空沼岳 (1249m)

道央   2013.7.19(金)   曇り

 


 

 

万計沼
湖面に木々の影を映し出す、朝の万計沼

 

 

・空沼岳

札幌と支笏湖を結ぶ山の連なりの中間付近にあるのが、空沼岳。

山頂まで片道7.7Kmと少し長いがさして急登もなく、沢あり・湖沼あり・森林深く・展望良しで、小屋もあり・花も楽しめると云う、手近でお値打ち感いっぱいの山なのである。

こんな良い山なのだが、登山道が泥濘がちなのが唯一の欠点。
口の悪い私などからは、空沼岳ならぬ泥沼岳などと呼ばれ親しまれている。
最近は飛び石状に切り株を埋め込んだりと道も整備されているが、雨上がりなどは靴を汚すのを覚悟で訪れたい。

 

・あれれ?

目覚めると素晴らしい青空が広がっている。
何処かに出かけないともったいないような青空だ。

すぐに思いついたのが、空沼岳。
最近、空沼岳自慢の展望に浴していないし、万計沼の静寂さにも浸りたい。

期待に胸弾ませ登山口へ向かうが、何やら雲が・・・。
登山口に着くと、すっかり曇って霧っぽい。

歩いている間は涼しいから丁度良い、きっとそのうち晴れるだろうと歩き出す。

 

・青い宝石!

歩き始めてほんの10分、鮮やかな青色が目に飛び込んできた。
咲き出したばかりのエゾアジサイ。

エゾアジサイ
エゾアジサイ

 

飾り花の青い萼が開きだし、本当の花は青い蕾のまま。
深い樹林の薄暗い光の中で、ひときわ清楚に美しく輝いている。

エゾアジサイ
花の蕾は色づいていないものも

 

朝一番から、良い物を見せてもらい気分が良い!
曇りで薄暗い深い森、静寂だけが支配している中、アオバトの物悲しい鳴き声がこだまする。

 

・心洗われる

万計沢や流れ込む支沢に、付かず離れずゆるやかに登っていく。
巨大化したミズバショウの葉に驚き、小さな湿原に心を癒し、歩くこと約1.5時間。
滝となって流れ落ちる万計沢の横を過ぎると、万計沼が静かに姿を現す。

朝のひんやりした静謐な空気の中、木々の影を湖面に映し、静まり返る万計沼。
あまりの静やかさに、言葉も無く、声も出ない。

万計沼には静かさが似合う、華やかさとは無縁な落ち着いた静謐の世界が・・・。

万計沼
ひっそり静かに佇む、万計沼

ちなみに光が当たった少し華やかな万計沼の表情を見て頂こう。
この日の帰路、撮影した同じ場所からの万計沼である。

皆様は、どちらの表情の万計沼がお好みだろうか?

万計沼
帰路撮影した、朝と同じ場所からの万計沼

 

私は静寂に包まれひっそり佇む万計沼が好きだ。
それも曇っていたり少し霧っぽかったりしている方が好きだし似合っていると思う。
気の合う二人か・少人数、出来るなら一人のほうが良い。

この朝は、私の好みが全て整った絶好の万計沼である。
もう少し、朝の静寂に包まれる万計沼の表情を見ることにしよう。

万計沼
鏡のような水面に木々のグラデーションを映す 万計沼

 

風もなく鏡のような湖面と曇り空の柔らかい日差しが、全てのものを優しく穏やかに包み込む。
木々や草も、万計沼と調和し協調して生きている。
そんな気がする、朝の万計沼である。


万計沼
上の写真の右手

 

木々の映り込みを見ていると、どちらが本物か、逆さまに見ても解らないほど。
水面に写っている方が、リアルに見えたりするから不思議である。

万計沼
木々が映り込む万計沼

 

万計沼の畔には山小屋が2軒あり、万計山荘は誰でも利用することが出来、ボランティアの方々のお陰で綺麗に整備されている。
トイレを借りたり、宿泊するときも、感謝し心して使いたいものだ。

万計山荘
清潔で良く手入れされた、万計山荘

 

・もういいよ〜!

万計沼からも樹林帯の中を泥濘に気を取られながら進んでいく。
泥濘を避けるため年々道幅が広がっているようにも感じられる、汚れるのが気になる人は私のように長靴で来るのが良いのではなかろうか?

やがて右手に真簾沼が見えてくる。
大きく開放的な感じの真簾沼は、万計沼とは逆に燦々と陽光を浴びた華やかな表情がよく似合う。
でも、この日は雲が湖面近くまで垂れ込め、明るさは無い。

真簾沼
雲が垂れ込める 真簾沼

 

そのうち晴れるだろうと思っていた霧っぽい雲は、意外にしぶとい。
時折薄日とも呼べない程度に明るさを増すが、すぐには解消しそうにもない。

万計沼には曇り空がよく似合うと言い、歩くにも曇り空のほうが良いと言っていながら、山頂からの展望も楽しみたい。
そろそろ晴れてくれないかな〜。

「太陽さん、もういいよ〜!」

真簾沼
華やいだ雰囲気が似合う真簾沼だが・・・。

 

真簾沼の脇に「龍神地蔵」が祀られている。
空沼岳からの水を糧としていた住民が、豊富な水と安全を祈って建立したものらしい。
地蔵様というより観音様とお呼びしたほうが似合いの優しいお顔をしていらっしゃる。

観音様
竜神地蔵様

豊かな空沼の自然が守られますように、山行を無事見守ってくださるように、お願いし参拝した。

 

・山頂は静か〜!

竜神死蔵様をお参りすると、急な沢形の斜面が待っている。
ここをやり過ごすと、台地状の平坦な所へ。
ここから空沼岳を望むことが出来るのだが、この日は雲に覆われている。

一旦緩やかに下り、稜線への急な斜面を登れば札幌岳への縦走路との分岐点だ。
この分岐手前の小さな沢型には雪が僅かに残り、サンカヨウが咲いていた。

サンカヨウ
サンカヨウ

 

札幌岳への分岐から南東へ10分も稜線を歩けば、空沼岳の山頂である。

約1年ぶりに立つ、空沼岳山頂は今回も雲の中。
一面の乳白色、山頂のハイマツや灌木、赤茶けた岩だけの残念な世界だ。

腰を下ろし、雲が晴れるのを期待しながらパンを口にする。
いつもは何処で見ているのか、食事をすると出てきておねだりをするシマリスも姿を見せない。
餌をくれない奴は、判るらしい。

幸い、雲の中でも寒くないし、濡れることもない。
南から吹き上がってくる雲の流れと霧に霞む森の木々を見ていると眠くなり、少しウトウト。

小1時間が立った頃、流れる霧っぽい雲に切れ間が出始め、青空と夏雲が見え隠れするように。
「頑張れ! 太陽!」

流れる下層の雲が取れ始め、霞ながらも景色が見え始めた。

景観
空沼岳山頂から狭薄山や無意根三山、羊蹄山などが見え出した

 

すぐ北西にある狭薄山がしっかりした姿を見せ、その向こうには喜茂別岳・中岳・並河岳などの無意根山系の山々、左には中腹から上を雲で隠している羊蹄山や尻別岳も確認できる。

一方、北東側は札幌市街地や藻岩山などの札幌近郊の山並み、ずっと手前には空沼岳登山口近くの砕石場が見えている。
深い森の中に赤い点が・・・。
万計山荘の屋根である。

札幌市市街
山頂から札幌市街方面、 写真中央の赤い点は万計山荘の屋根

 

南側の恵庭岳や支笏湖方面は、低い雲が取れず眺めることはかなわなかった。

登山口で一緒だったご婦人3名がやってきたので、丁度よいと入れ替わりに下山することに。

 

・花さがし

まだ時間は午前11時過ぎ、たっぷり時間もあるので花を見て写真を撮りながら帰ることに。

全般にこの時期、空沼の花はそんなに多くない。
その中で目立つのは、ハリブキである。
全身鋭いトゲだらけの恐ろしそうな風貌の持ち主だ。

ハリブキ
全身鋭いトゲだらけのハリブキ

 

目立つ花ではないが、ヤマブキショウマも点在している。

ショウマと名がつく花には、トリアシショウマ、サラシナショウマ、ヤマブキショウマ、モミジショウマなどが。
名は同じだが、トリアシとモミジはユキノシタ科、サラシナはキンポウゲ科、ヤマブキはバラ科で同種ではないのが面白い。

ヤマブキショウマ
ヤマブキショウマ

 

真簾沼まで戻ってきた。
下層に流れていた霧っぽい雲が取れ、夏雲が湧き出している。
陽光が降り注ぎ、真簾沼らしい明るく開放的な表情を醸し出していた。

真簾沼
夏雲湧き立つ 真簾沼

 

シダの仲間も沢山生えている。
あまり気にしたことが無いのだが、子供と思われる小さく色々な形をした葉がいくつも伸びている。
幼葉と云うのか子葉と云うのか分からないが、面白いので撮ってみた。

シダの子供
シダの子供?


ベニバナイチヤクソウが万計山荘の近くで咲いていた。
珍しくもない花だが、空沼岳ではこの一箇所だけ咲いていた。

ベニバナイチヤクソウ
ベニバナイチヤクソウ

 

 

ベニバナイチヤクソウ
ベニバナイチヤクソウ

 

・再び万計沼へ

花を楽しみながら、万計沼まで戻ってきた。

雲も多く晴れとはいえない状態だが、朝に比べると弱いながらも日差しもあり明るい表情の万計沼だ。
風は弱いけれど、ゆらぎのような小さな波紋が木々の映りを妨げている。
それはそれで、面白く良い表情だ。

その違いをページトップの写真と見比べてほしい。

万計沼
昼下がりの万計沼

 

夏の雲が発達し、沼にも夏らしい雰囲気が漂う。

万計沼
夏雲と万計沼

 

・淡々と・・・

万計沼を後に、淡々と山道を下る。
ハナニガナが鮮やかな黄色を道端に振りまいている。
ニガナの類は良く見ると、なかなかかわいい表情で好きだ。

ハナニガナ
ハナニガナ

 

流れの傍の湿った場所にはオニシモツケが小さな花を密生させ咲いている。

オニシモツケ
オニシモツケ

 

流れの傍の大木の脇に知らない花が可憐な花をつけているのを見つけた。
高さ15〜20cm位で、大きさ5mm・長さ2.5cmほどの紫の花をつけている。
ミソガワソウかと思ったが、どうも違うようだ。

調べてみたら、エゾタツナミソウ(シソ科)であった。
山林に自生し、野幌森林公園などでも見られるそうだ。

知らない花
知らない可憐な花が

 

万計沢に流れ込む小さな流れにも、見れば捨てがたい雰囲気や表情が幾つも・・・。
山を歩くのが大変になったら、こんな光景を探し求めるのも良いかな?

渓流「
苔と流がマッチして良い雰囲気を・・・

 

そして登山口近くの薄暗い所には、オオウバユリが咲き出していた。
この花は綺麗で色気もあるのに、そんな目立たない所が好きなためか、花が咲く頃には葉(歯)が無いことが多いためか、姥などと名を付けられちょっぴり可哀想。

オオウバユリ
オオウバユリ

 

・やっぱり良い山!

早朝の素晴らしいお天気に誘われて訪れた空沼岳。
期待に反して雲に覆われ大展望は得られなかったが、静かに佇む万計沼の味わい深い姿に接することが出来、心が洗われた気分になった。

この日、平日にもかかわらず5パーティ・9人ほどの人たちに出合った。
やはり人気の山なのである。

空沼岳はやっぱり良い山だ。
でも、次に訪れるときには透き通った大展望を見せてほしいな!

 

 

 

 

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