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小漁山(1235m)
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最近これまで考えもしなかったような体の不調に遭遇し自分自身戸惑うことがしばしば起こるようになった。
以前から痛めていた腰や膝が痛み出すのは仕方ないとしても、全く覚えが無いのに股関節や肩が痛み出したり、気持ちが萎え意欲が湧かなくなったりするのだ。「歳のせいよ」と言われ、「そういう時はおとなしく静かにして温泉にでも行くのが一番よ」と言われる。
悔しいことに、半信半疑で温泉に行きのんびりしていると痛みも忘れ、消えかかっていた意欲も湧き出してくるのだから不思議なものだ。
これが年をとるということか?
それを黙っておとなしく受け入れようという気持ちと、まだまだ早いという気持ちが入り乱れる。快晴の素晴らしいお天気に誘われ、凍てついたオコタンペ湖を歩いてみようと車を走らせ支笏湖に来ると、湖畔から恵庭岳が朝日を浴びて赤く輝いている。
急に登りたいという気持ちが突き上がって来た。
燃え立つような思いに襲われたのがなんとも心地よく嬉しい。
年輪にも緩やかなところと間隔の詰まった急なところがあるじゃないか、ただ穏やかな平々凡々とした生き方と一味違った人生を追い求めていきたいと改めて強く思った。
モルゲンロートに染まる恵庭岳
オコタン分岐の除雪帯には一台の車もなかった、平日のせいなのだろう。
準備を整え歩き出す。今年の支笏湖周辺は異常と言っても良いような小雪である。
冬期通行止めになっているオコタンペ湖へ通じる道路も例年になく雪が少なく、ツボ足で問題ない。
この土日に訪れた人たちの踏み跡で幅広いトレースは固く締まり歩きやすい。オコタンペ山や恵庭岳への取り付きをC'Kしながら淡々と小1時間でオコタンペ湖展望台。ここでスノーシューを履く。
展望台を過ぎ、道路が左にカーブし30KMの速度標識のところから右手の小さな谷に沿って湖へ降りていく。
木立が途切れ、全く何もない白く平らな世界が開けた。オコタンペ湖である。
雪原とかしたオコタンペ湖と小漁山(左)〜漁岳(右奥)に続く稜線
この時期、湖面の氷の厚さは数十cmもある筈。
絶対大丈夫と思いつつ、雪をどけ氷をストックで思いきり突いてみる、ビクともしないのを確かめて対岸へと横断する。正面には小漁山〜漁岳へと続く白い稜線が朝日を受け眩く光り輝いている。
振り返れば、恵庭岳が逆光にシルエットのように浮かんでいる。
物音ひとつしない、静かすぎるオコタンペ湖である。
凍てついたオコタンペ湖と逆光の恵庭岳
対岸に渡ってからは小漁山のすぐ南のC1128mPから派生する尾根に向かって小沢沿いに進んでいく。
沢はほとんど雪で埋まっているが、一部は融け出し春の気配がかすかに漂い始めているようだ。
自然の季節を感じ取る鋭さには驚くばかりである。
早春の気配が漂い始めている
目指す尾根の取り付きへ着いた。歩き始めてすでに2時間半近くが経過している。
この尾根を下ったときは大半を尻滑りで降りた記憶がある。
地図を見ても、取り付きのC650mからC950mまでは等高線がびっしり詰まっていて、登る前からそれなりの覚悟をさせられる尾根である。記憶どおり取り付きから壁のような急な斜面だ、おまけに痩せ尾根だから大きくジグを切るほどの幅もない。
数歩ずつ細かくジグを切りながら登っていく。
雪はせいぜい膝まで位なのだが、1時間も経つとボディブローのように効いてくる。
痩せ尾根が続く
スノーシューの歯を蹴込んでしっかり食い込ませてもずり落ちていまう。
ジグを切れば山側の足を上に出すことが出来ず、膝を押し付けてステップを作りながらの一歩一歩である。時折視界がひらけ、真っ白い漁岳から元気をもらう。
漁岳
手ごわい急な痩せ尾根にただひたすら挑み続ける。
ふとC'Kすると、まだ標高は900m、時間はすでに1045である。
とても小漁山はおろか、C1128mPまでも無理だろう。
1200まで頑張ってみようと急斜面にぶつかって行く。C950mを過ぎると少し傾斜が緩んできた、やれ嬉しやと思うのだが体が思うように動かない。
時間は1150、一人ラッセル5時間で気力喪失・体力の限界である。
GPSを見ると標高1030m、小漁沼のすぐ傍だ。
丁度、少しひらけた窪地があったのでそこで大休止。
ザックを放り投げヘタリ込み、カミさん心づくしのサンドイッチを頬張り、熱いコーヒーを流しこむ。しばらく休んでいると少し元気が出てきてC1128mPまで行ってみようかと思うが、冷静に判断すればピークまで少なくも1時間、帰りの時間と疲労を考えればオコタン分岐へは暗くなってしまう。
馬鹿な事はやめようと潔く諦める、不思議なほど悔しさは無い。視界の開けたところから漁岳や恵庭岳の景観を楽しむ。
稜線まで出ていないので制限された景観ではあるが、心にしみる。
恵庭岳とオコタンペ湖
恵庭岳も漁岳も大きく立派である。
そしてオコタンペ湖の真っ白い姿も印象的だ。
漁岳
登りでは手ごわく苦戦した尾根だが、下りは楽だ。
3時間近くかかったところから1時間もかからないで降りてきた。転げ落ちてきたと言っても過言ではない。
自分のトレースをそのまま辿り、オコタンペ湖へ戻ってきた。
朝の日差しと午後の日差しでは同じ景色でも印象が全く違う。
端正な姿の恵庭岳を正面に見ながらのんびり湖上を渡った。
オコタンペ湖上から恵庭岳を眺める
遠く湖上を3人のパーティが歩いている、今日はじめて見る人達だ。
振り返ると小漁山〜漁岳の山並みが美しく並んでいる。
小漁山(左)〜漁岳(右奥)の山並み
小漁山が「これに懲りずまたお出で!」 と言っているようだ。
体力的にはもう難しいかもしれないが、チャレンジしたいという気持ちだけは持ち続けたいものだ。
小漁山
GPSトラック
オコタン分岐からオコタンペ湖までのトラックは省略 |