ニセイカウシュッペ山大槍基部からアンギラスを望む
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・初秋の北大雪
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表大雪の黒岳から層雲峡を挟んで真向かいに見える姿の良い山で、登山意欲を掻き立てられる人も多い。
その割に登山者の姿が少ないのは登山口までの長さなのか、あるいは表大雪の魅力がそれだけ勝るということなのか?6月〜7月にかけては花も多く、お隣の平山と共に隠れた花の名山として知る人ぞ知る山でもある。
またニセイカウシュッペ山(以後 ニセカウと云う)と比麻奈山を結ぶ稜線には、通称「アンギラス」と呼ばれる岩稜が聳え、ニセカウの大槍・小槍の岩峰と共に男性的で勇壮な景観を展開している。
今回はニセカウと共にアンギラスを訪れるのを楽しみに前夜上川まで出向いて車中泊。
上川の町はこれまで通過するだけの所だったが、公園などが整備された綺麗な街だ。
そして表大雪の主要な山々を始め、ニセカウや平山など北大雪の山々を眺められる展望の街でもあった。
上川の町から見る表大雪の山々(右)とニセカウなど北大雪の山々(左)
大きなモニュメントの塔がある公園からは上川の町並みと表大雪の山々が一望され、しばらく見入ってしまったほどだ。
モニュメントの塔から見る愛別岳や北鎮岳などの景観は素晴らしい
9/10(火) 目覚めると抜けるような青空、清々しい気分でコンビニでコーヒーを楽しみ朝食を摂って出陣だ。
上川の町から国道273号線上川国道を約10Kmほど行った中越付近に「ニセイカウシュッペ山登山口」の標識があり、それに従って林道へ右折。
林道とは思えないほど整備され走りやすい道を約13Kmで登山口。ゆっくり準備を整え、岳樺の木漏れ日を浴びながらゆるやかに続く登山道を歩き出す。
朝の気持良い木漏れ日の道を
しばらく続いた愚図ついたお天気のせいか泥濘んだ樹林の道を注意しながらしばらく進むとC1533mの見晴台。
視界が一気に広がり、そこには表大雪の大展望と秋空のコントラストが待っていてくれた。
乱れ雲舞う秋空と表大雪の山々
さすがにこの時期花は少ないが、チングルマの穂が銀色に輝き、色々な花殻があちこちに見て取れる。
タケシマランの赤い実が緑の中で鮮やかだ。
タケシマラン
紅葉はまだまだと思っていたが山肌は色づき始めている、思ってもいなかっただけに徳した気分だ。
正面にC1742mPや大槍の姿も見えてきた。
色づき始めた山肌も美しい 正面はC1742mPと奥に大槍
道端の葉も露や霜を浴びて、赤く染まっている。
露や霜を受けながら赤く染まっていくのだろう
沢を挟んだニセカウの西斜面も緑と黄色・橙色が入り混じり、まさに紅葉のハシリ、紅葉前線の到来だ。
ナナカマドの黄色がややくすんでいるのが気になるが、今年の紅葉は良さそうだ。
ニセカウの斜面を染めだした紅葉前線
C1742mPの北腹を巻きながら登り、大槍の基部へ出て行く。
この辺りからニセカウならではの大展望が広がりだす。その第一が、ここまで登って初めて目にする「アンギラス」だ。
その凛々しい恐竜の背骨を思わせる岩稜は見る人を惹きつけて離さない。
初めて目にするカミさんも「凄いわね〜!」と感嘆の声。
アンギラスの岩稜
一方ニセカウと前山であるC1860m峰はアンギラスとは対照的な優しい丸い山容で、美女と野獣を連想させる。
道の両端にはコケモモの赤い実がビッシリ、片方にはシラタマノキの白い実とこれまた対照的だ。
アンギラスと対照的な優しい姿のニセカウ(左)と前山(右)
大槍の基部からは僅かな距離と時間でニセカウの山頂だ。
ニセカウの持つ大展望の第二は、山頂からの大槍と表大雪のコラボレーションだ。ウラシマツツジの紅葉と厳つい大槍、そしてその向こうには巨大な台地のような表大雪の山々がデ〜ンと座っている。
そのチグハグな相関関係が面白くも素敵にも見えるから不思議なものだ。
ニセカウ山頂からの大槍と表大雪
表大雪もクッキリと見えている。
左から小泉岳と白雲岳、真下に烏帽子岳、その斜め右下に黒岳(ロープウエイが尾根に登っている)、その右に北海岳、桂月岳、北鎮岳と並び、右端に比布岳・永山岳・愛別岳と手に取るよう。最近にわかに話題を集めるようになった地熱発電予定地(北鎮岳の真下)から盛んに水蒸気が吹き上がっているのも遠望できる。
表大雪の山々
北側には天塩岳の姿も良く見えている。
東側には平山の稜線、その向こうには武利岳・武華山、支湧別岳。
南東にはクマネシリなど東大雪の山々が見渡せ、さながら大雪の展望台だ。
山頂で
まだ時間は8時過ぎ、お腹も空いていない。
いけない習慣だが、山で休憩すると何か口に入れなければならないような強迫観念に襲われる。
林檎の甘酸っぱさがフレッシュだ。山頂から見る大槍もなかなか厳つく格好良い。
のんびり久しぶりに訪れたニセカウを存分に楽しむ。
大槍
さあこれから今日のハイライト、アンギラスへの挑戦だ。
踏跡程度の道だと聞いているし、苦戦するかもしれないがチャレンジだ。
無理だったら「恐れいりました!」と最敬礼して戻ってくれば良い。そう決めて山頂を後にした。