ウペペサンケ山 (1848m)

東大雪  2010.7.13(火)  晴れ


 

ウペペサンケ山

 

2010.7.13(火)
登山口 0510
C1399mP 0625
C1610mP 0715
糠平富士 0840〜50
ウペペサンケ山山頂 0945〜1040
糠平富士 1130〜45
C1610mP 1235
C1399mP 1305
登山口 1350

ウペペサンケ山

ウペペサンケ、何とも妙に語呂の悪い言葉である。
最初に耳にした時は、ウペペ山系と言う名の山塊があるのかと思ったぐらいだ。
アイヌ語の意味は「雪融け水を押し流す」で、どっしりとした台形の山容は確かに大量の雪を溜め込み豊かな水を里に流して潤すに違いない。

近くのニペソツ山や石狩岳の様な華やかさは無いけれど眺めも花も素晴らしく、静かな奥深い山歩きが堪能出来る山である。

言葉は慣れてしまえばそれが当たり前となり、最初は変だと思った「ウペペサンケ」も、今は静かで味わい深い山として馴染んでしまった。

 

プロローグ

東大雪の山々は糠平温泉を起点として楽しむ事が多い。
ニペソツにしろ石狩岳にしろ、その余りの素晴らしさに登山後温泉に入って疲れをとれば、それだけで十分満足、心はしっかり満たされてしまう。
もう一山と欲張って足を伸ばす事も無く帰路についてしまい、ウペペサンケ山や通称おっぱい山と呼ばれる西クマネシリ岳・ピリベツ岳は、何時かと思うだけで訪れる事も無かった。

この6月にニペソツをツクモグサ狙いで訪れた時、ウペペサンケ山の雪をまとった大きな山容を眺め、今度こそとウペペサンケ山とおっぱい山をターゲットに訪れた。

椎間板ヘルニアの手術を受け退院したばかりのカミさんへ、留守中決して無理をしないよう念押しして家を出る。
幸い、この病の名医として名高い医師による手術を受け、手術そのものは成功したようなのだが、2ヶ月ほどは負荷をかけず半安静状態を保つ事が必要なのだ。
必然的に掃除洗濯や草取りなど家事全般は私の守備範囲をなった、ちょっと面倒くさい時もあるけれど、しっかり直しまた二人で山歩きを楽しむための投資である。
ここで無理をして元の木阿弥になっては元も子もない、何もしないで寝ていて欲しい位なのだ。

このところ本州の梅雨がやって来たかのようなぐずついたお天気が続き、心にもカビが生えそうな日が続いている。
昨日から降り続いていた雨も夕方には止み、糠平温泉で車中泊。
夜中には星が瞬き、弾む気持ちを抑えながら夜明けを待った。

 

鬱蒼!

糠平温泉から幌加方向へ走るとすぐにウペペサンケ山登山口の標識があり、左の林道へ入っていく。
途中にある林道分岐を左へ、約10kmで登山口に着く。

登山口登山口

歩き始めて5分ほどで小沢を渡り、さらに10分位で湧き水が出ている所を通る。
このところの雨で道は川状態、水を吸った土は滑り易い。
周囲は深い樹林帯で見通しは全く利かない、風も通らずひたすら稜線目指して黙々と頑張るのみである。

倒木が何本もあり足の長さが自慢の私はもっぱら潜り専門だが、跨がなくてはならない時は思わず母を恨んでしまう。
道は明瞭なのだが、笹がかぶさり気味になって見えにくくなっている所も多い。

 

ブシュ〜 !!

今の時期だけかも知れないが、この山は蚊がものすごい。
歩いていてもそれこそ雲霞の如くまとわりついてくる。止まれば言うに及ばずである。
「プイ〜ン!」という羽音も煩いが、目と言わず耳や鼻、口にも飛び込んでくる。
眼鏡の内側に飛び込んで来て、ウロウロされるのには我慢が出来ない。

堪らずザックを降ろし虫除けスプレーを「ブシュ〜! ブシュ・ブシュ・ブシュ〜〜!」
しみ込んだ汗を狙っているのか、ザックが黒くなるほど集っている。ここにも「ブシュ〜!」
ウペペサンケ山は山頂稜線を除き、本当に蚊が多い。
虫除け対策はしっかり致しましょう。

 

長大!

結構な傾斜の見通しの無い道を耐えること約1時間、1399mのピークに出た。
一気に見晴らしが広がり吹き通る風に、ほてった身体が気持ち良い。

雲海
下に糠平湖、朝の雲海が広がる1399mPからの光景

ここからは正面にC1610mPが立ちふさがるようにそびえ立ち、まだウペペサンケ山の姿を見る事は出来ない。蚊に悩まされつつ目前のピークへの登りに掛かる。

シャクナゲの木が多く遅い花も咲いている。
オオタカネイバラのピンクが目立つが旬は過ぎているようだ。

オオタカネイバラタカネイバラ

C1610mPからやっと目指すウペペサンケ山の全容が見渡せる。
糠平富士までの延々と続く稜線、長い山頂稜線が圧倒的な存在感を見せつけている。

ウペペサンケ山
C1610mPから糠平富士(右)とウペペサンケ山山頂(中央)

また振り返れば糠平湖とその周辺の不思議な形の小山が織りなす景観に目を奪われる。
褶曲作用によるものなのか、火山の小噴火によるものか、面白い造形ではある。

糠平湖
糠平湖と不思議な形の小山

 

ウキウキ!

ここから糠平富士までは砂礫の稜線、正面にウペペサンケ山、左手に十勝連峰を眺め、広がる花畑を愛でる、ハイマツと岩の織りなす楽しいプロムナードである。
途中、菅野温泉からの道が合流してくる。

イワブクロイワブクロ

イワブクロが旬を迎えている。虫達が蜜を集めに大わらわだ。

コマクサも多い、残念ながらこちらの方は花の時期を終え見頃の花は少なかった。

コマクサコマクサ

そして今の時期一番奇麗なのは、エゾツツジ。
鮮やかな濃いピンク色で斜面を染めている。

エゾツツジ
点々と斜面を染めるエゾツツジ

 

エゾツツジエゾツツジ

 

疲れなんか・・・!

1835mの糠平富士、北側の眺望が一気に開け、すでに山頂に立った気分である。
何と言ってもニペソツの凛々しい姿に感嘆の声。
自然が作り出した造形、神様が依怙贔屓してお創りになったとしか思えない神々しさだ。

ニペソツ
糠平富士からのニペソツ山、遠くは白雲岳や北鎮岳などの表大雪

見下ろす糠平湖の向こうには、阿寒の山々がそのシルエットを見せているし、知床の山や半島も見えている。
疲れなんか吹き飛んでしまうほどの大景観、凄い! 美しい! ありがとう!

阿寒の山々阿寒

日高の山並みが長々と横たわって、平らな十勝平野との対比が面白い。
光彩のような雲が景観を一層映えるものにしているようだ。

雲
日高の山並みとたなびく雲

 

爽快!

ウペペサンケ山山頂は糠平富士からほぼ平らな山頂稜線を1.5km西に行った所にある。
右手にニペソツの鋭峰、山頂へ続く岩の稜線、正面遠く大雪の山々、左前方に十勝連峰を目に入れながらの爽快な稜線歩き。
否応無く気持ちは高ぶり、熱くなる。

途中のちょっとしたコルには雪渓が残っていて、初夏の花達が咲き競っていた。
ショウジョウバカマ、ハクサンイチゲ、エゾノツガザクラ、チングルマ、ハクサンチドリ、イワヒゲ、イワウメ、ミヤマダイコンソウ、ウコンウツギ、マルバシモツケなどなど。

ショウジョウバカマショウジョウバカマ

 

ツガザクラ
エゾノツガザクラ、ハクサンイチゲなど

青い空、掃いたような白い雲、ハイマツの緑、雪渓の白、そして色とりどりの花々、歩む足取りは軽く快調そのものだ。

稜線
遠くに大雪の山々を眺めながら・・・

約1時間の山頂稜線のお散歩、何とも言えない開放感溢れる稜線と漂う高山の雰囲気、大きな台形の山容を自分の体をもって知る山頂への道のりである。

 

おニュー

1848mのウペペサンケ山山頂に立った。
素晴らしい開放感だ。

ニペソツを始めとする東大雪の山々、西から北にかけて十勝連峰そして表大雪が手に取るように立ち並んでいる。
嬉しくなって手に入れたばかりの、おニューのレンズを取り付けて撮影。
本当はこんな遠景を撮るには余り適さないレンズなのだが使いたくて仕方が無いのだ・・・(笑い)

大雪
左から夕張・芦別岳、十勝連峰、表大雪、ニペソツ、石狩連山

東から南には糠平湖から然別湖が一望でき、遠くには広大な十勝平野が広がっている。

然別湖
左から糠平湖、登ってきた糠平富士・C1610mP、そして然別湖

一段と存在感をアッピールしているのは、トムラウシ。
大雪の中でも図抜けて大きく他の山を圧倒している。

トムラウシトムラウシ

トムラウシから続く十勝連峰も大きく立派だ。
オプタテシケの亀坂の高度差が山の大きさをより際立たせているように見える。

十勝連峰
左から十勝岳、美瑛岳、美瑛富士、石垣山、オプタテシケ

そして極め付きは、やはりニペソツである。
何時、何度見ても見飽きない、絶妙のバランス・鋭さである。

ニペソツ
糠平富士からは見えなかった忠別岳が左に見えている。

時刻はまだ10時である。
少し雲が多くなってきたがお天気が崩れる心配も無い、ウペペサンケ山山頂で思いのまま時を過ごす。
カミさんにTel、感動を伝える。
ゼリーが美味い、コーヒーが感動をより大きくしてくれる。

良い山だな〜! 

 

感動を胸に納めて

帰路も展望と花を楽しみつつ、のんびり歩く。
ウペペサンケ山の予想以上の素晴らしさ・感動を反芻しながらの帰路である。
そんな気持ちで見るせいか、見慣れたチングルマがいつも以上に繊細に美しく見える。
こんな目で世の中を人をいつも見れたら幸せだろうと思うが、なかなかだな〜。

チングルマチングルマ

 

ウズラバハクサンチドリハクサンチドリ

そして早くもコガネギクが咲き始めている。
北国の花は早くも秋を感じ始めているのだろうか?

コガネギクコガネギク

溢れんばかりの感動を胸にC1610mPへ戻ってきた。
ここでウペペサンケ山とは、お別れである。
ありがとう! 一声かけて背を向けた。

後は群がる蚊の大群を蹴散らして、登山口目がけて駆け下りる。
蚊さえ居なかったら、もっと印象の良い山なのに・・・。

 

GPSトラック

GPSトラック
GPS
登山口から10分間のトラックが記録されていなかった

 

 

 

 

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