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恵庭岳
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6/24(月)は「曇りがちでにわか雨も」という予報だったが、朝起きると抜けるような青空が広がり、居ても立ってもいられない気分。
あいにくカミさんは病院の予約があるので一緒の山行は無理、行くなら涼しいうちに登りたいと朝食もそこそこ家を出る。何処へ行こうか?
樽前の花も前回から20日経ったので、様子も変わって良いのでは?
風不死岳も良いかな〜?
徳舜瞥山・ホロホロ山まで足を伸ばすか?
など考えながら支笏湖へ。
見ると、恵庭岳が支笏湖の後ろにスックと佇んでいる。
「よ〜し、恵庭岳にしよう!」恵庭岳の登山口、今日の一番乗りだ。
公衆電話ボックスのようだった登山届記入所は取り壊されて、簡素な入林ボックスが置かれていた。
出発しようとすると車が入ってきて2名の男性が降りてきた、同じようなことを考えて恵庭岳に来たのかしら?
第1展望台までは見通しの効かない樹林帯の道。
3合目付近から傾斜が増し、5・6合目は急登の連続、足場が脆い所も多いので慎重に歩く。
樹林帯ではあるが日差しが強く気温も上がり暑い、とにかく暑い。
意識してゆっくり歩くのだが、湿度も高く、汗は滝のよう。
すっかり北国の気候に慣れ、暑さには弱くなっている。
あまりの暑さに、ボ〜としてくるほどだ。熱中症にでもなったら大変と水を飲みながら歩くが、飲んだ水分は汗となってすぐに発散していく。
ミヤマハンショウヅルが沢山咲いていた所で、休憩を兼ね写真タイム。
この花は赤紫が多いと思うのだが、恵庭岳のミヤマハンショウヅルは赤みが薄く紫色に見える。
樹林帯にはこの他にササバギンラン、マイズルソウ、ズタヤクシュ、タニウツギなどが咲いていてツバメオモトやサンカヨウの花は既に終わっていた。
追い付いてきた中年男性2人も、暑くてたまらないとボヤいている。
ミヤマハンショウヅル
第1展望台手前はロープが長く設置された急坂、登り用と下り用の道が作られている。
ロープに頼りすぎると、最後は疲れて腕に力が入らなくなってしまうほどだ。
ゆっくり確実に足場を確保して登りたい。
ロープ場のとてつもない急坂を登りきり少し進むと、急に視界が開け岩場に出る。
第1展望台である。風が吹き抜け、熱の溜まった体に気持ち良い。
正面には広がる爆裂火口と恵庭岳の山頂岩峰が、後ろには支笏湖がやや霞みながら穏やかに広がっている。
何度見ても、心癒される光景だ。
今日は湖面の中ほどにモヤのような模様が見える、何なのだろう?
広がる支笏湖 (東半分)
そして爆裂火口と山頂岩峰が迫力ある姿を見せている。
第1展望台からの山頂岩峰と爆裂火口
ここから見ても山頂岩峰の火口側は少し細くなっているような気もする。
やはり崩壊は進んでいるのか?
恵庭岳からこの山頂岩峰が無くなってしまったら、鼻のもげた天狗のお面みたいなものだろう。
なんとか今の姿を長く留めて貰いたいものだ。
第1展望台からは、爆裂火口に沿って巻くように尾根をたどる。
この道にはオオバタケシマランが目立ち、マイズルソウが純白の清楚な花をつけていた。
6合目付近に比べると傾斜はずっと緩み、時折見える展望を楽しみながらひと登りすれば第2展望台である。
一段と大きく迫力を増して見える山頂岩峰の姿にはたじろぐほどだ。
第2展望台からの山頂岩峰
爆裂火口の対岸越しに、支笏湖を挟んで風不死岳と樽前山が見えている。
こうして見ると、恵庭岳・風不死岳・樽前山の三つの火山が一直線に並んでいるのが実感できる。蛇足だが、恵庭岳と風不死岳・樽前山を結ぶ線上には火山構造線が走っていて、噴火活動や温泉の噴出現象が見られている。
丸駒温泉もそうだし、現在は廃業になったけれどオコタンにも温泉が出ている。
この線上の支笏湖底からも温泉が噴出しているそうで、そのせいで僅かな対流現象が起き不凍湖の要因の一つになっているそうだ。
風不死岳(手前)と樽前山(後ろ)
約20年前の地震で山頂岩峰の一部が崩れて以来、夏道から山頂への登頂は禁じられ第2展望台が仮の山頂とされていた。
今も展望台に山頂標識が設置され、山頂へ続く道にはロープが張られて「この先危険」の標識が設置されている。だが長い間大きな崩壊は起きていないこと、多くの登山者たちから立入禁止解除の要望があったことなどに配慮されたのであろう、立入禁止の措置では無くなった。
その理由の細部は承知していないが、いわゆる「自己責任で!」と云うことだと思う。今の時点で万一事故でも起きたら、それこそ永久に立入禁止になってしまうかも。
より一層安全に配慮しながらも、アルペン気分に浸りながら恵庭岳山頂に立てる幸せを感じたいものだ。
張られたロープをくぐり、道を進むと間もなく山頂岩峰の真下に出る。
迫力を感じる巨大な岩の塊、その岩に可憐なイワウメの群れがへばり付くように咲いている。右手に冬尾根の終点である大岩が見えてきた。
そして冬の大景観とはひと味ちがう素晴らしい景観が待っていてくれた。
冬尾根終点の大岩とオコタンペ湖・漁岳、羊蹄山などの景観
冬の景観はまさに荘厳の感じだったが、夏のそれは華やかで美しい。
ちなみに、冬の恵庭岳からの景観は
2011.2の恵庭岳山頂から見た羊蹄方向の景観
山頂岩峰を見上げ、その圧倒的な威圧感に打たれながら回りこみ、山頂へ至るルンゼを登る。
山頂岩峰を見上げながら
ルンゼからは登山道を登るというより、岩を攀じると云う感じになる。
慎重に三点確保で安全を保ちつつ、高度を上げていく。ルンゼを登り切ると右手の視界が開け、支笏湖がその全景を惜しみなく見せ、対岸には風不死岳と樽前さんの姿が。
懐かしくも美しい景観である。そして山頂へは高さ7〜8mの岩が行く手を塞いでいる。
以前は右手の爆裂火口へ身を乗り出すように取り付いて攀じ登ったのだが、今は正面にロープが2本取り付けられている。
どちらも同じような難易度で足場もあるが、初級者には確保が必要だろう。この岩場を乗り越えれば、待望の恵庭岳山頂へ飛び出す。
「お久しぶり〜!」
思わず声が出る、山頂へ至った達成感。
見回す景観の一つ一つにうれしさが込み上がる。
恵庭岳山頂からオコタンペ湖、漁岳(右)・小漁山(中央左)、遠くに無意根山や羊蹄山など
あまりの嬉しさに、やや霞み気味の羊蹄方向の山座同定に時を忘れていると、支笏湖に雲が湧き対岸が隠され始めた。
支笏湖に雲が湧き、対岸が隠され始めた
汗を拭き、腰を下ろして喉を潤す。
氷をいっぱい詰めてきたアイスコーヒーとグレープフルーツが体にしみわたる。オコタンペ湖が乳青色に陽射しを浴びて輝き、これだけでも冬とは違う明るく華やかな印象だ。
この小さな湖の湖水は陽射しによってエメラルド・グリーン色に近い時もあれば、コバルト・ブルーやミスティ・ブルーに見える時もある。
今日はどちらかと言えばミスティ・ブルーに近いだろうか?
乳青色に輝くオコタンペ湖
山頂標識の傍らに小さな小さなご神体が祀られている。
よく分からないが、お地蔵様かな?
皆さんの登頂のお礼、お賽銭が沢山置かれていた。
風雪に耐えた、ご神体
山頂には、可憐なイワヒゲやイワウメが岩にしがみつくように咲いている。
小さな群落だけど、みなとても可愛い。
恵庭岳山頂のイワヒゲ
イワウメも垂直に切り立った岩壁にしがみついて咲いていた。
怖くてとても近寄れない岩壁に咲くイワウメ
暖かく風もない気持ち良い山頂、大景観を眺め、花を愛で、お腹を満たし、至福のひととき。
これで視界がもっとクリアーで、支笏湖に湧いた雲がとれれば最高なのだが・・・。贅沢を言ったらキリがない、久しぶりの恵庭岳山頂で幸せな時を過ごさせてもらった。
下山も慎重に。
岩場は体を離し気味にしないと足場が見えない。足場を固め次の岩角をつかもうとした時、「おっ、ゴメン!」思わず手を離す。
高さ10cmにも見たない小さなミヤマオダマキが一輪、岩角に咲いていたのだ。
その一所懸命さに、愛おしささえ感じた。
小さなミヤマオダマキも必死に生きている
岩を下降し、ルンゼを慎重に降り、山頂岩峰の基部まで降りてきた。
岩の一部に分厚く苔が付き、その苔にイワウメが咲いていた。
少しでも生きられる環境があれば、命をつなぐ生命力の力強さにただただ感心するばかり。
岩に張り付く苔とイワウメ
山頂岩峰基部にはまだ雪の残っているところがあり、雪が溶けたところにはサンカヨウやシラネアオイが花をつけていた。
彼らにとってみれば、今が花の盛りなのだろう。
サンカヨウ
冬尾根の大岩へ戻ってきた。
大景観も見納め、もう一度と見渡すが羊蹄山などは雲に覆われ始め、姿を消していた。
オコタンペ湖も見納め
第2展望台に戻ると、数名の人が汗を拭いている。
雲行きがだんだん怪しくなってきているみたい、挨拶も早々に下山にかかる。平日なのに、何人もの人達とすれ違う。
やはり恵庭岳は人気の山なのだと再認識。第1展望台を過ぎ、ロープ場の下りを降りきった辺りから、ポツリポツリと降り始めてきた。
本降りとまではいかないが、しっとりと降ってきた。
雨着を着ても汗で濡れてしまう、どうせならこのまま濡れて行こう。4合目を過ぎ、もう間も無くと安心したのか足を滑らせ、岩にお尻を嫌というほど打ち付けてしまった。
幸い歩くには支障ないが、痛くてしばらく動けなかった。
最後まで注意してという、天の声だったのかも・・・。痛い目にあい、終わり良ければ・・・とはいかなかったけれど、今回の恵庭岳は久しぶりにアルペン気分を味わえ大景観にも出会えて、嬉しく大満足の山行となった。
2008.10の恵庭岳へ |