神威山荘から見た神威岳
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神威岳
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今回の神威岳登山で、とても嬉しく感じたことが二つあった。
その一つは、神威岳には今まで5回訪れているけれど全て山頂は雲や霧に覆われ山頂標識しか見ることは出来ず大展望はオアヅケになっていたのだ。
今回、6回目にして神威岳山頂からの素晴らしい絶景・大展望を心ゆくまで堪能することが出来、心から嬉しくすべてに感謝なのである。
初めて得た、神威岳からの眺め
その二つは、今年に入り体調を崩し山らしい山へ行けず少々落ち込んでいた。
治療とリハビリに専念し気力体力もどうやら回復傾向、今回日高に再びチャレンジしようと言う気持ちになれたことが自分自身本当に嬉しいのだ。平凡なことだけど心と体の健康ほど人生にとって大切なものはないと痛感した、これからも健康に留意して積極的な明るい人生を過ごしていきたいと思う。
「南風は日高の山に悪天を見舞う確率が高い」何回も痛い目に遭わされ、そう確信している。
予報によれば9/7・8はどちらも好天だ、だが天気図をよく見ると9/7はもしかしたら南風になるかもしれないと判断、大丈夫そうな9/8にチャレンジすることに。
夜、林道を走るのは嫌なので昼過ぎに自宅を出発、夕刻には長い林道を無事通って神威山荘へ到着した。
通る林道からは神威岳とペテガリの間にある中ノ岳がスッキリした姿を見せていた。
中ノ岳
神威山荘はよく手入れされた気持ちよく使える小屋、10人ぐらいは余裕だろう。
ただトイレが建物内にあり、便利なのだが反面臭いがこもりがち。
この日は土曜日を翌日に控え混みあう事も考えられたので、私は車中泊を決め込んだ。
小奇麗な神威山荘
間もなく日没、夕餉をとってから夕照の神威岳を見に行く。
赤く染まった神威岳、明日の晴天を約束してくれているかのよう。
心安らかにシュラフに潜り込んだ。
夕日に染まる神威岳
目覚めると期待した通りの青空だ。
簡単な朝食を摂り、身支度を整える。
沢靴と山靴両方持っていくのは辛いと足回りはスパイク地下足袋で兼用だ。
大展望を夢見て、望遠レンズ(100〜400mm)と標準ズーム(24〜120mm)、広角ズーム(14〜28mm)それに三脚を持つ。カメラ機材だけで6Kg、頑張らなくちゃ!
目覚めると青空だ!
歩き出すと沢沿いに明るい紫色が点々と・・・、トリカブトが盛りと咲いている。
沢の岩にはエゾトウチクソウが煙突ブラシのような濃い桃色の花をなびかせている。
トリカブト
C524m二股を左に入る、年々巻き道が整備されてきているのか沢の中を歩くことは殆どない。
よほど増水した時以外は山靴で問題ないのではないかと思えるほどだ。「ちょっと変!」体が重く、汗がやけに出る。
しばらくぶりのハードな歩きだからか?
いや、どうも体調が良くないみたい。
急ぐことはない、のんびりゆっくり行こうと心に決める。朝日を浴びて水の流れが清らかで美しい。
透明な水が朝日を受けて輝く
C710m二股を右に入ると尾根への取り付きだ、大岩に赤ペンキでマーキングがある。
ドライフルーツで気力を高め、神威岳の急峻な尾根への挑戦だ。
笹がカブリ気味の見通しの効かない斜面を喘ぎながら登っていく。
笹を掴み、木の根を頼りに体を引っ張り上げる。
昨年6月の時に比べると何倍もキツく苦しい感じだ。
こんな体調の時は止めて出直すべきなのだろうが初めての大展望が待っているはず、このチャンスを逃す手はないとひたすら我慢の時間を過ごす。昨春見たミネザクラやヒダカイワザクラなどを思い出し気を紛らわせつつ足を運ぶ。
励ましてくれる花や景色がないのが辛い所だ。
国境稜線に合流する、ニシュオマナイ岳から伸びる稜線が凛々しい。
間違いなく山頂と思われるピーク、初めて目にする神威岳山頂の姿だ。
6度目にして初めて目にする神威岳山頂
こんな位置関係だったのか、これまで定かでなかった周辺の地形や地物との位置関係が頭の中で組み立てられ整理される。
談笑する声が聞こえ始め、ゆるやかになった草付きの斜面を行くとあの懐かしい山頂標識が目に飛び込んできた。
今までで一番苦しい思いを舐めたのかもしれないが、何とか山頂へ辿り着いた。
ザックを下ろすのも忘れ、ただ呆然と立ち尽くす。そこにはこの10年間、憧れ続けてきた神威岳の大景観、絶景が広がっていたのだった。
何と言っても一番の存在感は東隣のソエマツ岳だ、ヒマラヤ襞を思わせる急傾斜で沢に落ち込む深く刻まれた山肌、双耳の凛々しくも逞しい山容、圧倒的な存在感だ。
圧倒的な存在感を示す、ソエマツ岳
ソエマツ岳からピリカ、トヨニ、野塚、十勝、楽古と続く南日高の長大な主稜線。
アポイ岳や太平洋の海まで見ることが出来た。
ソエマツ岳から南に続く主稜線の山々。ピリカ(中央) 楽古(右)
違った方向からは何度も見ている景観・山並みなのだが、何とも新鮮に思える。
強かった思い入れのなせる技なのであろうか?
ピリカ(左)から楽古(中央)へ続く稜線、右端はアポイ岳
疲れも辛さも吹き飛んで、嬉しさ一杯自然と笑みが広がり優しい気持ちになる。
声高の自慢話も気にはならない。
嬉しさに記念写真を一枚
目を北に転じれば中日高と北日高の重畳たる山並みが、ご照覧をと座している。
それら山並みの映像と望遠によるアップ映像は次ページでどうぞ。