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鳥海山 祓川コース
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登山口である祓川ヒュッテの直ぐ前に広がる湿原が竜ガ原湿原である。
アヤメなどの湿原のお花も見応えあるが、何より湿原を前景とした鳥海山の凛々しい姿が素晴らしい。
竜ガ原湿原と鳥海山
木道を渡り、直ぐに小さな雪渓を登る。
これから登るだろうルートを下から観察すると、5・6個の雪渓を繋いでかなり高い所まで行くルートが想定できた。
自分の勝手な想定が正しいのかどうか、それも興味深い。
30分ほど歩くと賽の河原、1時間ほどで七ツ釜と夫々雪渓の末端に繋がっている。
ちなみに七ツ釜には避難小屋があり、雪が溶ければ滝が現れるのだそうだ。
次々を雪渓を繋いで登っていく
次々に現れる雪渓は、いずれも斜度が緩くアイゼンは必要としないがストックは使ったほうが楽だし安全だ。
そしてこのコースの特徴は、コースの大半から常時山頂を視認しながら登れることで、これは実に楽しい。
山頂を視界に入れながら、大雪路と呼ばれる雪渓を登る
気持よく快適に登っていると、それまでは雪渓の上端から次の雪渓へのルートが伸びていたのにルートがないのに気がついた。
無理やり涸れ沢を詰めれば行けると読んだが、ここは一般ルートだ。
道がない筈はない。一旦下がってルートを探すと、雪渓の途中から左手の尾根に道が付けられていた。
アイゼンも必要ないほどの斜度の雪渓を歩いているのだから、何時からか急登があるだろうことは予測できた。
氷の薬師と名付けられた所を超えてから、案の定、急な岩礫地の登りとなった。ジグを切りながら登って行くが、ここでも鉾立コースにもあった石畳の道が一部整備されていた。
鉾立コースはともかく、祓川コースでは道を整備する場合この石畳は止めていただきたい。
ぜひ自然の道を模した、自然にも人にも優しい補修・整備をお願いしたいものである。やがてジグを切りながらの急登は花の咲き乱れる草地を登るようになり、花々に励まされながら山頂を目指す。
花に励まされつつ山頂を目指す
急斜面だけに確実に足を進めれば、どんどん高度を稼ぐことが出来る。
氷の薬師から1時間も頑張れば、一気に山頂へ飛び出すのだ。
登りきれば、呆気ないほどだ。そこには昨日何の展望も得られず風雨に叩かれた鳥海山・新山の山頂が目の前にそびえ立っていた。
鳥海山の七高山山頂から新山を見る。左下に大物忌神社も見える。
こんな位置関係だったのだ。
昨日は皆目分からなかった関係位置が理解でき、頭の混乱が解消したような気がする。
大物忌神社も見えている。七高山も岩峰だが、新山のような巨岩が積み上がった岩峰ではない。
極めて距離の近い双耳峰の峰なのに性格が少し違うようだ。
七高山山頂
まだ時間は午前8時半だ。
時間は十分すぎるほどある。思い切りのんびりゆったり過ごしてみようと思う。南には月山が優美な姿を広げている。
山頂から月山を望む
外輪山を辿って新山まで行くのがお決まりのコースらしいが、昨日の新山の記憶を大事にしたいと思い、敢えて新山には行かないことにした。
新山は暴風雨、七高山は晴天の大展望、それが私の鳥海山の新たな記憶となることだろう。岩に寄りかかり風を避け、のんびり眺めていると、新山の頂上に登山者が立っている。
きっと思いを果たし、山頂に立った喜びに浸っているのだろう。
おもわず、おめでとうと聞こえるわけのない声援を送った。
新山山頂の登山者
少し外輪山を行くと、鳥海山の双耳峰がカメラに収まる場所を見つけ、一枚。
広角レンズをやはり持ってくるのだったと少し悔やむ。
左が新山、右が七高山
山頂で1時間以上展望を楽しみ、感謝の気持ちで一礼し下山することに。
山頂からものの15分も下ると、康新道への分岐である。
登ってきた雪渓の谷から一本西の尾根を下っていく。
この尾根を下っていく康新道
足場は火山岩の脆い砂礫で滑りやすく注意が必要だ。
振り返れば、今まで楽しんだ山頂が荒々しい表情で見下ろしていた。
荒々しい鳥海山の山頂部
鳥海山はやはり良い山だった。
今回は風雨に会い、苦労した部分もあったけど、悪い印象は一つもない。素晴らしい山だと誰にも自信を持ってお勧めできる。そんな山である。
登らなくても、周囲の麓から見るだけでもウットリする勇姿。
その勇姿が見る人の心に何かを訴える。
そんな力を持っている山、それが鳥海山であるように思う。鳥海山、素晴らしい思い出をありがとう!