真狩から見る羊蹄山
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羊蹄山
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前日、千歳では高曇りであったのだが倶知安に着くと霧雨、雨の中を登るのは止めようと倶知安市内で時間を潰し半月湖の登山口駐車場で車中泊。
登山口とその少し下に大型バスも利用できる駐車場があり夫々トイレなどが完備されている。
下の大きな駐車場のほうがトイレも綺麗と、こちらで泊まることにした。夜中トイレに起きると雨は止み、月が煌々と照っていて晴天が約束されていた。
夜中起きると月が煌々と
朝5時過ぎに起きだし、熱いコーヒーを入れて気持ちを高める。
簡単な食事を摂り準備を整え、登山口の駐車場へ赴く。
駐車場脇のキャンプ場では若いカップルがテントを張り、コーヒー豆を挽いて良い香りを漂わせている。交わす挨拶も若々しく元気が良い。
歩き始めは深い樹林帯の中の緩やかな道、雨上がりのしっとりした空気が喉に優しく呼吸も楽だ。
道端にはサイハンランやニガナなどの花柄が多く見られ、花の時期の華やかさが想像できる。
この時期顔を出しているのはキノコの類、ほとんどが登山者によってひっくり返されている。
見つけるとひっくり返したくなるのは人の常なのだろうか。2合目まで50分も掛かっている。
5時間以上かかるかもしれないと内心焦るが、ゆっくりしたペースを維持する。
幸い、次からの合目間の所要時間は15分〜25分位であった。3合目からもエゾマツ主体の樹林帯の中ではあるが、時折展望が開け気分が変わる。
雲海が広がり雲海に羊蹄山の影が映っていて、思わず歓声が上がった。
ニセコアンヌプリとの間に雲海が広がり、そこに羊蹄山の影がくっきり映っていた
4合目付近から斜度が増し、前日の雨で濡れた滑りやすい道をひたすら登る。
富士山型の山に共通するが、アップダウンなどの変化が無くひたすら登る面白みのない登山である。おまけに樹林帯で展望もない。暑くなってきたので1枚脱いて、体温調節。
カミさんの体調を確認し、努めて一定のペースを維持する。
変化がなかった樹林帯に、黄色や赤の色が出てきた。
黄色は茶色ががった葉や傷んでいる葉も多い、ハッとするような色鮮やかな葉は数えるほどだ。
赤の主体はツタウルシ、燃えるような激しい色を見せ始めている。
色鮮やかなツタウルシ
緩むことのない真面目過ぎる急斜面、ひたすら耐えて一歩一歩を運ぶのみだ。
歩き始めて3時間半、9合目の避難小屋との分岐に辿り着いた。
平らになる火口壁稜線まであと少しと励まし登る。
稜線に登る斜面一帯は草紅葉となり、美しい彩りを見せてくれる。
火口壁はもう少し、草紅葉の草原が美しい
快晴の火口壁からの眺めは、想像以上の素晴らしさ。
4時間の辛抱の甲斐があったというものだ。
澄み切った大気はあくまで透き通り、何処までも眺められそう。
一方、火口壁から火口に至る大斜面は草紅葉が艶やかで、稜線のスカイラインも清々しい。
登り着いた火口壁、素晴らしい景観に思わず見とれる
登ってきた方向を振り向くと、ニセコの山々がズラリとお出迎え。
先日何も見えなかったチセヌプリもしっかり見えている。
冬は楽しく使わせてもらっているのだからとやかく言う資格はないけれど、それにしてもアンヌプリのスキー場が痛々しく見える。
ニセコアンヌプリからチセヌプリ、シャクナゲ岳、目国内岳、雷電岳がズラリと並ぶ
火口壁を北側にある山頂へと歩き出す。
大展望を満喫しながらの快適なプロムナード、道の両側にはキンバイやリンドウ、イワブクロなどの枯れた花柄が一杯だ。
積丹方面はやや霞んでいるが、京極方面には余市岳、無意根山、定山渓天狗岳など札幌の山々がしっかりと見えていて、山座同定に忙しくなかなか足が進まない。
京極の向こうに余市岳(左)、無意根山(中央)、札幌郊外の山々(右)が見えている
火口壁を京極コースを過ぎ、喜茂別コース脇にある岩場の山頂へ登る。
北からの風が吹き冷たい、すぐに南側の日の当たる岩陰に逃げ込みザックを下ろす。
山頂に立ち、洞爺湖を眺める
山頂からはそれまで陰になって見えなかった洞爺湖方面、支笏湖方面もよく見える。
道央や道南からは何処からでも羊蹄山が見えるのだから、山頂からは何処でも見ることが出来るといっても過言ではない。
が、やはり実際に目にすると感激も一入だ。
山頂から洞爺湖、有珠山を眺める
羊蹄山の中腹からも有珠山からも雲が湧き上がり、漂い、消えていく。
南の太平洋上には積雲系の雲が集まり夏の風情。風を防げる火口壁に面した岩陰に腰を下ろし、お腹も空いたとお昼にする。
お赤飯ときのこご飯をおにぎりにして凍らせたものをそのまま持ってきたら、まだ完全に解凍しきらずご飯が少しボロボロしている。
ちょっと失敗、完全に解凍してから持ってくるのだった。
天ぷらの方は美味しく食べられる。眼の前に広がる巨大な火口、草紅葉で一面赤く染まって絶句するほど美しい。
今年一番の草紅葉だ。
赤く染まった火口壁の草紅葉
点々と火口壁の周りを歩いている人の姿が豆粒のようだ。
草紅葉
前回訪れた時も景観に圧倒されたが、今回はそれを上回る大景観。
初めてにしてこの大展望を手中にしたカミさんは何という幸せ者、そんな話に花が咲く。
火口壁を一周するには、更に岩場を行かねばならないので元来た道を引き返す。
樽前山から恵庭岳、空沼岳、札幌岳へと続く山並みもしっかり見えている。
意外な大きさに驚きながら、あまりにもの眺望に羊蹄山を惚れなおす思い。更に遠くには日高山脈、夕張山地、十勝連峰の姿も確認できた。
樽前山(右)から恵庭岳(中央左)、札幌岳へと続く山並み、その奥は日高山脈
山頂を吹き通る北風が冷たい。
顔が痺れ、指が冷たく感じる感覚は久しぶり、また冬がやってくるのを実感する思いだ。火口原の真ん中の道を旧小屋跡へ、途中コケモモの実が赤黒く透き通ったように熟しているのを見つけ「コケモモ・タイム」。
座り込んで次から次へと摘んで頂く、甘酸っぱくていくらでも食べられる。
5分ほどタップリ頂いておいて、「リスや鳥たちに悪いからこれくらいにしようか・・・」。ルスツコースへの下り口からニセコ方面の大景観をもう一度じっくり見渡す。
午後になったのに霞むこともなく透き通った大展望、じっくり目に焼き付ける。
ほんとうに素晴らしい!
山頂部の草紅葉とニセコ連山、倶知安の街並み(右下)など
登りもキツかったが、羊蹄山は下りも大変だ。
傾斜がきつい上、昨日の雨で滑るのだ。
ゆっくり慎重に降りる。
8合目まで降りると暑くなって上着を脱ぎ、慎重にと声を掛けあって降り続ける。5合目ぐらいからは足に力が入らず、踏ん張れない。
精神的にも疲れが出始め休み休みだ、私達だけでなく道を譲った若者もへばっている。長い樹林の道を歩き続け、入山ボックスを見つけた時はほんとうに嬉しく、キャンプ場の水道で顔を洗って人心地がついた。
晴天を狙い、あわよくば小屋に泊まって夕日やご来光をと思っての羊蹄山。
日帰りになってしまったが、素晴らしい大展望に恵まれた山行になった。登り4時間半、下り3時間、素晴らしかったが正直疲れた。
昨年より今年、今年より来年と確実に老いは来る。
でも歩き様によっては、まだまだ楽しめると思う。まっかり温泉に浸かりながら、歳に合わせた山歩きでこれからも色々な山を楽しめるように念じた。
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