中沢峰からの大朝日岳
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中沢峰
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西吾妻山から下山してインターネットで天気図を調べると天気は回復する気配。
念願の祝瓶山に登れると喜び、夜は道の駅「飯豊」で車中泊。
余談だが、道の駅飯豊のすじ肉を煮込んだ「牛のべこ汁」は大変美味しかった。夜半トイレにいくと一面の星空、久しぶりに見る星空だ。
嬉しくなってじっとしていられない。
まだ真暗い内に祝瓶山荘むけ出発した。
道は木地山ダム付近から狭いダート道となり神経を使う。苦労しながら何とか祝瓶山荘にたどり着き、早速出発準備。
空は晴れているはずだけど、霧が出て周りは何も見えない。
まだ暗いがカミさんに留守番を頼んで歩き出す。
祝瓶山荘の裏手に明らかな道が延びている。
意気揚々と取り付く。
祝瓶山荘裏から延びる山道、極め付きの急坂だ。
テンションが上がっているせいか、負けるものかと一歩一歩頑張る。
30分登っても緩まない急坂に少し変だぞと思い出すが、霧で周りを確認することもできない。やっと急な尾根を登り切った時は約1時間が経過していた。
一休みして地図を見ようとしたら、無い。地図がないのである。
そんな馬鹿なと思うが、無いものはない。
祝瓶山へのルートを思い出そうとするが、中央稜を登って北東稜を降りることしか覚えていない。「参った魚は目でわかる」状態で、どうしたら良いか皆目分からない。
エ〜イ! ままよ! 参っていても仕方ない、ここまで来たのだ。このまま行ける所まで行ってみよう。稜線に出てからは緩やかなアップダウンが続くだけで道もしっかりしている。
最近整備されたような道だ。
色づく樹林帯に道は延びている
樹林の中で見通しは聞かないが、徐々に霧は晴れ曇り空に変わってきた。
位置を確認すべく時々周囲を見渡すが、良く分からない。
しばらくして左後ろに三角形の山がチラリと見えた。
確信した。祝瓶山荘から祝瓶山とは全く反対方向へ来ている。
とすれば、歩く稜線の左側に朝日連邦の山並みが見えてくるはず。小さなピークを越え更に進んでいくと、左手に雪を纏った大きなピークが見え始めた。
大朝日岳に違いない、見覚えのある形である。
大朝日岳
道を完全に間違えた。不明だった位置関係は概ね理解した。
さて、どうする?祝瓶山荘まで戻ってやり直すのがベターだが、3時間近くのロスになる。
祝瓶山だけで7〜8時間が必要だろう、とすれば10時間以上の行動を見込まなければならない。
焦って再び間違えて滑落したり、怪我をしたら楽しい山旅も台無しだ。祝瓶山は逃げはしない。次の機会に譲って今日はどの山に行けるのか行ける所まで行ってみようと決心し、そのまま進む。
小さなピークを二つ越え、山荘から歩くこと2時間と少しで明らかなピークに立った。
道は二手に分かれ、直進する道は緩やかに右に曲がりながら下りていき、左に直角に曲がる道は急激に下っている。今日の山頂はここ! と勝手に決める。
山頂標識は無いが、歩いてきた方向をさして祝瓶山荘と読める板切れが落ちている。大朝日岳が朝日を浴びている。その左手に西朝日岳らしいピークが見える。
木々に邪魔されて祝瓶山は見えない。
大朝日岳
右手遠くに米沢市街と思われる平地が見え、その向こうには吾妻連峰が見えている。
そして東には蔵王が大きく翼をひろげている。南西方向には霞んでいるが雪をしっかり頂いた飯豊連峰の長い稜線がうっすら見えている。
腰を下ろし熱いコーヒーとパンを口にする。
当然ながら、ほろ苦い味だ。
「慎重に戻ろう」沈んだ気持ちを高めるべく、大声で気合を入れ立ち上がる。
来た道を引き返す、目印を覚えてきたので間違えようもない。前方にチラチラ本来の目標、祝瓶山が見えてくる。
祝瓶山
見れば見るほど良い山だ。凛々しく逞しい。
本当なら今頃あの山頂に立っていたのに・・・。繰り言を並べても仕方ない。
無事に降りて、次の機会に起死回生を狙うのみだ。コブシの実が赤く色づき鳥たちに食べられるのを待っている。
コブシの実
稜線歩きを終え、あの急坂に差し掛かった。
いくら急坂でも下りは早い、あっという間に下りていく。木々の間から祝瓶山が姿を見せ、次は間違えずに来いよ!と言っているかのようだった。
祝瓶山 次は必ず行くぞ
車で待っていたカミさんに間違えて反対方向の山に行ってしまったと話すと、「まあ! 素人みたいなことを」と呆れられてしまった。 グスン!
ちなみに車の後ろに地図は落ちていた。
さらに山名は帰宅してから調べ「中沢峰」であったことが判明した。
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