風不死岳山頂から恵庭岳を望む
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風不死岳(北尾根ルート)
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この日目覚めると霧っぽく曇っている、新聞に目を通していると霧は晴れ青空が見え始めた、風も穏やかそう。
急遽ザックにいつもの装備を放り込み、カミさんに風不死岳か恵庭岳に行くと言って家を出る。支笏湖へ向かう道路は圧雪の上を薄いアイスバーンが表面を覆っていて、すごく滑る。
事故など起こしたら大変、慎重に「急」の付く動作を避けての運転だ。
思いは同じらしく、行き交う車も皆慎重に走っている。風不死岳北尾根登山口への取り付け道路は除雪されていない、100mほど美笛側に7〜8台分の駐車スペースが設けられている。
到着すると一組の若いカップルが登山準備をしていて、私がモタモタしている間に取付道路経由で出発していった。
準備を整え、真っ直ぐショートカットしたら登山口でカップルと一緒になった。ラッセルを交代しながら行きましょうと同行をお願いする。
幸いなことに昨日のものと思われるトレースがしっかり残っていてありがたく利用しながらの山行である。
見知らぬ人との同行山行は一昨年の漁岳以来かもしれない。
若いカップルだしジジイが一緒では面白く無いだろう、こちらも遠慮したい気分でもあるが、楽をしたいという気持ちが勝ってお二人の後を遠慮がちに付いて行く。
若いって、本当にすごいし素晴らしいな。
スタスタ軽快に登り、バテるという不安は彼らの辞書には載っていないようだ。
私にもかつては牡牛(ブル)と言われた時代があったのを思い出した。気温は-10℃位、決して高くはない温度なのだが汗が噴き出してくる。
体調が悪いのか、彼らのペースが早いのか、それともアテられているのか?周囲に面白いものがあれば写真を撮りながらが最近の私のスタイルだが、その余裕はない。
時には自分をいじめてみるのも面白いと、ひたすら彼らの後を付いて行く。
風不死岳北尾根は一本調子の登り尾根だ。
6合目から斜度が強くなり、C950mからはもう一段斜度を増して山頂へ続いている。
そして7合目からは風が強くなって震え上がるのが常で、雪が氷と化すことも少なくない。ところがこの日は無風で日差しもあり、雪も適度に締まって最高のコンディション。
風不死岳の神様は、若い二人を歓迎し祝福しているかのようである。振り返ると鏡のような湖面を見せている支笏湖に紋別岳が映えている。
6合目付近から見る紋別岳と支笏湖
大沢からの合流地点を過ぎ一登りすると急な斜面が現れ始める。
夏場は短いロープを頼りに簡単に登れるが、冬はロープが埋まっていて頼れない。二人がどう登るのかと聞いてくる。
「まっすぐ直登! 無理なら少し右を巻き気味に、左は絶対ダメ」
しばらく躊躇していたが、意を決して無理やり直登し乗り越えた。私はここでスノーシューからアイゼンに履き替える。
少しでも安全に楽にだ。
ピッケルを差し込み、アイゼンを蹴り込めば体力を使わなくても楽勝だ。難所を乗り越えた彼らが歓声をあげている。
恵庭岳や紋別岳方向の展望が素晴らしい。
9合目付近からの大展望
恵庭岳が雲を被って頭を隠しているのが少し残念だ。
その後幾つかある急斜面を無事乗り越え、山頂部へ飛び出した。
冬の風不死岳山頂は3年ぶりである。
快晴無風で暖かく真冬とは思えない風不死岳の山頂。
「お疲れ様! ありがとう」と声をかける。
風不死岳山頂から樽前山
お二人も嬉しそう、聞けば風不死岳は勿論だが冬山の登頂は初めてとのこと。
彼らの体力・能力からビギナーズラックとは思わないが、冬山はこんなに簡単で楽だと甘く思わないで欲しいと内心思った。風不死岳からのご褒美は何と言っても大きく広がる支笏湖ブルーの湖面と恵庭岳などの山々の景観である。
今日は無風で湖面が鏡のよう、こんなに美しい支笏湖は何年ぶりのことだろう。
山頂からの支笏湖と恵庭岳などの山々
遠く羊蹄山や尻別岳なども見えているが、わずかに霞んでいるのが惜しい感じだ。
恵庭岳の山頂に雲が纏わりつき、ホロホロ山・徳舜瞥山にも薄い雲が漂っている。
夕張山系や日高山脈は残念ながら殆ど見えない。
丹鳴岳やフレ岳、漁岳などもよく見えている
温かいコーヒーと菓子パンでお腹を満たす。
樽前山の東峰山頂に登山者らしき影がゴマのように見えている。恵庭岳の山頂を覆っていた雲が取れ始め、三人で声援を送る。
恵庭岳 もう一息で雲も取れそう
山頂を覆っていた雲も取れ、スッキリした姿を見せた恵庭岳
冬山の山頂はいくら景観が素晴らしくても寒さでそそくさと立ち去ることが多いが、この日はマッタリといくらでも寝そべっていたい気分。
写真を撮ったりおしゃべりしたり30分ものんびりし、下山することに。
元気と体力で登り切っても、下りはそれだけでは難しい。
登りで苦労した難所、若い二人も結構苦労している。
ロープを持って来なかったので上からストックを差し出し、支えにして降りてもらう。夏道のロープ場を下れば、一安心。
彼らは持参の尻滑りボードで滑り降り、私がデポしてあったスノーシューを回収し履き替えている間に見えなくなった。
尻滑り、その手があったか。次回からの参考にさせてもらうことにしよう。その後はマイペースでのんびり北尾根を下った。
登山口へ戻ると既に彼らの姿はなかった、私が遅いのだから致し方無い。
挨拶は出来なかったけれど、これからも山や自然に親しんで欲しいと思った。
この時期、支笏湖温泉では毎年「支笏湖氷濤まつり」が開催されている。
大して興味もないし混雑するので毎年素通りしていたが、ふと寄り道しようという気になった。夕暮れまでたっぷり時間があるので支笏湖休暇村で入浴。
汗をしずめラウンジでコーヒーをご馳走になり、日没を待って会場に出向いた。
ちょうど風不死岳の横に太陽が落ちるところだった。
風不死岳の横に落ちてゆく夕日
連休も終わった時期で比較的会場は空いていた。
日没から暗くなるまで色とりどりに電球に照らされた氷像を眺め、祭りの表情を写し撮った。
その幾つかを御覧ください。
氷濤まつり会場
氷のトンネルには、魚が氷漬けになって陳列
ライトアップされた氷像 空には月が
色とりどりの照明をされた氷像