七つ沼の湖面に写る幌尻岳の肩とカール壁
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赤く染まりだした日の出前の空
今日は何か良い事があるような気がする。そんな気持ちにさせる朝焼けの空だ。
しばらくして朝日が顔をのぞかせた。余りの荘厳さに自然に頭を下げ手を合わせる自分がいる。
ピパイロ岳の横から昇る朝日
北戸蔦別岳を5時前に出発、戸蔦別岳を経由して七つ沼へ降りていく。
戸蔦別岳までは一度下がってから登り返していくが、そんなにキツい登りではなく花を楽しみながらルンルン気分の稜線歩きである。幌尻岳の姿がだんだんと大きく、北カールが一段と雄大、カールから落ちる沢水が白く光って見えている。
1881mPで幌尻山荘へ真っ直ぐに落ちる道を分けると、いよいよ戸蔦別岳への登りである。
戸蔦別岳への登り
七つ沼は戸蔦別岳山頂で初めて目にすることができる。
狭い山頂から覗き込むように下を見れば、七つ沼の三つほどが雪から顔を出しているのが見え、その他はまだ雪に覆われている。
そしてカール壁、それから続く幌尻岳の肩、そして山頂。
何時見ても惚れ惚れする景観である。初めて見るNGさん、その美しさに見入っているようだ。
七つ沼のカールと幌尻岳
山頂から目を北に転じれば、昨日楽しみ歩いた北戸蔦別岳〜1967m峰〜ピパイロ岳の稜線が一目である。
左から北戸蔦別岳、中央の尖りが1967m峰、右にピパイロ岳
昨日の楽しかった思いがよみがえる。
戸蔦別岳から見ると1967m峰が一段と凛々しい姿をしていて惹かれる思いがする。
良い山は何度登っても良いものなのだ。
1967m峰
戸蔦別岳での休憩もそこそこに七つ沼めがけて降りてゆく。
降り口に近づくと、道は出ておらず急な雪渓を降りなくてはならない。
これは慎重に行かないと危ないぞと気持ちを入れ直す。
俯瞰した七つ沼
まずは雪の溶けているカール壁の草付きを降り、急な雪渓をNGさんの為に大きめのステップを切りつつ下る。
途中でNGさんの様子を確認すべく上を見上げたとき、足を滑らせ自分が滑落してしまった。
ストックしか持っていないので、腹這いになり足先を雪面に蹴り込んだら10mぐらい滑って止まった。
ああ、危なかった。人の事よりまず自分だと苦笑いである。
滑った所からの七つ沼
無事、七つ沼カールの底に出た。
鮮烈な水が豊富に流れ、喉を潤しながら素晴らしい景観に酔う。湖面は静かに佇み、水あくまで清く、生命感の感じられない無機質の美しさと言えば良いのだろうか。
シ〜ンと静まり返った七つ沼
湖面に写った逆さ幌尻岳(実際は肩だが)を初めて目にする事も出来た。
もっと広角レンズが欲しいと切実に思った。
湖面ではなく、雪面を前景にすると又表情が違って見え面白いものだ。
残雪のスプーンカット模様が視覚に変化をもたらすのだろうか。
存分に雪の残る七つ沼を堪能し、カール壁を登り返す。
雪も適当に柔らかく、下りより時間的に早く登り切ることができた。
北戸蔦別岳へ引き返しながら、稜線上の花達にご挨拶。
ナンブイヌナズナの鮮やかな黄色が一段と眼を惹く。
ナンブイヌナズサ
チングルマやミヤマシオガマ、ミヤマダイコンソウ、ミヤマオダマキ、ミヤマキンバイなど昨日も見た花達だが、風景が変わると表情も変わって見え飽きる事は無い。
ミヤマキンレイカ
アズマギクも淡いピンクの花を付け、一段と清楚に見える。
アズマギク
そしてチシマアマナだと思うのだけど、白一色ではなく淡い紫の筋が入った花びらのものもあり珍しいと思った。もしかしたら別種かも知れないが・・・。
チシマアマナ
いよいよ楽しかった3日間の山旅も終わり。
後は慎重に怪我の無いよう無事下山するばかりだ。ヌカビラ岳の岩場ではもう一度カムイコザクラを見たいと思ったが、3日間の間に花は落ち見る影も無かった。
私たちに見てもらいたくて咲いていてくれたのかと思うと、いとおしい気持ちになった。慎重に降りたい場所、ヌカビラ岳直下の雪渓を降りる。
振り返るとチョッピリへっぴり腰の人がいたけれど、人の事より自分だと降りる。
ちょっと恐そうな人も・・・
雪渓を過ぎれば急な尾根を下るだけ、トッタの泉で昼食をとり、二の沢に出て往路を北電取水ダムへと戻ってきた。
途中、ハナシノブの撮影を中断した場所で再度撮影。
この時は光線の具合も良く、NGさんも満足した撮影が出来たようだった。
NGさん撮影のヒダカハナシノブ
NGさんに対する四国歩き遍路のお礼の意味も含めて計画した今回の山行。
NGさんにとって初めての日高、そして切実に望んでいた花との出合い、いずれも叶えることが出来、なによりNGさんに喜んで頂け、嬉しそうな顔を見て、計画し案内した私たちも満足だ。お天気の恵まれた事も楽しさを倍増してくれたように思う。
これもNGさんの普段の行いのせいなのかも知れない。
いずれにしても、記憶に残る良い山旅になったのではなかろうか。