雨竜沼湿原

増毛   2012.8.8(水)   晴れ


 

雨竜沼湿原
湿原入口からの雨竜沼湿原と南暑寒別岳(中央右)、暑寒別岳(右)

 

2012.8.8(水)
ゲートパーク 0540
雨竜沼湿原入り口 0655
湿原散策 0700〜1010
雨竜沼湿原入り口 1015
白竜の滝 1040〜1105
ゲートパーク 1120

雨竜沼湿原

雨竜沼湿原は増毛山地南暑寒岳の東山麓標高850mに広がる東西約4Km、南北約2kmの高層湿原。
北海道でも有数の豪雪地帯にあり寒冷貧栄養の環境下、ミズゴケやスゲなどの植物が腐らずに長い年月堆積し厚みを増して元の水面より高くなって出来たと言われている。

湿原で有名な尾瀬に規模こそ及ばないが、咲く花の多さや人工物の少なさなど自然環境は勝るとも劣らない素晴らしい湿原だ。
私はかれこれ10数回カミさんも5回位訪れているが、何時訪れても時期時期の花と景観に心を打たれ失望したことは一度もない大好きな場所なのである。

現在リハビリ中でハードな山には行けない私達、家に閉じこもっていると溜まってくるばかりのストレスを解消しようと雨竜沼湿原と訪れた。

 

無念の思いから

岳友達と知床半島縦断の計画を昨年から約束し楽しみにしていた、けれど昨年末から痛めた頚椎や膝腰の痛みが取れず、計画実行へ向けてリハビリを開始したのが6月のこと。
軽い山行や一日一万歩のウオーキングを精力的に続けたのだが思うような回復には至らず、岳友達に迷惑をかけるならと知床行は不参加とし諦めた。
正直残念で残念で、しばらくリハビリにも力が入らなかった。

そんな中、カミさんに胸が苦しくなる発作が何回か続けて起こり専門医で心臓の精密検査。
心配した心臓自体や血管の異常はなく遺伝性の狭心症の前段階症状であることと持病の喘息が関係しているとのことで直ぐに手術などは必要なく発作に対する対処療法でしばらくは大丈夫、運動も行ったほうが良いとの診断で一安心。
私の頚椎と膝腰も画期的な改善は見られないものの、僅かづつだが良くなっている感じ。

傷病相憐れむ仲間同士、カミさんと富良野や美瑛・十勝・滝野すずらん公園などに足を伸ばし、心と体のリハビリに励んできた。
今回はその延長で大好きな雨竜沼湿原に遊ぶことにしたのだ。

 

あじさい街道

ゲートパークで入山手続きを済ませ協力金を支払い、湿原向けて朝の一歩を踏み出す。
お天気は快晴、雲一つない上天気だ。
何の心配もいらないと雨着兼防寒具、お弁当、水、非常食、タオル、ツエルトなど必要最小限、それに私は花の撮影用カメラ機材、カミさんは短歌を書き留める手帳という超軽装。
靴も軽量トレランシューズ、軽くて滑らないのでこの数年夏山(沢以外)でもっぱら愛用しているのだ。

歩き出すとすぐに道端には3〜4mもある巨大なエゾニューがいくつも立ち並んでいる。
キツリフネが可憐に揺れ、ニワトコの赤い実が目に眩しい。
エゾシモツケやヨツバヒヨドリの落ち着いた淡い赤も目に付く。
白竜の滝を過ぎ二本目の吊り橋を渡ると傾斜が強くなるが、道にはエゾアジサイの目の覚めるような青やピンクが咲き乱れ、まさにあじさい街道で美しい姿に見とれていると湿原はもう目の前だ。

エゾアジサイ
エゾアジサイ

間もなく湿原という所で、珍しいものを見つけた。
倒木に幼木が芽吹き成長するのを倒木更新と言いエゾマツやトドマツ・杉などに多く見られるが、それとは少し違い太い枯れ木の天辺に広葉樹の幼木が育っているのだ。
懸命なその姿に、思わず「頑張れよ!」と声をかけてしまった。

枯れ木更新
枯れた大木の天辺に小さな木が育っていた。
お月さまも応援しているのかな?

ゲートを出てから極め付きのゆっくりペースで歩いてきた、それでも1時間15分で湿原だ。
確か昨年ゲートから暑寒別岳往復をした時は1時間ぐらいだったはず、のんびり歩いても大して差が無いものだと改めて思った。

 

コウホネ

いくら花の多い雨竜沼湿原と言えども、お盆前のこの時期は盛りだった初夏の花々はすでに終わり秋の花へと変わる時期、多くの種類は望めない。
今回私達の狙いは、湿原の池塘に咲く「コウホネ」と「ヒツジグサ」そして「トキソウ」。
トキソウは一度しか見たこと無いし、コウホネとヒツジグサは雨龍沼では見たことがないのだ。

湿原に入ってすぐの所にある展望休憩台で散策モードに変身。
ストックは収納し、カメラにはマクロレンズ、三脚を持ち、望遠レンズはすぐに出せる所へ。
今日は山へは登らないつもりだから、時間無制限・花三昧の湿原散策である。

散策に歩き出すと目に付くのは「タチギボウシ」、紫の花をつけて風に揺れる姿は何とも優雅、提灯か竿燈のようでもある。
数が多いから少し離れると紫色の絨毯のようだ。

タチギボウシ
タチギボウシ

池塘が出てきた。
丸い単純な形、川の流れが分断されたかの形、三日月型と様々で近くにあるのに植生が違っていたりする。
自然界のすることは不思議で私達の理解を超えている事が多い、それがまた魅力なのである。

池塘
池塘

タチギボウシやサワギキョウの写真を木道に寝っ転びながら撮っていると、「あったわよ〜」の声。
お目当ての「コウホネ」が可憐な黄色の花を咲かせている。
かわいいね〜! 少し枯れかかった葉の風情も侮りがたい。

コウホネ
コウホネ(ウリュウコウホネと言うのかな?)

木道から近い花まで4m位ある。
木道に三脚を立て400mmの望遠レンズに変えて狙ってみるが今一つ、そこで1.4倍のコンバーターを付けてUPにしたのがこの写真。

コウホネ
コウホネ

風があり花が微妙に動くのでシャッタースピードを早くすべく絞りを開放にしたが、わずかに動く花を追ってピントを合わせるのに一苦労。
普段ならすぐに諦めてしまうのだが、今日は撮影三昧と宣言した手前粘りに粘る。
プロやハイアマチュアの人達の根性に感じいる。

花を大きく撮りたいのは人情、木道から外れ池塘の縁まで複数の人による踏み跡が「立ち入らないでください」の標識を無視してしっかりと付いていた。
人の少ない雨竜沼、貴方だったらどうしますか?
そんな時、私には子供の頃聞かされた「お天道さまは必ず見ているんだよ」の声が聞こえてくるのです。

ヒツジグサらしい葉がある池塘もあったが、距離が遠すぎて写真はおろか白い花を確認することも出来なかった。

 

撮影三昧

湿原を一方交通で周回する木道に入る、所々に羆の掘り返しが。
掘り返されて飛び散った土がまだ湿っている、熊さんを驚かせないよう気付いてもらえるよう意識して大きな声で話しながらゆっくり歩く。
だがクマザサの中で獣臭い匂いがしてきた時はさすがに気持ちが悪く、笛を吹きながら「熊さん、お願いだから避けてね」と祈りながら通過した。

花の大半はタチギボウシとサワギキョウだが、アザミ・シロワレモコウ・クガイソウ・ヨツバシオガマ・ハンショウズル・ヤマハハコ・シロバナニガナ・エゾシモツケ・ゴマナ・ウメバチソウ・モウセンゴケなどが少数ながら咲いていた。

サワギキョウ
真上から見たサワギキョウ

私があれこれ写真を撮っている間、カミさんは木道に座り込んで思い浮かんだ歌を書き留めている。
口ずさみながら推敲でもしているのか、モグモグお口が動いている。

推敲
ああかしら? こうかしら? ええと・・・

のんびり散策していると、三々五々湿原を歩く人がやってくる。
三脚を退け、挨拶しながら通っていただく。
若い単独男性も何人かいるが大概は無言で通り過ぎる、女性は何かしら声を掛けていく。
男と女、こんな些細なことでも違うのだな〜。

タチギボウシ
タチギボウシ

普通に歩けば一周するのに1時間ほどの湿原、それを3時間以上掛けてのんびりダラダラ撮影三昧。
風があって背の高い花はあっちにそよそよ、こっちにそよそよ。ちっともジッとしていてくれない。
下からファインダーを覗き込んでいると、クラクラめまいがしてくる。
もういいや! 辛抱が続かず撮影は終了。我ながら根性の無さに苦笑いだ。

出発点にある展望休憩台に戻り、休憩されていた方たちとしばし雑談。
日差しが強く、暑いぐらい。カミさんは日焼け止めを塗りたくっている。

 

白竜の滝

まだ時間は午前10時だが、することも無くなったので下山することに。
途中登ってくる人達とすれ違う。
夏休みだからか小さな子供連れの方、ご夫婦、高校生グループなど十数名と行き会った。

30分ほどで白竜の滝へと戻ってきた。
通りすぎてしまうことの多い白竜の滝、久しぶりで立ち寄ってみる。
登山道から見下ろす滝も良いものだが、やはり下から見上げる滝は堂々としていて見栄えがする。

白竜の滝
落差は約25m なかなかの迫力だ

滝裏の日の当たって輝く岩と苔それと視界を遮る水のカーテンが新鮮に感じられ、切り取ってみた。

白竜の滝
水のカーテンと苔の滝肌 上の写真の右下部分

滝壺近くの岩にダイモンジソウやハイオトギリが花をつけていた。
水場が似合う可愛く凛々しい花である。

ダイモンジソウ
ミヤマダイモンジソウ

ゲートパークに戻り下山届けを提出、併せて熊の情報を管理人さんに報告して帰路についた。

リハビリ目的もあって、極め付きののんびり湿原散策を楽しめた。
何時きても期待を裏切ることのない雨竜沼湿原、今回トキソウとヒツジグサは見られなかったけれど秋間近の湿原を堪能することが出来、満ち足りた気持ちである。

 

オジロワシ歌壇

 

 

・盂蘭盆の供花か擬宝珠咲き盛り
          雨竜湿原は人影もなし

・湿原は光の波に煌きて
        木道白く蜻蛉飛び交う


 

 

 

 

2011.7の雨竜沼湿原へ
2005.7の雨竜沼湿原へ

 



 

 

Homeへ
Page Topへ
次に進む


 

 

 

inserted by FC2 system