十勝幌尻岳 (1846m)

日高  2010.10.23(土)  晴れ


 

 十勝幌尻岳
十勝幌尻岳の朝

 

2010.10.23(土)
登山口 0645
C760m二股 0720
C1735m肩 0925
十勝幌尻岳山頂 0945〜1040
C1735m肩 1055
C760m二股 1225
登山口 1250

十勝幌尻岳

帯広市や中札内村から日高山脈を眺めて一番大きく堂々として目立つ山が十勝幌尻岳である。
アイヌの人達がポロ・シリ(大きな山)と呼んだのも素直に頷ける。

夜明けと共に登山口へ向かう車からは朝焼けに浮かぶ十勝幌尻岳が一際雄大な姿を見せ、登山意欲は否応でも高まってくる。

登山口へは道々216号線を南下、戸蔦別川にかかる拓成橋を渡ってすぐを右折して戸蔦別林道へ入り約7kmのオピリネップ林道に左折すればその終点が登山口。
10台位は駐車出来るスペースがあり登山ポストも設置されている。

前回この山を訪れたのは6年前の2003.10のこと。
その時は思いがけぬ雪景色の山々との対面に嬉しさを通り越して神々しささえ感じた十勝幌尻岳だった。
果たして今回はどんな出合いが待っているのかな?

 

せせらぎ

登山口へはこの日の一番乗り、ノートを見ると先週の日曜日以来誰も登っていないようだ。
足許を山靴にしようかスパイク長靴にしようか迷うが、車から見た山の様子では雪はなさそうだ。
準備を整え歩き出す、5分も歩くと上の土場となりそこからはオピリネップの川沿いだ、夏なら沢の中を濡れながら歩きたくなるような奇麗で優しい流れである。
丸木橋を渡って二回徒渉すると、後は沢の左岸を進んでいく。
大量の落ち葉で道が隠され、時折道を失ったのかと戸惑う。

まだほの暗い沢の白い流れ、清らかなせせらぎの水音、降り積もった枯れ葉を踏む音、心安らぐ静かさを味わいながらゆっくり歩む。

沢
苔の緑と沢水の白が秋色に映える

朝日が射し始めると、急に活気づいて見えるのは気のせいだろうか?
やがて沢は二股に分かれ道は右の沢沿いに付けられている。
時折、岩をへつったり乗り越えたりしながらの道もあり、朝露で濡れている岩には要注意である。

沢水
朝日が射し始めると明るく活気づく

 

記憶

二股を過ぎると間もなく尾根への取り付きである。
思ったより気温が高い、ゆっくり歩いて来たので汗はかいていないが暑い位だ。
尾根の取り付きで一休み、シャツを一枚脱いで登りに備える。

大きなジグを切りながら笹の刈り分け道を登っていく。
前回訪れた時は笹が被って酷い道だと感じたが、今年は刈られたのか歩き易い。
記憶と言えば、前回はまだ日高の山を登り始めたばかりの頃で、日高の愚直なばかりの急峻さに訪れる度に音を上げていた。
十勝幌尻岳でも悲鳴を上げ何度も休みながら汗びっしょりになって登った記憶が鮮明に残っている。

ジグを切りながらの笹の刈り分け道はトドマツ林を次いで大きな岳樺の中を直登するようになり、傾斜も増してくる。
それなのに淡々と登る自分が居る、前回は悲鳴を上げ休みまくっていたのに。
日高の山々に少しは慣れて来たのか、この位の登りは当たり前と感じるようになったのか。
記憶なんていい加減なものだと思う。
きっと数年経てば、体力も衰え同じ道でも再びキツく辛く感じるのだろうな。

岳樺の中を岳樺を縫って

 

恋敵

淡々と登っていると、「ヒィ〜〜!」と言う甲高い大きな声がすぐ近くから聞こえ驚く。
カミさんからくれぐれも熊には注意してね!と言われて来たけれど、熊並みに怖い雄鹿のものだ。
雌を呼んでいるのか、それとも私を恋敵だと思ったのか。
ともあれ突進して来られては堪らない、大声を出して雌でも恋敵でもないと知らせる。

耳を澄ますと遠くあちこちから雄の鳴き声が響いている。
恋の季節なのだ。

木々が混んで見通しの利かない尾根、黙々と足を進めるしか無い。
時折、木々の間から東尾根や十勝平野が望めるようになって来た。

東尾根
登る北東尾根から東尾根と十勝平野を望む

 

北尾根

稜線の空が近くなって来た。
空は青く晴れている、日高の主稜線はどんな表情で出迎えてくれるのだろうワクワクする。
道にはうっすら先日降った雪が残り、ザッ、ザッ!と雪を踏む音が心地よい。

稜線に出た、北尾根に乗ったのである。
木々の枝が邪魔をするが、札内岳の姿が目に飛び込んでくる。
前回は真っ白な姿だったが、今回は秋色の茶色である。

山頂へ山頂へ

傾斜の緩んだ北尾根を少し行けば、煩かった林も途切れ山頂へのハイマツの稜線となる。
雪と霜で白くなった岩を慎重に踏み、最後の急斜面を一気に登る。

 

ズラリ!

十勝幌尻岳の山頂、6年振りの山頂である。
山頂標識は無くなっていて、支柱だけがかろうじて立っている。

中日高の山々
札内岳(右)からエサオマン、カムエクへと続く日高主稜線の山並み

主稜線の西、日高側に雲があり幌尻岳とカムエクの山頂を隠しているが残念だが他は皆見えている。
まさにズラリと並んでお出迎え。
この夏、三日間に渡る濃霧と強風で停滞を余儀なくされ、おまけにテントのポールまで折られたC1602mコルも良く見えている。不思議に悔しさは無く逢えて嬉しいと言う感覚である。

山頂から一番目立つのは何と言っても札内岳、均整のとれた鋭い姿が見る者を惹き付ける。

札内岳
均整ととれた美しい札内岳(中央右)、すぐ左横はエサオマン

日高第二の高峰、カムエクは恥ずかしそうに山頂を雲に隠している。
ピラミット峰の姿が凛々しく、八ノ沢カールもしっかりと見えている。

カムエク
頭を隠しているカムエクと凛々しいピラミット峰

少し北に目を転じると、盟主幌尻岳がこれまた山頂部を雲に隠しているが戸蔦別岳が鋭く屹立し、カムエクとピラミット峰を鏡で映したような感じである。

幌尻岳
幌尻岳と戸蔦別岳(右)

さらに北側には、北戸蔦別岳から1967m峰、ピパイロ岳、伏美岳、妙敷岳へと続く稜線、その奥にはチロロ岳の姿も見えている。

1967m峰
1967m峰(中央左)、ピパイロ岳(中央右)、チロロ岳(右奥)

中日高から南はやや煙っていて南日高の山々をハッキリ特定する事は出来なかったが、十勝幌尻岳ならではの大展望である。
心から溢れんばかりの喜び、満ち足りた思い、大満足で日高の山々を眺め癒される。

東側に広がる十勝平野は霞み茫として、かえってその果てしない大きさが想像できるようだ。

十勝平野
十勝平野は霞んでいた

いくら暖かくても2000m近い山頂である。涼しさを通り越して寒さを感じるようになってきた。
パーカーを羽織り、熱いコーヒーで体を温める。
山頂に着いて小1時間になるが、まだ誰もやって来ない。
独り占めの十勝幌尻岳山頂、飽きる事の無い時間がゆっくりと過ぎていく。

山頂にて山頂にて

カムエクと幌尻岳にかかった雲が去ってくれるのをじっと待ったが、その気配は見えない。
仕方なく、今回は諦め下山する事にした。

肩まで降りて最後にもう一度と幌尻岳を見ると、しっかり姿を見せているではないか。
恥ずかしがり屋さん、ありがとう!

幌尻岳
最後に姿を見せてくれた幌尻岳

 

絨毯

急な下り坂を慎重に降りる。
膝を痛めてから私は下りが苦手になった。昨年、左膝の半月板を損傷し手術を受けてからは特に苦手である。
降り方が下手なせいもあるが、衝撃を膝に浮けるのを避けるため、どうしてものろくゆっくりとしか降りられない。
岩から岩へ飛び移りながら降りるなんて、夢のまた夢なのだ。

そんな私にとって秋の大量に落ち葉が降り積もった道と雪道はありがたい存在。
膝への衝撃を緩和してくれる、絨毯のような存在なのだ。
落ち葉の絨毯をカサカサ音を立てながら歩くのも実に気持ち良い。

そんな下り坂を登って来る人達10人ほどとすれ違いながらのんびり降りる。

急な尾根を降りて再びオピリネップ川の沢音を聞きながら戻る。
朝とは違う、明るい沢の風景が心を和ませてくれる。


沢
沢を下って登山口へ

無事登山口へ帰り着き、車で走る戸蔦別林道は所々紅葉の真っ盛り。
思わず車を停めて、眺めてしまうほどだった。

紅葉見事は紅葉

 

GPSトラック

GPSトラック
GPS

 

 

2003.10の十勝幌尻岳へ

 


 

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