アポイ岳 (811m) 吉田岳 (825m)

日高  2010.5.30(日)  晴れ

 

日高
アポイ岳馬の背からの南部日高主稜線の山々


 

2010.5.30(日)
登山口 0505
5合目 0555〜0600
馬の背 0635
アポイ岳山頂 0700〜0705
吉田岳山頂 0750〜0815
アポイ岳 0900
幌満花畑 0920〜0930
馬の背 0945
登山口 1045

アポイ岳

アポイ岳は言わずと知れた「花の名山」。全国的にその名を馳せている。
その多様な植生と固有種の多さは、山がカンラン岩という特殊な石で成り立っているからだそうで、同じく花の名山である夕張岳と同様である。
ヒダカソウなどの固有種も多く、アポイアズマギク・アポイタチツボスミレ・アポイマンテマなどその名を付けられた花も多い。

それらの植生・花を保護する為に多大な努力と経費がつぎ込まれ、登山道の整備、生育地の保護育成、盗掘や踏み込み防止の措置などが着実にきめ細かくとられている。
しかしながら、山が整備され多くの人が楽しめるようになると、ますます多くの人達が訪れ、いきおい登山道は痛み、植生も傷つけられる。

「自然の保全と活用」、言うは易く行うは難しである。
ともあれ、私たち登山者に出来る事は花の名山を痛めつけないよう立ち入り制限地域には立ち入らず、自然を大切にする気持ちを持つ事が何より必要な事だと認識して、行動したいものである。

今回は花を見ながらアポイ岳から吉田岳へ行き、帰りは幌満お花畑を経由して登山口へ戻るルートを歩く予定である。

 

プロローグ

前日ピセナイ山に登ったその足で、様似町にあるアポイ山麓自然公園にやって来た。
ここはキャンプ場、公園、登山者用駐車場などがあり、アポイ山荘という立派な宿泊施設もある。
宿泊者でなくてもお風呂やレストランを利用出来、快適に過ごすことができるありがたい施設である。

前夜はここで1泊、ピセナイ山の疲れもありぐっすり眠って、朝4時頃起きると薄明るくなった空に満月が静かに浮かんでいた。
今日は間違いなく、晴天そのもの、ただただ嬉しい。

満月

 

静けさの中

花の写真を撮るには早朝の光線は暗すぎて相応しくないと思いつつ、込み合う時間帯は避けたいので、0500には登山口を歩き出した。
空は明るくなっているが樹林の下まで光りは差し込まず、薄暗い中で花達はまだ眠っているかのようである。

小さな流れを何本も横切りつつ、広く整備された道を気持ちよく進む。
薄暗い中にオオサクソウのピンク色が控えめに点々と続いている。
多くは旬を過ぎようとしていて花びらが痛み加減なものが多いのが残念だ。

3合目を過ぎるあたりから、ようやく朝の日射しが地上にも降り注ぎ、写真を撮れるようになってきた。
タチツボスミレの紫が周囲から浮き上がって来るようだ。

スミレアポイタチツボスミレ

エゾオオサクラソウも日射しを受けて輝いている。
薄暗い中での花とは一味も二味も違う、あでやかな姿である。

エゾオオサクラソウ桜草

 

爽快!

5合目の休憩小屋に着く。
丁度森林限界になっていて、これから歩く稜線とアポイ岳山頂が見渡せる。
アポイ岳山頂から朝日が顔を出し、まばゆい朝の光を一杯に受けての爽快な歩きである。

ここから花の名山の真骨頂、次々に花が咲き乱れていたのを思い出し、目をあちこちに配りながら足を勧める。
アポイアズマギク、アポイタチツボスミレが早速目に入る。

アヅマギクアポイアズマギク

記憶より花が少ないのが気にかかる、まだ時期が早いせいなのだろうか? それとも今年の花付きのせいなのだろうか?
それでも石を背景に咲く花は清楚で可憐、ついつい足が止まり魅入ってしまう。

アツマギク
群れ咲く、アポイアズマギク

この辺りから見たい花の一つ、ヒダカソウが咲いていないか注意しながら歩く。
保護され立ち入り禁止のロープが張られている場所へ入って行く薄い踏み跡が幾つかある。
その奥にヒダカソウはひっそりと咲いているのか?
見たいけれど見れない、貴重なものを保護する以上仕方の無い事だ。
結局、見つける事は叶わなかった。

 

荒々しさ

やがて馬の背と呼ばれる稜線上の小さな岩稜に出る。
北方遠くに日高の山並みが見渡せる良い展望の地であるが、いかんせん距離が遠く迫力は余り感じられない。
それでも南の広尾岳から楽古岳、トヨニ岳、ピリカヌプリ、ソエマツ、神威岳、遥か北には1839峰までズラリと並んだ日高の主稜線の山々、壮大な姿にじっと見入ってしまう。
昨日のピセナイ山がこんなお天気だったら、どんなに感動した事だろう。残念な思いがぶり返す。

日高主稜線
右からとトヨニ岳、ピリカヌプリ(中央右)、ソエマツ(中央左)、神威岳(左)

ここから道は緑色をしたカンラン岩の稜線歩き、北側は荒々しく切れ落ち、小さな山なのに厳しさと迫力が感じられる。
サマニユキワリソウが小さくも可愛い花を岩陰に咲かせている。
花の笑顔にこちらも思わず優しい気持ちになれる。

サマニユキワリソウユキワリソウ

だが、圧倒的に花の数が少ない。
サマニユキワリソウの他にはエゾキスミレ、それとアポイマンテマとミヤマオダマキの蕾を幾つか見た位である。
今年は花の少ない年なのか?
それだったら良いのだが、花自体が少なくなっているとすれば大事である。
そんな心配をする程、花の数と量が少ない今年のアポイ岳であった。

エゾキスミレエゾキスミレ

 

見蕩れる

岩の稜線から再び樹林帯に入って一登りした所にアポイ岳の山頂はある。
小さなお社の建つ山頂は岳樺に覆われ見通しは利かない。
お参りしてそのまま吉田岳へと稜線を下りる。

アポイ岳山頂山頂

吉田岳へは一旦下って緩やかに登り返すように稜線を辿る。
吉田岳やピンネシリそして日高の山々を見ながらの気持ちの良い稜線歩きだ、ただここも花が少ない。
以前歩いた時は、花・花・花のイメージだったのに・・・。

ピンネシリ
吉田岳(手前)とピンネシリ、右奥遠くは楽古岳

稜線の左手には様似から浦河にかけての海岸線が見えている。
太平洋の青い海と丸く見える水平線が茫洋と霞み、気持ちまで大きくなった気分。

海岸線
様似から浦河に続く海岸線

吉田岳に着いた。
続く稜線と3つのピークを持つピンネシリが堂々とした姿で出迎えてくれた。
あそこの頂を踏んだのは、確か11月の事だったな〜。

ピンネシリ
ピンネシリと日高主稜線の山々

ザックを降ろし、温かいココアを飲みながら一休み。
昨日見られなかった日高の主稜線の山々へ目が惹き付けられる。
遥かに続く山々に見蕩れてしまう、やはり日高の山々は良いな〜。
夏にはこれらの山々の幾つ位を訪れることができるだろうか、楽しみである。

 

幌満へ

吉田岳からはアポイ岳に戻り、幌満御花畑を経由して下山の予定だ。
アポイ岳へ続く稜線には少ないながらもサマニユキワリソウ、ヒダカイワザクラ、エゾキスミレなどが咲いていた。

ヒダカイワザクラ
ヒダカイワザクラ

ヒダカイワザクラとサマニユキワリソウは葉で区別している。
ヒダカイワザクラのはモミジのように円形の葉に7つ程の切れ込みが入っている、サマニユキワリソウは細長い卵形と言うか、しゃもじ型をしているのだ。
それに花自体もヒダカイワザクラのほうが直径2〜2.5cmと大きい。

エゾキスミレエゾキスミレ

アポイ岳山頂直下から見たアポイ岳は思ったより急峻な姿をしていて驚く。なかなか立派で見直す。

アポイ岳
急峻な姿を見せるアポイ岳山頂部

戻ったアポイ岳山頂から表示に従い幌満お花畑に立ち寄る。
かなり急な下りを20分も歩けば、幌満お花畑だ。
でも、ここも期待したようには花がない。
もしかしてと思っていたヒダカソウも見る事は出来なかった。

残念な思いで馬の背に合流するトラバース道を歩いていたら、淡い色使いのタテヤマリンドウがひっそりと花をつけていた。

タテヤマリンドウタテヤマリンドウ

 

現実

馬の背に着いたのは、10時前。
丁度良い時間帯なのか、続々と列をなして登山者の人達が登って来ていた。
切れ目無く、日頃人に会わない山ばかり歩いている私には、よくもこんなに大勢の方がと思う程の人数である。

幅広く整備された登山道もすれ違うのも大変な程の混みようである。
グループの方、家族の方、アベックの方、急ぎ足の方、花に見入っている方、写真に熱中している方、おしゃべりに夢中な方、それぞれ思い思いに楽しんでおられる。
そんな中、立派な三脚を幾つも登山道に並べて場所を我が物顔で占拠し、シャッターチャンスをひたすら待っているカメラマンが数人いたのは残念であったし、通り過ぎる人達からヒンシュクを買っていた。

一方、アポイ岳自然を守る団体のメンバーが痛んだ登山道の補修作業を黙々とされていた。
金網に石を入れ、階段状に積み上げ補修している。
その横を何も言わず、挨拶もせず、邪魔そうな顔で、当然のように歩き去る人。

理想と現実、自然の保全と利用、相反する欲求をどう整合させるのか、現実は大変難しい。

立ち戻った登山口には多くのマイカーとともに何台もの観光バスが停まって、観光客のお帰りを待っていた。

 


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