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飯豊連峰
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何時もの縦走装備に比して格段に軽いザックを背に歩き出す。
温身平への道は圧倒されるような巨木に日差しが遮られ、歩きやすい。
本州へ来ると何時も思うのだが、木々の葉の色が黒々としているのに気付かされる。温身平から目指す飯豊の山々の姿が垣間見え始めた。
「待っていてくれよ〜!」
雪渓の白さが目に染みる
温身平から山道となり梅花皮沢の左岸を緩やかに登っていく。
木陰に守られているうちはまだ良かったが、次第に直射日光を容赦なく浴びるようになり、汗が滴り落ちシャツもびっしょりだ。早く雪の上を歩きたい、そう思っても沢には雪の欠片もなく、あるのはギラギラした日差しだけだ。
滝沢と思われる出合を過ぎて暫く行くとようやく沢筋に雪が現れはじめたが、ズタズタに崩壊していてとても雪を辿ることはできない。
ようやく雪が・・・
小さな小沢の水を頭から被り、フラフラ状態になりながら夏道を歩き、ようやく雪の上に出たのは歩き始めて約2.5時間が経っていた。
そこは紛れもなく石転び沢の出合い。
雪渓上部の稜線には梅花皮小屋が小さく見えている。
間違いない! ザックを下ろし大休止、雪渓の広がる景観を眺めながら6本爪の軽アイゼンを付ける。
石転び沢出合、この右手には門内沢が延びている
目を凝らしてよく見ると雪渓の1/3位の所に人らしい豆粒のような影が2つ、先行者が居ると思うだけで心強い。
ただ気になるのは稜線を超えて雲が広がりだしていること、雷にならなければ良いのだが・・・。
雪渓の上はさすがに涼しい!
先程までの暑さが嘘のようだ。雪は柔らかく軽アイゼンの爪がしっかり雪を噛んでいる。
それにしても雪渓の雪の汚れ具合は何だろう?
大気がそれだけ汚れているということなのだろうか?
北海道の雪渓では考えられないことだ、とても食べる気にはなれない。涼しさに助けられ快調に登っていく。
気になっていた雲が石転び沢を覆いだし、一気に陰気な表情に変わりだした。
何とか降らずに持ってほしい、そんなことを思いながら雪渓のど真ん中を直登していく。
雲に覆われ表情が一変した石転び沢
最初は緩かった傾斜も本石転び沢が右岸から合わさるあたりから次第に急になり始めるが、まだジグを切るほどではない。
雪は依然柔らかく、ピッケルの必要は感じずストックのままで十分である。振り返ると出合いがかなり下になり、登ってきたのが実感できる。
正面は雲に覆われた陰湿な世界、後ろは青空の明るい華やかな世界である。
石転び沢を振り返る
豆粒のようで人か岩か定かでなかった影が二人の人であることがはっきりし、次第にその姿が大きく明瞭になってきた。
夫々単独のようで、大きくジグを切り休みながら確実に登っているようだ。中ノ島の手前500m位で一人に、中ノ島の取り付きでもう一人に追いついた。
お二人とも私より少し年配の方で12本爪アイゼンにピッケルのしっかりした装備で慎重な足取りだ。
正面の緑地が中ノ島
中ノ島に上がり、お二人に先行して夏道を登る。
かなりの急傾斜で、学生時代隊列を作って登るのが辛く苦しかったのを思い出した。
先輩たちに飛ばされた激の声まで蘇ってきたのには、ただ苦笑いであった。
中ノ島には、豊かで鮮烈な水が流れていて良い休憩場所となっている。
中ノ島上部から北股岳の尾根を見る
中ノ島から梅花皮小屋まではほんのわずなな距離だが、小さいけれども急な雪渓が阻んでいる。
面倒でアイゼンを付けずに登りたくなる所だが、リスクは回避すべきとアイゼンを付け直し一気に登り切る。梅花皮小屋の入り口ですでに到着していた人に出迎えられ一安心、飯豊山荘から5時間半、初日にしては上出来だ。
小屋の管理人さんに挨拶、使用料¥1500円を支払い小屋の人となる。
途中で追い抜かせてもらったお二人も3・40分後に無事到着。晴れていれば北股岳へ行くつもりであったが、雲やガスが覆っていて景観は期待できそうにない。
小屋の周辺で花を探してみることに。石転び沢から盛んにガスが沸き上がって、見飽きない景観である。
湧き上がるガス、見え隠れする尾根
小屋の周辺にはヒナウスユキソウがたくさん咲いている。
私は余り好きではないが、エーデルワイスとして人気の高い花だ。
ミヤマキンバイやミヤマキンポウゲ、ハクサンチドリ、イワギキョウなどもかなりの量の花が咲き誇っている。
飯豊は花の山でもあるのだ。
ヒナウスユキソウ
小屋の前から石転び沢を覗き込むと、下が見えないような傾斜で落ち込み、こんな所を登ってきたのだという感慨が沸き上がってくる。
石転び沢を覗き込むが、下は見えない。
ガスの晴れ間に北俣岳が姿を表した。
なかなか形のよい山だ。
北股岳
この日、梅花皮小屋の泊まる人は5人。
ゆったり心穏やかに過ごすことが出来る。6時前には皆さん夕食そして団欒、7時には明日への期待を胸にシュラフに潜り込んだ。
どうか明日は晴天でありますように・・・。