カミさんが椎間板ヘルニアの手術を受けてからかれこれ1年になる。
平静にしていれば痛みは全くないし、日常の歩行などにも支障はない。
外科的には大成功の部類なのだという。
だが少し長く歩いたり負荷をかけたりすると、手術した所がひきつるような感じになり痛みも出て、再び山を楽しみたいと言う手術前からの願いは未だ叶えられていないのである。この1年、気長に無理せずリハビリを行い回復を願ってきたが一進一退で、カミさん自身も山はもう無理と思い始めている気配すらある。
そこで思い切って野の花を楽しみながらゆっくり歩いてみようと長沼の長官山を訪ねることにした。
登れなくても良い、自然の中に身を置くことの気持よさを思い出し、再起への一歩足を踏み出すきっかけになれば良いと思ったのだ。
自宅から30分も走れば長沼の馬追温泉、ハイキングシューズにストックのみと言う軽装で記念すべき再起への一歩を歩き出したカミさんに「花を見ながらゆっくり行こう」と私。
冬は日陰で寒かった記憶のある小さな谷沿いを進んで行く。
フキやセリが目に付くが花は見当たらない。
ハルニレやカツラ、イタヤカエデなどの大きな木が立派だ。10分も歩くと、道は緩やかな尾根に取り付いていく。
「これ何だったかしら?」50cm程の小さな木に白い小さな花が球状に付いている。
沈丁花の薄いような柑橘系の香りが特徴の「ツルシキミ」である。
ツルシキミ
花は終りに近い、モデルになってくれる花を探したり香りを楽しみながらゆっくり登っていく。
明るい新緑の林内に小さな花が目立ち始めた。
まずはチゴユリ、可憐な花であるが繁殖力が強く庭に移植しようものなら数年後には駆除するのに苦労することになる花でもある。
チゴユリ
クルマバソウやマイズルソウも群れになって咲き誇っている。
「クルマバソウに似ている花は何〜んだ?」
「ええと・・・、何とかグルマ・・・? ヨツバムグラ、クルマムグラだっけ?」
クルマバソウやマイズルソウなど
さして目立つ花ではないが、次々と花々が出迎えてくれ、楽しみつつお喋りしていると自然にゆっくりゆっくりとなり、カミさんの腰にも大きな負荷とはなっていないようだ。
家に居てリハビリ体操や散歩をしている時より、表情も柔らかい。
ゆっくり行こうね
長官山は長沼町と栗山町の間に横たわる丘陵地帯のポコの一つ。
この丘陵に何本もの遊歩道が整備され格好のハイキングコースになっている。
馬追温泉から長官山までは緩やかな遊歩道を約2km弱、初級者やカミさんのリハビリにも適当なコースである。ツクバネソウが目立たないけれどよく観ると可愛い花を咲かせている。
ここのは葉が輪生している「クルマバツクバネソウ」だ。
クルマバツクバネソウ
タンポポがたくさん咲いている。
種が靴などに付いて広がっているのだろうと思いながら、花を裏返してみると外皮が反り返らずに花に密着している。
勢力を広げているセイヨウタンポポではなくて、エゾタンポポであった。
そう思うと急に愛おしく可愛く感じるのだから、いい加減なものだ。
エゾタンポポ
「あら! リンドウが咲いているわよ。」
小さなリンドウが鮮やかな青色の花を付けている。
見つけても正確な名前がよく判らない花、タテヤマリンドウなのか、フデリンドウか、ハルリンドウと聞いた思いもある・・・さて?
フデリンドウ?
これまた目立たない花、ズダヤクシュもひっそり咲いていた。
喘息の薬になると言うが、どうすれば良いのだろう?
喘息のカミさんのために、作り方を知りたいものだ。
ズダヤクシュ
コンロンソウもたくさん咲いていた。
小さな十字型の白い花が枝先にたくさん付いている。
中国の崑崙山脈が原産だと言うが、本当なのだろうか?
コンロンソウ
花たちに励まされ、楽しませてもらっている間に、見覚えのある大きく立派なキタコブシの木が現れると空が広がり、間もなく山頂である。
山頂まで行けなくても良いと思っていたのに、山頂に立つとやはり嬉しい。
わずか標高250mの山頂、おまけに霞んでいて眺望は良くない。
それでもカミさんは気持よさそうな表情で嬉しそうだ。
「山頂なんて本当に久しぶり! やっぱり気持ちが良いわ〜!」
山頂から南の展望、右は同じ長沼丘陵の瀞台
山頂から西の長沼市街方向
山頂に設けられた展望台の椅子に腰掛け、コーヒーとお菓子を食べながら寛ぐ。
カミさんの腰も違和感はなく大丈夫のようだ。
お菓子を・・・
のんびりしながら山頂の日当たりの良い草原をブラブラしていると、「あら、蕨があるわよ!」
密生しているわけではないが、確かに点々と蕨が生えている。
少し摘んだら数回分のおかずになりそうな分量。
フキの葉に包んでザックに仕舞い込む。
獲物をゲットすれば、こぼれる笑顔下りは登りより腰に負荷がかかるのでより慎重にゆっくり降りる。
ルイヨウショウマが線香花火のような花を咲かせている。
ルイヨウショウマ
目立たない小さな紫のキランソウもひっそりと咲いている。
キランソウ
尾根を降り、小さな谷まで降りてきた。
そこでカミさんはセリ摘み、私はフキとウド取り。
それぞれ、数回分の分量を収穫し、意気揚々と車へ戻った。
車に戻り荷物を片付け、車に乗り込む前にダニC'K。
儀礼的なC'Kのつもりだったのに、居るわ居るわ!
二人とも10匹位づつ、付いている。
食いつかれたら大変だ。眼の色を変え、真剣にC'Kし合う。帰路、車を運転しながらも首筋などがモゾモゾするようで気持ち悪い。
帰宅してからさらに入念にC'K、5匹も見つけた。
これからしばらくはダニのシーズン、気を付けたいものである。
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