丹鳴岳からの支笏湖と取り巻く山々
|
丹鳴岳・フレ岳
|
国道276号線を支笏湖から走って美笛の滝入り口の手前に大きな駐車帯が設けられている。
ここに車を停めてすぐ脇の美笛林道を歩き出す。
2時間半近く林道を歩かねばならないのは承知の上だから、ここは焦らず慌てず着実に足を運ぶ。
脇を流れるモンルン美笛川は雪解け水を集めて豊かに滔々と流れ、雪の中からフキノトウの浅葱色が顔をのぞかせ、春の気配が漂いだしている。
モンルン美笛川に沿って歩く
1時間歩くと雪に埋もれている鉱山跡までやって来た、先は長いと一休み。
ここから林道は山肌に沿って曲がりくねりながら緩やかに登りだす。
林道には古いトレースがうっすら何本も付いていた。
雪は結構締っていて、つぼ足で大丈夫。スノーシューはザックにくくり付けたままだ。歩き出して2時間と少しで林道の終点、ここから丹鳴岳の西側、C860mコルへ向かう。
丹鳴岳へは距離は長いけれど斜度は緩いまま。
大きな風格さえ感じられる岳樺の巨木の大斜面の中を淡々と登って行く。
巨木の神々しさに魅入られる
C860mコルから丹鳴岳へ緩やかな尾根を歩く。
振り返ると広い斜面の向こう側に、羊蹄山と尻別山が親子のように並びルスツスキー場と竹山がこちらは兄弟のように立ち並んでいる。
振り返る斜面の向こうに羊蹄山などの山々の姿
正面の雪原から恵庭岳や風不死岳の頭が見え始め、徐々にその姿が大きくなって来た。
丹鳴岳山頂である。「すご〜い!」カミさんが歓声を上げている。
彼女にとって、初めて見る丹鳴岳からの大景観なのである。
丹鳴岳山頂からの支笏湖全景と恵庭岳、紋別岳、風不死岳などの大景観「支笏湖がこんな風に見えるのね〜!」
「新鮮だろ〜?」
「いつもの支笏湖より男性的かしら? 恵庭岳の滑降コースの跡もあんなにハッキリ・・・」
丹鳴岳からの恵庭岳と紋別岳(右)
見慣れた風不死岳や樽前山も見る方向が違えば、新鮮な感動を呼び起こす。
風不死岳(左)と樽前山
時折吹く風は春とはいえ冷たい。
パーカーを着込んで、お腹を満たす。
ささやかな食事でも、山では至ってごちそうだ。
デザートのグレープフツーツがお腹に染み渡る。美味しい。
食事にしましょう!
赤テープが付けられた岳樺の幹に「丹鳴山」の標識。
丹鳴岳と丹鳴山、どちらが正しい呼び名なのだろう?
国土地理院の地図では丹鳴岳だが、千歳山岳会が取り付けた標識は丹鳴山だ。北側の漁岳や小漁山もすっきりした姿を見せている。
漁岳(右)から小漁山の稜線
満足感一杯のゆったりした時間が過ぎて行く。
熱いコーヒーが旨い。
丹鳴岳山頂にて
先日登った白老岳と南白老岳、そしてその向こうに徳舜瞥山とホロホロ山が重畳たる山並みを形作っている。
徳舜瞥山(右)とホロホロ山(中央)、手前に白老三山
まだまだゆっくりしたい気分だが、フレ岳に寄るとなるとそうのんびりしている訳にはいかない。
丹鳴岳の急な北斜面を適当に駆け下りて、フレ岳を目指す。
フレ岳
木々の途切れたフレ岳の広い斜面を景色を楽しみつつ淡々と高度を上げる。
南風が背中から後押しをしてくれる。
恵庭岳を横目にフレ岳へ
丹鳴岳から1時間でフレ岳山頂に到着だ。
丹鳴岳ではそうでも無かったのに、南風が強く吹き付けるようになった。
丹鳴岳からわずかな距離なのに、風景はだいぶ違って見える。
フレ岳からの支笏湖
漁岳が大きく近く見える。
フレ岳の東にある沼は白く凍り付いてままだ。その斜面に出ている雪庇が凄まじい表情をしている。
フレ岳からの漁岳
風が強く、おちおちしていられない。
カミさんは帽子が飛ばされないようストールで頬被り、見えも外聞もない風の強さだ。
北西に無意根岳三山や余市岳が端正な姿で横たわっている。
まだまだ雪深い真っ白な姿である。
無意根岳(中央)や余市岳(右)
写真を撮ったら、風に無い所まで逃げ降りる。
先ほどまで居た丹鳴岳めがけて一目散だ。
東側がすっぱり切れ落ちた丹鳴岳、何かに削り取られたような感じ。
地質学者でなくても興味をそそられる地形では無いだろうか?
丹鳴岳
風の避けられる窪地で一休み、そこからは見納めとなる支笏湖や恵庭岳、風不死岳・樽前山が美しい景観を再び見せてくれていた。
美しく見飽きる事の無い支笏湖の景観
帰りは丹鳴岳を巻いてC860mコルへ戻る。
旨くコース取りをすれば登り返しは無い筈なのだが、薄いトレースを信じて行くとずいぶん下っている。
案の定、最後はしっかりと登り返しが待っていた。
信じた自分が悪いのは分かっているが、おもわず悪態をつきたくなるコース取りのトレースであった。さて丹鳴岳・フレ岳登山の喜びの後に待っているのは、長い林道歩きである。
覚悟の上と言いながら、この長さは正直嫌になる。
だんだん足腰が重く、言う事を聞かなくなりだす。
おまけに雪が緩みだし、足を取られる。
下りに入ってスノーシューを履いた。疲れで二人とも何でもない所でスノーシューを自分で踏み、二回も転んだ。
疲労困憊、ヨレヨレ状態で車に辿り着いた時には、2時間半近くが掛かっていた。気持ちを奮い立たせ疲れた体を温泉で癒すのを楽しみに、支笏湖休暇村に向かう。
それなのに休暇村で待っていたのは「日帰り入浴は午後4時までです。」と言う冷たい一言。
「ア〜ア!」
総行動時間8時間半の丹鳴岳・フレ岳山行であった。
ぐったり疲れ、体中がガタピシ音を立てている。
年をとって今回以降、もう訪れる事は出来ないかも知れない。気力を振り絞って訪れて本当に良かった。
それだけ素晴らしい大景観であった、素晴らしい山行であった。夜には、二人して喜びと感動に浸りながら、焼き肉に舌鼓を打った。
|
2005.4の丹鳴岳・フレ岳へ |