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朝日連峰
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7月の連休2日目に当たるこの日、日暮沢小屋周辺は満車状態。
小屋前の林道に何とかスペースを見つけ車を停める。
それだけ人気の山なのだと認識を新たにした。準備を整え、小屋の横から龍門山へのルートに入っていく。
最初から木の根が階段状になった、かなりの急坂を登っていく。
尾根への取り付き部分だけだろうと思っていたのに、尾根に乗っても傾斜は緩まない。
周囲は樹林帯で見通しも利かず、風も通らず、暑い。ちなみに今日も山形地方は最高気温が36℃と報じられていた。これは少しばかり甘く見ていたのかも知れない、日高だと思って根性を入れなおそう。
少しペースを落として持久戦に突入だ。
汗でシャツはびっしょりだ、下をスパッツに半ズボンにしたのは正解だったようだ。1時間半程の所に「コロビツの水場」と言う、小さな流れがあった。
冷たい水で喉を潤し、頭から水をかぶる。
シャツを脱いで水に浸し、絞って着ると生き返るようだ。この馬鹿正直な尾根は、水場を過ぎてもブナ林の中に続き、単独だと話し相手もいなくて気分を紛らわす事もできない。
約1時間をひたすら耐え頑張ると、樹高が低くなり始め時折山の姿が目に入るようになった。
辿り着いた小ピークには清太岩山と言う看板標識、何とも聞きなれない山名である。
そう言えば、登っているこの尾根には、ユウフン山とか龍門山など馴染みのない山の名前が付いている。後から小屋の管理人から聞いた話では、清太岩山は清太と言う人が名付けた岩山だからで、ユウフンとは熊の糞という意味だそうだ。
龍門山は山頂直下にある雪形が龍の姿をしていることから名がついたとのことであった。ともあれ、清太岩山からは朝日連峰主稜線の山々が見渡せ、稜線には今晩泊まる竜門小屋の姿も確認できた。
清太岩山からの大朝日岳(奥)
清太岩山から主稜線までは、傾斜も緩み見晴らしの良い、楽しい尾根歩きだ。
花を楽しみながら、清太岩山から1時間半で主稜線の竜門山である。
この雪形が年によって龍に見えると言う、右下に小屋が見える
龍門小屋は龍門山から10分ほど、冷たい水が小屋前にふんだんに引かれ、綺麗な清潔な小屋である。
管理人さんに宿泊をお願いすると「早いですね」と言われる。それもその筈、まだ午前9時である。この後、今日は気ままに北へ主稜線を辿り、咲き誇っているであろう花々を堪能して回るだけである。
ゆっくり休み、サブザック一つでお気軽散歩への出発だ。
以東岳(右奥)など北の主稜線を望む (龍門山直下から)
小屋を出てものの10分も歩いた所に、ヒメサユリが咲いているのを見つけた。
飯豊に続いて2回目のご対面である。
7月の初旬に訪れれば、まさに旬のヒメサユリの群落に出会えるのだろう。
ヒメサユリ
稜線上にはミヤマカラマツやノウゴウイチゴ、イブキトラノオ、ヤマハハコなどなどが切れ目なく咲いている。
イブキトラノオ
晴れて眺望も素晴らしく、気分も清々しい。
ミヤマカラマツやタニウツギが遠景の山々を引き立てているようだ。
月山と花たち
朝日連峰に咲くハクサンイチゲは丈も小さく花も小ぶりで何とも可愛い。
北海道に咲くハクサンイチゲは育ち過ぎなのか、うざうざしい感じさえするのだ。
ハクサンイチゲと龍門山
約1時間で寒江山にやってきた。
見ると一面ヒナウスユキソウである。目立たない花だけど一帯が白く見えるほどである。
ヒナウスユキソウ
誰も居ない寒江山で腰をおろし、お昼にする。
菓子パンとトマトだけの昼食であるが、景色がご馳走なのだ。
山頂の草原にひっくり返り、しばしお昼寝。
朝日連峰の真ん中でこんな贅沢をしようとは思わなかった。
寒江山山頂にて、後ろは以東岳
寒江山は花の名山として有名な山である。
確かに花は多いが今はヒナウスユキソウを主に数種類、花の名山にしてはいささか寂しい。
少したってからやってきた女性に聞くと、後2週間ほどすればマツムシソウが満開になり、それはそれは素晴らしいお花畑が展開するとのこと。
確かにマツムシソウの紫とヒナウスユキソウの白、キスゲやキンバイの黄色が揃えば、さぞ見事であろう。山頂で1時間半ものんびり過ごし、大満足で小屋へと引き返した。
小屋に帰り、日向ぼっこをしながら管理人さんや他の人達と歓談。
管理人と顔見知りの人も多く、朝日連峰へは何度も訪れているという人が大半だ。
それだけ何回も訪れたくなる魅力にあふれた山域なのだろう。三連休の中日だけあって、次々に登山客がやってくる。
管理人は来る人の数を予測しつつ、手際よく場所を割り振っている。手馴れたものだ。やってきた人の大半がまずすることは、冷水で冷やしたビールを買うこと。
一本¥800円の缶ビールが飛ぶように売れている。
暑い中、頑張ってきた自分へのご褒美なのだろう。
日本で二番目に高いビールなのだそうだ。夕方には夕景を見ながら、思い思いの夕食。
グループの人達はあちこちで酒宴を開き、盛り上がっている。
静な話し声が次第に高くなり、山自慢が始まると最高潮だ。
月山の夕景 (龍門山から)
超満員の山小屋の夜は、ご多分にもれず鼾のオンパレード。
早く寝た者勝ちなのだが、私は何時も眠られず、負け組の一人だ。
休めれば眠れなくても構わないと、開き直ったらいつの間にか眠りに落ちていた。