武利岳 (1876m)

北大雪   2013.9.11(水)   晴れのち曇り

 


 

武利岳
武利岳の山頂稜線と紅葉

 

2013.9.11(水)
登山口 0615
3合目 0700〜10
6合目 0755〜0815
8合目 0900〜15
山頂 0940〜1040
6合目 1115〜25
3合目 1155〜1205
登山口 1250

・武利岳

武利岳は北大雪の山深くに位置し、静かに佇む姿はどこか哀愁を漂わせているようで心惹かれるものがある。
中腹までは深い針葉樹林で、その静かさの中を歩くといかにも北の山らしい気配・雰囲気が感じられる。
一方山頂部は岩稜帯になりアルペンムード一杯。
武利岳は静と動を楽しめる山なのだと思う。

私は2008.7に初めて訪れて以来、大好きな山の一つとして記憶にとどめていた。
今回は5年ぶりにカミさんと共に訪れる。
カミさんには「少し長いけれど大雪などの大景観を眺めながらの山頂プロムナードは最高なんだよ」と伝えてある。

 

・深夜の騒動!

前日はニセイカウシュッペ山を下山してから温根湯の「つるつる温泉」でゆっくり過ごし、道の駅で車中泊。
疲れもあって午後8時過ぎには熟睡したが真夜中に騒然とした物音と怒鳴り声や足音に目覚めた。
カミさんも目覚め、息を殺して様子をうかがっている。

事故や喧嘩ではないらしいと分かってから外に出てみると、陸上自衛隊の大型トレーラーが10台近くと大型ジープ数台が道の駅に入ってきて隊員が連絡を取り合い誘導整理中。
戦車らしい幌を被せた大きな重そうなものを積んでいてトレーラーのエンジン音だけでも凄まじい、何時もは大きな顔で停まっているトラック軍団連中もひっそり息を潜めている。
隊列を組み直し30分ほどで次々に出発し静かになったが、突然の騒動には驚いた。

 

・登山口情報

武利岳の登山口へは丸瀬布と留辺蘂の厚和を結ぶ道道1070号線を使うのだが、現在は丸瀬布側で通行止めになっており通り抜けできない。
留辺蘂の厚和から約20分、標高800m付近まで登りカーブの続く道を降りて行くと武利岳の鋭い山頂部が左前方に見え始め「武利岳登山口」の看板標識が左側に立っている。

ここで左折、狭い林道を約5km進むと道は急に荒れ始めかなりの上り坂に変わる。
地上高の低い車や傷を付けたくない車は、上り坂手前に数台停められる広場がある。
急な上り坂を約1.5Kmで以前小さな祠のあった広場に出る。
今は賽銭箱だけが置かれていて、ここが登山口だ。

 

・喘ぐ!

準備を整え針葉樹の中を歩き出す。
前回訪れた時には間もなく水場があったのだが今は標識もなくなり、踏み跡もよく見ないと分からないほどになっている。

登山口
登山口 武利岳風景林の看板、手前に旧祠の賽銭箱が置いてある。

 

15分ほどで1合目、ここから3合目までかなりの急登が続く。
体が慣れないうちの急登はキツイ、それなのにカミさんは快調なペースで登っていく。
たちまち汗びっしょり、汗が滴り落ちメガネが曇る。
「お〜い、そんなに急がなくて良いよ。先は長いから・・・」

3合目で尾根に乗るが樹林帯で展望は利かない。
視界が良ければ3合目から東のオホーツク海が見られそうな感じではある。

 

・懐深く、静か

3合目からは武利岳から東に伸びる長い尾根を忠実に辿っていく。
大きな岩が点在し、岩を抱いた木々の表情などを楽しみつつ辿る。

苔むした樹林帯は静かで物音一つしない。
会話も少なくなり、それぞれの考えや物思いに沈んでいる。
ときおりカケスのけたたましい鳴き声に救われるような気分だ。

クマネシリ
尾根から垣間見るクマネシリ山群(右)

 

4合目、5合目を通過すると次第に傾斜が増し、ロープ場や鎖場が数箇所出てくる。
樹林帯にはシャクナゲが多く、春の明るく鮮やかな景色が想像できる。

ロープ場
こんな所も数箇所

ひたすら辛抱と思惑の時間が流れていく。

 

・見えたぞ〜!

7合目近くになって、樹林の間から山頂部の岩稜が見え始めた。
スッキリした青空をバックに山頂稜線が凛々しく聳えている。

山頂岩稜
姿を見せた山頂部の稜線 (左奥が山頂)

 

視界が開け、支湧別岳などの北側の山並みが目に飛び込んでくる。
かすかに色づいた山並みと秋空・白い雲が目に眩しい。

秋空
山並みと青空が眩いばかり

 

道には岩が多くなり、樹林帯とは表情が一変する。
岩にはウラシマツツジとコケモモが真っ赤に染まって彩りを添えている。
前回の時はエゾツツジが満開だったが、この時期は名残のみだ。

ウラシマツツジ
ウラシマツツジとコケモモが目立つ

 

ハイマツの濃い所は歩きにくい、離れて歩かないと枝が顔めがけて飛んでくるし、枝や根に待てと引き止められる。
次第に山頂部が明瞭になってきた、清々しい岩稜の気配が広がりだす。

岩稜
全容を現した武利岳

 

・白と緑、青と赤

8合目は少し広くなった岩場、一休みしながら武利岳の凛々しい姿にしばし見入る。
岩の白とハイマツの緑、空の青とウラシマツツジやコケモモの赤が夫々に自己主張しながらも調和して美しい。

ウラシマツツジ
夫々が調和もし、自己主張もしている

 

「岩をそのまま登り降りして行くの?」カミさんは少々不安そう。
「大丈夫だよ、回り込みながらだから・・・」

前回の時チシマノキンバイソウで黄色く染められていた山頂の南斜面の美しさを思い出す。
ハイマツと岩が独特のアルペン的雰囲気を醸し出し、見とれてしまう。

山頂部
8合目からの山頂部

 

9合目の山頂稜線へ真っ直ぐに延びる岩の道。
闘志が湧いてくる。
「さあ、最後の一登りだ。行こうか!」

岩の道
9合目に続く岩場の急登

 

・これ散歩道?

急な岩の道も思ったより楽に短時間で登り切る。
飛び出た山頂稜線は清々しく気持ちがいい。

遠くが白く霞んで視界が良くないのが唯一残念だ。
南隣の武華山とそこから延びる尾根が近くに見える。

武華山
山頂稜線から見る武華山

 

稜線を僅かに行けば、武利岳山頂である。
さっそうと歩き出すと「これが散歩道なの? 周りを見たり話しながら歩いたら落ちそうよ!」とキツ〜イ一言。
「まっ、 景色を見る時は止まってね!」

山頂
山頂へ

 

・やっぱり静かで良い山!

武利岳山頂に到着。
表大雪は煙ってかすかに見える程度、残念だが昨日たっぷり見ているので良しとしよう。
昨日登ったニセカウは何とか姿を確認できる。

ニセカウ
前日登ったニセカウ(中央奥右)、左に平山

 

山頂で腰を下ろし、達成感と登れた喜びに浸る。
霞んでいて山座同定が出来ないのが残念だ。

お昼におにぎりやゼリーを頬張り、奥深い静かな山旅を振り返る。
日差しを受けてウラシマツツジの赤がハイマツの緑とコントラストをなし美しい。

山頂
西隣のピーク 正面の表大雪は雲に隠れてしまった

 

記念の1枚も忘れない。

記念に
今日のサングラスは少し怖いよ

 

山頂稜線の景観などをもう少し、

稜線
9合目に続く山頂稜線

 

 

山頂
武華山

 

約1時間も武利岳山頂で過ごす。
話すこともなくなり沈黙の時間が流れる。
けれど心は満足感で一杯だ。

やっぱり武利岳は良い山だ。
そうそうは来れない遠い山、もしかしたらこれが最後かもしれない。
そんな思いが、なおさらこの山の印象を深くする。

「さあそろそろ、サヨナラしようか!」

サヨナラ
山頂にサヨナラ

 

帰路は登ってきた道を引き返す。
鋭い岩の尾根を慎重に下り、針葉樹林へ入るともう山は見えない。

でも「訪れてよかった!」と云う気持ちだけは何時までも下山後までくすぶり続けていた。

 

・オジロワシ歌壇

 

 

・山並みは涯なきまでに重なりて
         青き世界は天地を満たす

・おのずから至れる紅に身を染めて
         うらしまつつじ崖に添う

 

 

 

 

 

 

 

 


 

inserted by FC2 system