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プロローグ
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山頂まで管理道路が走っている紋別岳を歩くことにした。
雪の状況は分からないのが、多分ツボ足で大丈夫だろうと足回りはスパイク長靴、スノーシューをザックに括りつけての出で立ちだ。
登山口までの道路は除雪された雪が道の両側にあるが、路面は乾いて走りやすい。
気温は以外に低く朝の最低は-9℃、 午前9時の登山口で-6℃、下山時は-4℃だった。雪は登山口ではうっすら、中腹で10cm位、山頂部は30〜60cm、吹き溜まりの深い所で1m弱、今の時期としてはまずまずの積雪でまだ笹の頭が出ているがお正月を過ぎればスキーもOKではなかろうか。
歩く管理道路から樽前山が日差しを受けて端正な姿を見せている。
管理道路C450m付近からの樽前山と風不死岳
この数日の間に訪れた人のツボ足のトレースが残り、雪が深くなる山頂部では利用させていただくが大柄の方なのか短足の私には歩幅が合わず苦笑い。
C600m位から紋別岳の山頂が見え出した。
雪化粧はしているが、冬の気配が感じられない優しい雰囲気の紋別岳である。
何時もは怖さを感じる山頂から南に落ちる雪崩斜面も優しい雰囲気で、今日は降りてみようかと言う気になってくる。
下りは、左上の雪崩防止フェンス(緑)から真っ直ぐ手前に降りた
晴れていた空に雲が次第に多くなってきた。
枝越しに苫小牧沖の太平洋がオレンジ色に光っているのが印象的。
どんな光の加減になっているのだろう?
オレンジに光る太平洋 手前の光は支笏湖の水面
夏とは違い、雪に覆われた斜面には花などの彩りはない。
それだけに落ちている「ツルアジサイ」の枯れた花がらも愛おしく可愛い。
ツルアジサイの枯れた花がら
ゆっくり2時間掛けて山頂へやってきた。
見渡すと北の札幌方面は青空も覗いているが、恵庭岳から樽前山にかけては背の低い黒雲に覆われ雪が降っているようだ。
太陽と雪雲のせめぎ合い、この時間は雪雲の威勢が良い。頑張れ太陽!
恵庭岳を襲う、背の低い雪雲
太陽の頑張りを期待して少し山頂で待ってみることにした。
熱いコーヒーで体を暖めながら、菓子パンを口にする。
千歳や恵庭方面は晴れているがぼんやり霞んでいてスッキリしない。
札幌方面は青空、山々もよく見えた。
紋別岳山頂は、時折曇るけれど日差しもある。
だが、ジッとしていると寒い。
カメラのセッティングを変えようと薄い手袋になると指先がジン・ジンしてくる。
多分、-10℃位なのだろう。そうこうしている内に太陽と黒雲との真剣勝負、太陽の勢いが増して雪雲を追い払い始めた。
「良いぞ〜! 頑張れ!」
黒雲を払い除け、姿を見せ始めた恵庭岳
視界が開けてくる勢いに、管理道路ではなく見晴らしが期待できる南東に延びる斜面を下ることにした。
スノーシューを履き、山頂を後にする。
まだ締まっていない雪、笹の落とし穴に時折スボッ!と埋まりながら雪崩防止フェンスが設けられている急な斜面を下りだす。雲はどんどん薄れ、視界は良くなってきた。
思わず立ち止まり、みるみる良い方へ変化していく景観に見入る。
重い鉛色だった湖面が支笏湖本来のブルーを取り戻していく。
恵庭岳がしっかり姿を現し、支笏湖も本来の色に。
樽前山と風不死岳もやや霞み加減だけど、姿を見せ始めた。
雪雲は退散し、太陽の勢いがますます強くなっている。
良く見ると「天使の梯子」が雲の隙間から支笏湖の湖面に延びている。
眩いばかりに輝いているのは、天使たちが支笏湖へ降りてきたり天上へ登ったりして遊んでいるからかも・・・。
広がる支笏湖、雲の隙間から光の帯(天使の梯子)が湖面に延びている
振り返ると先ほどまで居た紋別岳山頂が通信アンテナを誇らしげにそびえている。
紋別岳山頂
丹鳴岳も雪雲から抜け出し、恵庭岳とハーモニーを奏でている。
白老岳はまだ雲の中だ。
恵庭岳と丹鳴岳(左)
雪が安定している時のみ立ち入れる雪崩斜面からの景観を堪能し、急な斜面をスノーシューを滑らせながら慎重に降りる。
青空が眩しいほどになってきた。
急斜面を慎重に降りる
尾根状の斜面から谷へと移り、谷に沿って下るとC660m付近で管理道路に出てからは、淡々と登山口まで降りてきた。
支笏湖周辺の山の積雪は概ね平年並みのようだ。
この冬も健康管理に留意しながら、雪山を楽しめたら良いなと思う。この日の紋別岳は、太陽と雪雲のせめぎ合いが目の前で展開し、その目撃者になれたのは幸いだった。
なにより最後に太陽が勝ち、支笏湖本来の美しさを堪能できたことが嬉しかった。