大雪・花めぐり

大雪   2013.7.1(月)〜7.2(火)   

 


 

トムラウシ
白雲岳避難小屋から、夕方の高根ヶ原とトムラウシ山

 

大雪の山

「北海道の屋根」と称される大雪の山々、北海道の山の標高をC'Kするとそのベスト10はすべて大雪の山々が占めている。
旭岳、北鎮岳、白雲岳、後旭岳、比布岳、安足間山、間宮岳、荒井岳、小泉岳、北海岳である。

大雪は大きく表大雪、北大雪、東大雪、十勝連峰に分けられ、その規模は東西約60km、南北約65Kmで神奈川県とほぼ同じ広さだ。

だが一般的に大雪山と言うと、表大雪の御鉢平を中心とした標高1800m〜2300mのエリアを指すようだ。
その広いエリアになだらかで優しい姿の山々がゆったりと聳え、のんびり散策を楽しめる日本最大の高山帯なのである。

高山帯と言うと北アルプスなどでは標高2500m〜3000mを指すけれど、北海道では標高1700m位からが高山帯でお花畑、言い換えれば日本最大のお花畑が広がるエリアなのである。

また、小泉岳〜緑岳にかけては山岳永久凍土地帯が、周辺には氷河の痕跡であるカール地形が残る貴重なエリアでもある。

チョウジソウ

 

超・嬉しいこと!

今年秋に古希を迎える私、春に高齢者の仲間入りをしたカミさん、この二人にとって今年は嬉しい年になりそうだ。
それは体調が良い方に回復したことに起因している。

3年前の6月に腰の椎間板ヘルニアの手術を受けたカミさん、手術は上手くいったと云うが1年目は腰に力が入らない不安定な状態が続き、散歩や自転車の乗ることも満足に出来なかった。
2年目はまだ不安が残ったが、特製のサポーターを付ければ長めの散歩や軽い山歩きが出来るようになり、3年目の今年は本人の不安も解消され散歩や近場での山歩きでも手術前と変わらぬ位まで回復した。

一方私も昨年は冬から夏にかけ首と膝に強い痛みが続き不安と痛みで精神的にも参っていたが、今年は痛みも軽減しあまり不安を感じなくなった。

ややもすると鬱鬱としていたこの3年間を取り戻すべく、今年は活動的に過ごしたい。
大いに楽しむプランをひそかに練リ始めていた。

ツボサンゴ

 

楽しむプラン作り

今年を楽しむプラン作り、まずは夏までの計画である。
残雪のニペとピパイロを訪れ、その勇姿と固有の花を心ゆくまで楽しむ2つの計画。
そして久しぶりに大雪と訪れ、花めぐりを楽しむプランの計3案。
それぞれテントを担いでのんびりゆったり楽しむ計画だ。

準備も体制もしっかり整えたのだが、ニペとピパイロの目安としていた6月始め〜中旬のお天気が安定しない。
そうこうしている間に、前2案に関しては見頃の時期を逃してしまった。

大雪の花めぐりだけでもしっかり楽しみたい。
天気予報とにらめっこ、平日登山隊の特権を生かして混雑するであろう土日は避けたい。
ようやく楽しみが実現したのは、7/1(月)〜7/2(火)になっていた。

「大雪・チンタラ花めぐり」実現の日がやってきたのである。
概ねの行動予定は、黒岳から北海岳・白雲岳を歩き白雲岳避難小屋で一泊、翌日緑岳から小泉岳を歩いて北海岳に戻り、お鉢平を一周して北鎮岳・黒岳と廻るものである。

この計画で主役は花、気になる花を見たり写真を撮るのは時間無制限。
歩くコースは二の次という、チンタラぶりなのである。

 



 

 

 

「大雪・チンタラ花めぐり」 1日目

 

烏帽子岳

 

1.黒岳へ

 

・じぇ・じぇ! 大丈夫かい?

朝、層雲峡の黒岳ロープウエイ乗り場に行くとすでに50人ほどの人が列を作っている。
お天気も良いだけに私達と同様、花や景観を楽しみたい人が集まっているのだ。

ロープウエイとリフトを乗り継ぎ、黒岳7合目へ。
展望台でしっかり準備を整える。
その眼前には朝日を浴びたニセカウがスッキリした姿を見せていて、山を歩く気分が俄然高まってくる。

ニセカウ
ミヤマキンホウゲが咲く向こうに、端正なニセカウが佇んでいた

 

雪渓もまだ大分残っているだろう、カミさんには6本爪の軽アイゼンを。
少しオーバーかと思うが、腰への不安を少しでも軽くする一方だ。
私はこの時期の定番、スパイク長靴だ。

歩き出すとすぐにかなりの大きさの雪渓、しっかりしたトレースが付いているが歩き始めでもあるので足慣らしを兼ね、意識してゆっくり慎重に登っていく。

雪渓
かなりの斜度の雪渓を慎重に登る

 

この最初の雪渓が一番大きく斜度も強い。
8合目の少し下まで続き、ジグを切りながら直登していく。
これをやり過ごすと、斜度も緩み黒岳の中腹をトラバースするように山頂へと登っていく。

雪が切れた登山道脇には、花達が綺麗に咲いて出迎えてくれる。
ショウジョウバカマ、エゾノイワハタザオ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、カラマツソウ、自生のクロユリも咲いていた。

エゾノイワハタザオはまとまって咲いているので目立ち、なかなか清楚で美しい。


エゾノイワハタザオ

 

ショウジョウバカマは8合目の少し下付近に多く咲いている。
大雪のショウジョウバカマは、やや地味な紫の花だけで赤やピンクのものは無いようだ。
雪が溶けたばかりの湿った場所を好んで咲いている。


ショウジョウバカマ

 

カミさんの顔色が青白い、少し気分が悪く吐き気もするという。
「じぇ・じぇ! 大丈夫かい?」

8合目にあったベンチに座らせ、荷物をおろし衣服をゆるめ、楽にさせる。
どうも朝一で食べたバナナが良くなかったみたい、おまけにスポドリを薄めた水も気分が悪い時には良くないようだ。

時間はタップリある、周囲の花や景観に自然と目が行くまでゆっくり休ませる。
ベンチを長い時間、占領してしまって皆さんごめんなさいね。

咲いていたハクサンイチゲが励ましてくれているようだ。


ハクサンイチゲ

 

約20分近く休んだだろうか?
顔色も良くなったみたいだし、笑顔も出てきた。
様子を見ながら、超ゆっくりペースで行くとしよう。

ミヤマキンポウゲが風に揺れながら、頑張らず身を任せて行けば大丈夫と励ましている。


ミヤマキンポウゲ


・マイペース!

カミさんの気分が回復するのを待っている内に大半の人は通り過ぎ、近くには同年輩の縦走装備のご夫婦と奥様がカメラに夢中のご夫婦だけになっている。

列を作って登る必要もないし、気分が可怪しくなりそうになったらすぐに休むと云う条件で歩き始める。
ややもすると早くなるカミさんに「ゆっくり・マイペース!」と後ろから声をかける。

雪渓
黒岳山頂を見ながら

 

チシマノキンバイソウが黄金色に輝く大きな花をひときわ目立たせ咲いている。
シナノキンバイソウと呼ぶのだと思っていたが、北国で信濃は無いだろう。
ただチシマキンバイと言うと違う花になってしまうから気をつけねば・・・。


チシマノキンバイソウ

 

真紅の濃い色のハクサンチドリをカミさんが見つけ、見入っている。
花に目が行くようなら、もう大丈夫。一安心だ。

それにしても濃い色のハクサンチドリだな〜。

ハクサンチ
真紅のハクサンチドリ

 

猫岩の近くまでやってきた。
カミさんも思い出したらしく、「黒岳はもうすぐよね」。
だからといって、頑張るんじゃないぞ!

猫岩
猫岩の近くまでやってきた

 

カラマツソウが多くなってきた、咲き出したばかりで多くがまだ蕾のままだ。
薄い赤紫の蕾から開き始めると色が薄くなり、やがて純白の花になる。
目立つ花ではないが、惹きつける魅力を隠し持っている花。


カラマツソウ

 

・凄いぞ! これぞ大雪!

賑やかな話し声が聞こえ始め、階段状の道を登り詰める。
黒岳山頂に飛び出した。

そこに待っていたものは・・・。

黒岳山頂
黒岳山頂から白雲岳を見る

 

青い空、白い雲、新緑の緑、残雪の白、たおやかな山並み、そして透き通った爽やかで冷たい空気。
これぞ大雪! 大景観だ。

見慣れているはずの白雲岳も新鮮に映る。

お鉢平を取り囲む山々の残雪も何時もよりずっと多く感じられる。

北鎮岳
黒岳からの景観
中央にあるお鉢平を取り囲む、左から北海岳、正面が間宮岳、右は北鎮岳

 

カミさんの体調を確かめる。
吐き気は治ったようだが、足が攣るような感じがすると云う。
やはり体調が完全ではないようだ。

時間はタップリある、決して急がず、無理な体制を取らないよう意識して歩こうと約束。

黒岳山頂にはイワヒゲやメアカンキンバイが登山者たちから身を隠すように岩陰にひっそり咲いていた。

イワヒゲ
イワヒゲ

 


メアカンキンバイ

 

黒岳山頂では多くの人が歓声を上げ景観を眺め、おやつを食べ、大雪を満喫している。
ここから引き返す人、石室まで足を伸ばす人が殆どで、お鉢廻りをする人は僅かなようだ。
人それぞれ、楽しみ方も色々あって良いはずだ。

途中まで前後しながら歩いていた縦走のご夫婦も山頂に着いた。
岡山からやって来て、トムラまで縦走するという。
人のことを言える立場ではないが、足取りを見ていてちょっぴり不安を抱かせるご夫婦なのだ。
ま、私が余計なことを云うより実際に歩いてみてご自身がどう感じるかによって以後の行動を決めても遅くはない。

 

 

 

「大雪・チンタラ花めぐり」

1日目 その2へ

 

 

 

 

inserted by FC2 system