恵庭岳の勇姿である。
午後の日ざしを受けて山頂部の岩峰がキラメイている。
オコタンペ山山頂にて
下山は北東尾根を下る事に、午前中に訪れた人が居るらしく新しいトレースが付いている。
有り難く使わせてもらいながら、飛ぶように下る。午後の日ざしで陰影の付いたオコタンペ山の東斜面の姿もなかなかのものだ。
オコタンペ山の山頂部
疲れが出始めた体に檄を入れて走り降りれば、登山口は間もなくであった。
2004.4の漁岳 |