春の妖精の代表格、カタクリ
今年のお天気は一体どうなっているのだろう?
冬は例年になく寒さが厳しかったし、雪も多かった。
春になるのも遅く、GWが終わったというのに雪が降り、ストーブも焚きっぱなしだ。
お陰で計画していた山も悪天で皆中止、自宅周辺をお散歩して気分を紛らわすしかなかった。それでも「朝が来ない夜は無い」の例え通り、足取りは鈍いが着実に春はやってきて可憐な花々を咲かせはじめた。
待ちわびていた春の妖精たちの到来だ。
ヨーロッパでもスプリング・エフェメラルと呼んで大事にしているという。花を愛でる。
全国各地で多くの人々が花を待ち望み愛でているけれど、北国の人の思い入れには特に深いものがあると感じる。
半年近く雪と寒さに耐え、春を、緑を、花を、待ちわびていたからだと思う。
散歩道の傍らで、ご近所の庭先で、近くの林や小川のほとりで、行き交う人達が微笑みながら花々を見入っている。
私達ももちろんその中の一人、散策しながら撮った春の妖精たちの姿をご紹介したい。
雪が溶けるのを待ちきれず雪を押しのけ出てくるのは、スノードロップ、クリスマスローズ、フクジュソウ、フキノトウなどである。
スノードロップの可愛いスズランのような花を見つけると寒さの残る雪にしゃがみこんで「よく来たね」と愛でるのが日課となる。
クリスマスローズは白以外の色をお土産にやってきてくれる。
フキノトウの浅緑色は目にも心にも新鮮だ。そしてお腹にも・・・。
流れの畔に顔を出したフクジュソウ
フクジュソウは春の陽光をたっぷり貯めた金色の盃だ。
華やかな色に惹きつけられ、毎年同じような写真を撮ることになる。
光を集める金色の凹面鏡
律儀に夕方になると花を閉じ、朝日を受けると開きだし一日中太陽を追いかけている。
開きかけのフクジュソウ
スプリング・エフェメラルで外すことの出来ない花、「エゾエンゴサク」。
赤紫、青紫、紫、白と色の変化の多い妖精である。
私はそれらの中でも水色・青の花が清楚で好き。
形も良く見ると不思議な姿をしていて飽きることがない。
水色のエゾエンゴサク
林の中に群れ咲くエゾエンゴサク、色の変化を見ているだけでも時間の経つのを忘れるほどだ。
逆光に透き通って輝くエゾエンゴサク
少し茎を寝かして斜めに立っている花が多いのだが、すっと立ち上がっている姿も清々しくて気持ち良い。
えこひいきする気持はないのだが、どうしても好きな青の花の写真が多くなる。
この色の花が好きだな〜
スプリング・エフェメラルは皆可憐で可愛い。
そう感じるのは小ささ故のことかもしれない。
花が10cmを越えるような大輪だったら妖精とは感じにくいだろう。その中でも小ささでは、キバナノアマナは引けをとらない。
いつもはその小ささ・可憐さを表現するため群れ咲く姿を写真にするのだが、今回はキバナアマナの花の魅力に迫ってみた。
キバナノアマナのシベには花粉がいっぱい
花芯を浮かび上がらせると可憐というより妖艶ささえ感じる絵になった。
これではキバナノアマナのイメージが壊れてしまうかな?
キバナノアマナ
ピンクの妖精の代表格といえば、やはりカタクリだろう。
優しげな色合い、優美に舞い踊る姿は、まさに春の妖精だ。山肌一面をピンクに染めて群生する絵を新聞やTVで毎年のように見る。
残念ながら私の家の周囲には自生のカタクリが咲いている所はないので、我家の庭のカタクリで・・・。
群れ咲くより一輪が気品を感じる
我が家のカタクリは30年近く前に一株頂いてきたものだが、今はすっかり土にも馴染んで数カ所に種が飛び、毎年美しい姿を楽しませてくれている。
株も大きくなり、毎年楽しませてくれる。
優雅に舞い踊るような姿を意図して撮ってみた。
白い春の花は種類も多い。
アツマイチゲ、キクザキイチゲ、ニリンソウ、セツブンソウなどの仲間だ。今年はアツマイチゲは咲き始めの時期を見逃し、少し盛りを過ぎた花しか見ることが出来なかった。
キクザキイチゲやニリンソウは、本HP作成時点でまだ咲いていなかった。
少し盛りを過ぎている アツマイチゲ
でも今回、白い妖精として取り上げたかったのは、オキナグサ。
オキナグサというと紫が一般的だと思うが、白いオキナグサを見つけた。
蕾〜開きはじめの花は、まさに白い妖精。不思議な魅力いっぱいだ。
白いオキナグサ
産毛のような毛を密生させ陽光に輝いている姿は気品や清楚さを感じさせるが見方によっては妖艶でもある。
葉にも茎にも花にも産毛が密生している
紫の花とは色が異なるだけで大きさも形も同じであるが、受ける印象は全くと言って良いほど違っている。
でも妖精というには少し大きく艶かしいかな?
私達の散歩コースは幾つかあるが、いずれも住宅地から離れた土の道や信号の少ない道ばかり。
そんな散歩道の光景も紹介しながら、春の妖精たちをもう少し見ていきたい。家から5分も歩くと住宅地から離れ、アツマイチゲやエゾエンゴサクの咲く小さな林の中を行く。
白樺の多い、気持の良い道だ。
白樺の多い、小さな林に通じる道やがて湧き水を集めた小さな流れに出る。
バイカモなどが茂る小さな流れ
この流れの周辺は、以前湿地帯だった所でミズバショウが群生していた。
水路工事で湿地帯は姿を消したが、今も乾いた地面に点々とミズバショウが咲き出している。
流れに咲くミズバショウは絵になるが、ここのは乾いた地面から茎を伸ばし花を咲かせていて少々可哀想。
見方を変えれば、逞しいというか・・・。
林の中に花を咲かせるミズバショウ
流れの脇を、林を眺め、山菜の生育具合をC'Kし、鳥の声を聞きながらしばらく歩くと、畑地帯が広がっている。
まだ気温は低いが、農作業は始まっていて何台ものトラクターが畑を耕している。
広い畑地帯が続く
畑の牧歌的風景、ひばりの鳴き声とのどかな田園地帯。
時折新千歳空港に着陸する航空機の爆音が響き渡る道をしばらく行くと、また別の流れが。
流れに沿って歩くと土手にはツクシの林、フキやコゴミもたくさん採れる。やがて流れの音が大きくなる、大きな木の切り株に水の流れが激しくぶつかり男性的な景観だ。
大きな切り株、泡立つ流れ、瑞々しい草の緑が印象的
のんびり歩いて約1時間半、幾分お腹も減って家に帰り着く。
玄関前にはスプリング・エフェメラルには数えられないが、チヨノドクサやヒマラヤユキノシタなどが出迎えてくれた。
チヨノドクサ 欧米では「雪の輝き」と呼ばれているそうだ
ヒマラヤユキノシタ
家の周囲で見かける「春の妖精たち」をご紹介した。
これから5月、6月と花々が次々に可憐で美しい花を咲かせる季節。野に山に足を運び、自然の中に身を委ね、花々に囲まれて過ごす夢の様な季節がやってくる。
皆様、ご一緒に楽しみましょう。