美利河丸山から羊蹄山、ニセコ連山を望む
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・美利河丸山
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この日早朝、私達は雄鉾岳登山口に居た。
前回雄鉾岳を訪れた時は登頂こそ出来たものの、低い雪雲に覆われ展望はおろか山容も見ることが叶わなかった。
そこでお天気の良い時再訪して、展望を楽しみ・凛々しい雄鉾岳の岩壁をこの目で見てみたいと思ったのだ。所が、八雲町営温泉を過ぎて雄鉾岳登山口へ向かうと道路が川と化している。
前日の夕方激しい雷雨が降ったがそのせいでは無く、どうやら8月後半から9月上旬の間に降り続きJR函館線の砂利を流し脱線事故を誘発した記録的大雨の影響が続いていたようである。ともあれ登山口へ着き、沢の様子をC'Kしてみたが水は澄んでいて大丈夫そう。
沢を見下ろしながら沢沿いの小道を行き、沢に降りてみて緊張した。思った以上に増水している、轟音とともに流れる水量は恐ろしいほどなのだ。
前回の時は低く水際をへつりながら突破した岩場は、足場が水の中に沈んでいて上の微妙なラインを恐る恐るへつる。マクンベツの滝を過ぎて少し行った、一旦高巻いて沢に降りる所で足が止まる。
沢に降りる細い沢型が滝になっている。
止めようと云うカミさんを待たせて、様子を見に行くが増水して水かさが上がり渡渉できる所がない。
完全な沢装備をしていても、躊躇する水の勢いと水量なのである。心配そうなカミさんと相談、恐れいりましたと最敬礼して引き返すことに。
戻りも2箇所ほど緊張を強いられる所を助けあいながら渡り、登山口へ戻ったのだ。そして、そのまま帰宅するのも勿体無いと思案を巡らせ、奥美利河温泉から登れる山があったのを思い出したのだった。
国道230号線で美利河ダムへ向かい、ダム手前から標識に従い奥美利河温泉へ。
約10Kmの細い道だが、全線舗装されている。温泉には立派な山の家と温泉、キャンプ場などがあり、綺麗に整備されていて気持ち良い所だ。
奥美利河温泉 奥が山の家、手前は温泉棟
美利河丸山の登山道は山の家の右手奥から始まっている。
深い樹林の中に付けられた道、大半がブナのためか比較的明るく爽やかだが見通しはない。標高も低くファミリー登山向きの山と聞いていたのだが、結構真面目な登りが続く。
ジグを切りながら登ると、汗が吹き出し思わずペースを落とす。
林内の薄暗いところにはキノコやギンリョウソウが生えている。
ユウレイタケとも言われるように、あまり気持の良い植物ではない。
ギンリョウソウ
30分強頑張ると、顕著な尾根筋に出ると傾斜も緩んできた。
東側は雪崩斜面で切れ落ち、少し視界が開けてきた。
左はブナ林、右は笹の斜面
山頂は間もないと感じたが、実はここで山頂までは約半分。
緩急織り交ぜた登りが続く。カミさんがクワガタを見つけた。
全長4cmほどの小さいオス、手の平の上で角を広げ威嚇しているのが可愛らしい。
このクワガタ、ヒラタクワガタと云う種類だそうだ。
クワガタ
空気が澄んでいるのか、遠くまでよく見える。
展望が期待され嬉しいが、樹林は途切れず笹の背も高いので展望はままならずだ。
時折見える地点で一休みしながら、初めての山から山座同定。
意見が一致しないのが、また楽しい。1時間と少しで目立たず山頂らしくない美利河丸山の山頂へ到着だ。
狭い樹林と笹の山頂、北東から東方向の笹が刈られていて展望が得られる。
山頂からの展望 左に黒松内岳、その奥にニセコ連山、羊蹄山、昆布岳など
黒松内岳がほぼ真北に見え、その奥に雷電岳から目国内岳・白樺山・シャクナゲ岳・チセヌプリ・イワオヌプリ・アンヌプリのニセコ連山が並び、その右に羊蹄山・昆布岳・尻別山などが見えている。
思いの外の素晴らしい展望に低山「美利河丸山」を見なおしてしまう。
そして東には、礼文華の岬から室蘭への海岸線がしっかりと見えている。
山頂から東方向の展望 入り組んだ海岸線と羊蹄山〜オロフレ山などの山々が
美利河丸山の山頂からの展望は一部方向のみでグルリと全てを堪能できるわけではない。
他に展望が得られる所を求めて、長万部側に少し行ってみる。
ものの5分も降りると立派な電波反射板が立っている所に出た。
こちらは南西方向の笹が刈られ展望が得られる。
電波反射板
今朝、敗退してきた雄鉾岳がしっかり見えている、今度行くときは機嫌よく迎えてね!
遊楽部岳の姿が大きい。
道南中央部の山々が連なって、勇壮な景観だ。
南西方向の展望 右に大きな遊楽部岳、中央に雄鉾岳。手前に美利河ダムとスキー場
山頂へ戻り、展望を求めながら下山にかかる。
登りでは気づかなかった展望の得られる場所が数カ所あり、南東方向の展望を楽しむことも出来た。
噴火湾を挟んで左に室蘭、右に駒ケ岳や恵山方面
噴火湾を挟んで片方に室蘭方面が、片方に恵山や駒ケ岳方面が見える所があり、噴火湾を取り囲むような地形を実際の目で見ることが出来、感動した。
道南中央部から南端へ続く海岸線
こちらから見る駒ケ岳も姿が良く素晴らしい。
どこから見ても美しい山で、「登るより見る山 」なのだと強く思った。
ブナと笹の尾根
やがて樹林帯へと入り、しばらくブナの美林を楽しみながら下降すれば奥美利河温泉・山の家は近い。
特に目的もなく雄鉾岳の代替で訪れた美利河丸山だったが、小さいながらも展望も良く緩急入り混じった登りもあり、なかなか良い山だった。
近くで未踏のカニカン岳にも時間を作って訪れてみたいと思った。
・真昼間の光の色を受け止めて
ブナの林は秋へ傾く・雄鉾岳 岩根の窪にひそとして
大文字草は濡れて輝く