932m峰(ペウレ峰)からの樽前山山頂
例年だと5月初めに開通する樽前山登山道、今年は大雪や低温の影響で遅れに遅れ6/1にオープンした。
花の開花もそれなりに遅れているかも知れないが、今年の夏山シーズン初山として訪れてみることにした。千歳市街は早朝から濃霧、支笏湖はもっとひどいだろうと出発を少し遅らせる。
幸い、霧は晴れ始め7合目ヒュッテに着く頃には青空が気持ちよく広がった。
カミさんは痛めた腰を用心して冬山を敬遠していたので本当に久しぶりの山である。
時間を気にせず、のんびりゆったり樽前の景観と花を楽しもうと歩き出した。
ヒュッテから岩尾根に向かって樽前の中腹を歩く。
林床部は雪が溶けたばかりで、花芽も出ていないマイヅルソウがびっしり、オオバナエンレイソウが所々で白い花を咲かせている。
ベニバナイチヤクソウはまだ姿を見せていない。林を抜け、開けた溶岩地帯に出ると正面に風不死岳と932m峰(ペウレ峰)、右手には霧に覆われた支笏湖が見えてきた。
例年並みならこの時期、イソツツジやマルバシモツケが咲き始めているのだが今年は花芽が出始めた程度でまだまだ。花は2週間ぐらい先だろう。
霧に覆われた支笏湖
溶岩原からの932m峰 左は樽前山への斜面
ポツンポツンと小さな黄色いものが・・・。
良く見るとミネヤナギの花が陽射しを受けて黄色に輝いている。
余り目立つ花ではなく気付いても通りすぎてしまうような花であるが、良く見るとなかなか綺麗。
ミネヤナギの花
ウコンウツギが数輪、まさに咲きはじめたばかりの新鮮な姿を見せていた。
花の中央下部の赤い模様が黄色や薄いオレンジ色、まだ受精していない咲いたばかりの花である証拠だ。
ウコンウツギ
咲き出したウコンウツギ
溶岩原から風不死岳分岐への岩尾根には、シラタマノキが多いが花はまだ先のようだ。
お目当てのコメバツガザクラが姿を見せ始めた。
こちらはほぼ満開。蕾もあれば既に茶色に変色し始めたものもある。
岩尾根付近から振り返ると東の方向には、雲間から夕張岳と芦別岳が顔をのぞかせていた。
夕張岳(右)と芦別岳(左)
岩尾根付近から932m峰、樽前山9合目付近まで、コメバツガザクラで埋め尽くされている。
小さく可憐、白い花と赤い萼がよく目立つ。
コケモモに似ているけれど、花が壺形がよりはっきりしているかな?
コメバツガザクラ
小さな花だけど何百・何千と集まって咲くと、とても良い香りがあたりに漂い、幸せ気分。
本当は虫への誘いなのだろうが、私達を呼び寄せる力も持っている。「良い香りだね」
「甘い香りね、ちょっとシナモンが混ざっているような香りがしない?」
「よく分からないな、最近歳のせいか臭いに鈍感なんだよ」
コメバツガザクラ
同じ花なのに、日向に咲く花、日陰の花、岩に咲く花、土の花では、赤みが強かったり、青みを感じたり、色が少しづつ違うように感じる。
日陰のコメバツガザクラ
「確かにお米をまいたように見えなくないわ」とカミさん、
「そうだけど、コメバって葉の真ん中にはっきりした線があるだろう? それで葉がお米に見えるからだそうだよ」
「あら そうなの? 知ったかぶりして人に言わなくて良かったわ〜」
「ウン、今のは俺の知ったかぶりさ!!」
コメバツガザクラ
岩尾根からは花達に呼び止められ、遅々として足が進まない。
振り返ると支笏湖を覆っていた霧が流れ出している。余り見ない光景かも知れない?
支笏湖を覆っていた霧が、東へ流れ出していた
岩尾根から932m峰へ向かう、コメバツガザクラに混じってイワヒゲがほんの数輪咲き出していた。
イワヒゲ
ほとんどはまだ固い蕾、岩の南側で風を受けない温かい所の花が咲き出している。
この一群だけが満開状態だった。
932m峰への登りはやや急なザレ場が続く、滑りやすく歩きにくい。
ゆっくり休まずピークへ登り着くが、汗びっしょりだ。頑張ったご褒美か、932m峰は素晴らしい大展望をプレゼントしてくれた。
まずは、支笏湖の西側部分に羊蹄山・尻別山、その左手に白老三山とホロホロ山が並んでいる。
932m峰から北西方向の眺め
すぐ北には風不死岳が三つの偽ピークを並べて屹立している。
三つの偽ピークを見せる風不死岳、本当の山頂は中央左のピークの奥にある
樽前山をバックに記念撮影
これから歩く樽前山東峰への外輪山ルートもよく見えている。
樽前山東峰へ続く外輪山
麓を霧で隠したホロホロ山、なんとも幻想的な姿だ。
ホロホロ山
そして支笏湖は挟んで優雅な姿を見せている羊蹄山が素晴らしい。
支笏湖と羊蹄山
思いがけない素晴らしい大展望に酔いしれながら、おにぎりやドライフルーツ、温かいコーヒー、冷たい麦茶などをお腹に入れる。
暖かく風もない932m峰、のんびりしていると眠くなってしまいそう。
気合を入れて腰を上げ、樽前山へと足を進める。
932m峰から樽前山とのコルへ降り、コメバツガザクラを眺めながら東峰へ登っていく。
外輪山の稜線に立つとさすがに風は冷たく、汗ばんだ体に気持ち良い。
一方には雪が詰まった沢形を一方には溶岩ドームを眺めながら、ゆるやかな稜線を登る。
冬の直登ルートを見下ろすと怖いぐらいの傾斜に見える。
東峰へ続く稜線
右手の溶岩ドームは、黒光りする不気味な怪獣だ。
硫黄を吐き出し、噴気や水蒸気を吹き上げている。
何時見ても不気味な溶岩ドーム
東山山頂に来ると急に登山者が多くなり、何故か虫も多くなる。
虫が嫌なのでノンストップで東峰をやり過ごし、そのまま下山。樽前山の下りは緩やかなのだが、痛めている膝には下りが厳しい。
ストックを活用し、ショックをやわらげ降りていく。
とても若い時のように跳びながら降りるなんて夢のまた夢だ。今回の樽前山、期待していたコメバツガザクラは予測通り満開で堪能することが出来た。
他の花は例年より2〜3週間遅れている模様だが、蕾はタップリ持っていたしこれからが期待できそうだ。
この時期の樽前山は2週間おきに訪ねても楽しめる所、暇を見つけて楽しみたいものだ。
ヒュッテの管理人さんから聞いたのだが、最近樽前山でも鹿が多くなって食害で木が相当数やられているそうだ。
それだけでなくダニが鹿に一杯付いていて、異常なぐらいダニが増えているという。
休憩や昼食で座った後や、帰路車に乗る際には、必ずダニC'Kするのを習慣づけ被害に合わないよう注意したい。
病院で治療してもらうと、¥1000〜5000位必要ですよ。
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