多峰古峰山から見る支笏湖と恵庭岳・紋別岳
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多峰古峰山
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凍って滑りそうな道路に緊張を強いられながら、多峰古峰山の登山口である国道453号線のシシャモナイ橋に着くと自分で除雪をしなければ車を止められない状況である。
500mほど先に行くと、路肩が奇麗に除雪されていたのでそこに車を停めた。カミさんが慎重にスノーシューを調整しながら履いている。
新しいスノーシューの使い初め、今までのものが古くなりベルトがすり切れそうになってきたので、お誕生日プレゼントとして買い求めたMSRの真っ赤な一品である。多峰古峰山への登山ルートは、シシャモナイ橋から445mPの麓をグルリと東から南へ巻いて、小沢沿いに多峰古峰山とのコルへ上がりそこから稜線を登るのが一般的である。
ところがカミさん曰く「ここから登っても行けるでしょう?」
「ウン、行けるけど結構急斜面でキツいよ」
「大丈夫そうじゃない? 行ってみましょう!」そう言われては行くしかない、新しいスノーシューの性能C'Kと思えば丁度良いか。
下に見える国道から直接斜面に取り付いた
国道の路肩から直接445mPの山肌に取り付く、3月に入ったので堅雪を期待していたのだが雪は柔らかく膝上〜太腿の深雪だ。
おまけに湿り雪で重い、思いもしなかった深雪ラッセル。直登するのは厳しすぎる。
ジグを切りつつ斜度の少し緩い南西方向を目指しながらゆっくり登っていく、真下から通り過ぎる車の音が驚く程近い。斜度のキツい所では50cm程下の弱層から剥離するように表層の雪がずり落ち余計歩きにくい。
カミさん悲鳴を上げているが、自分でこのルートを登ろうと言った手前、文句も言わず頑張っている。
急斜面をずり落ちないように
やはり多峰古峰山へは445mPを巻くのが正解だなと思いつつ、ひたすら深雪と急斜面に挑む。
コルへ効率的に出ようとトラバース気味に登るが、より急な斜面に阻まれ結局445mPの少し南西の地点で稜線に出た。
たまらず休憩、キツかったな〜!
445mPから緩やかに下りながら多峰古峰山とのコルへ向かう。
広く気持ちよい稜線、積雪も少し浅くなって気分も軽やかだ。
コルへ、左前方が多峰古峰山
この稜線からは木々越しに右手には支笏湖と恵庭岳、左手には風不死岳と樽前山が望まれるが、枝がうるさく煩わしい。
ここから先はさして辛い所もなかった筈とおしゃべりを楽しみながら稜線を忠実に辿る。
稜線を辿る、後ろは風不死岳
木々は岳樺が主体だがエゾマツやミズナラなどの巨木も多い。
直径1m以上の巨木も珍しくなく、樹齢は一体何年位なのだろう?一カ所、支笏湖と恵庭岳が良く見える所があり撮影タイム。
恵庭岳
稜線をしばらく辿ると平坦な地形となり多峰古峰山へ山肌へと続いている。
北斜面はとてつもない急斜面となるので、北西斜面に取り付くべく巻き気味に進路を取る。
いよいよ多峰古峰山への登りだ。
前回は堅雪で簡単に登れた記憶があるが、今回は深雪ラッセルで一汗かかされそう。
その前に休憩、エネルギーを補給し英気を養い気力を増す。
ちょっぴり英気を・・
覚悟を決めて山頂目指して登り始める。
見た目には大した事ないのだが、結構な登りだ。
やはり膝上までのラッセルが利いている、まるで錨か何かを引きずっているような感じだ。効率的なルート取りを考えながら登るが倒木や段差があり思うようにならない。
斜面の右手には枝越しに白老三山やホロホロ山が見えだした。山頂直下はさらに傾斜が増して来る。
スノーシューを蹴り込み、足場を決めながらの一歩一歩。
振り返ると、カミさんも黙々と頑張っている。「頑張れ! もう少しだ。」
最後の頑張り
左手は雪庇が張り出し次第に狭くなる稜線、緊張しつつ木に掴まり体をグイと持ち上げると目の前に「多峰古峰山」と書かれた小さな木札がぶら下がっていた。
「着いたよ〜。お疲れさま! 頑張ったね〜」
ゆっくり登ってはきたが、大変なラッセルで汗をかいている。
景色は後回し、まずはパーカーを羽織り体温が下がるのを防ぐ。
スノーシューで雪面を踏み固め、腰を下ろせる場所を作る。風が無いのが有り難い。多峰古峰山の山頂は東西に100m程、切り立った崖上に開けている。
北側は切れ落ち、雪庇が怖い。
ウサギの足跡に誘われるように開けた所へ行ってみる。東から北西にかけての支笏湖とそれを取り囲む山々がすっきりした姿を見せている。
まさに「お久しぶり〜!」の景観なのである。
風不死岳(左)と樽前山
支笏湖を挟んで紋別岳が屏風のように立ちはだかっている。
いつ見ても惚れ惚れする美しい景観だ。
紋別岳
惜しむらくも、やや全体が霞んでいるのが少し残念だ。
恵庭岳がここの盟主は自分だとでも言うかのごとく、存在感を見せつけている。
恵庭岳
そして恵庭岳の西側には小漁山、フレ岳、丹鳴岳が目立たない姿を控えめに見せている。
左から丹鳴岳、フレ岳、小漁山、漁岳、オコタンペ山、恵庭岳
素晴らしい景色だ。これだから辛くても山はやめられない。
山々を眺めながら時々の思い出話に花が咲く。
樽前山
バナナと菓子パン、コーヒーと伊予かんの簡単な食事と摂り、景観を楽しみながらのんびりゆったり時間を過ごす。
だんだん曇ってきて白老三山やホロホロ山方面は霞んでしまった。カミさんが「丹鳴岳とフレ岳から支笏湖を見てみたいわ」とつぶやく。
あそこは林道歩きが長くて精神的に辛いけれど、近いうちに行ってみようか。
少し寒くなってきた。
そろそろ降りようかと思い始めた頃、鈴の音がしたような気がした。
気のせいかと思っていたら、やがて連続的な鈴の音が聞こえ、しばらくすると単独の男性がやって来た。
山で出会った久しぶりの人、最近は人と出会う事もなかった。挨拶を交わすと、なんと知り合いのHYさん。
ちゃっかりお願いしてシャッターを押して頂いた。
山頂にて
そして下山。
深雪でも下りは楽だ。
尻滑りボードを使い、歓声を上げながら滑り降りる。宇宙遊泳はこんな感じだろうか。
途中で三人の女性とすれ違いトレースのお礼を言われる。「どういたしまして、おたがい様ですよ〜」
それにしても、多峰古峰山で四人もの人とお会いするなんて・・・メジャーな山になったものだ。戻ったコルには、出会った四人の方のトレースが合流していた。
私たちはそのまま445mPへ戻り、北斜面を降りる。
でも、ここは斜度は十分すぎる程あるのに雪が重くて余り滑らず、足を取られつつ転がり下りた。国道に降り笑いながら転げて雪まみれの雪を払い落とす、通りかかりの車のドライバー達の注目を集めてしまったようだった。
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