徳舜瞥山への夏場の主要登山コースは鉱山跡コース、登山口までの道路も駐車場も立派に整備されているしコースも沢沿いから尾根へと変化に富み楽しいコースである。
しかし以前は徳舜瞥山北尾根に沿って登山道が付けられていたそうだ。
現在の鉱山跡コースも7合目から山頂までは北尾根で、その7合目には旧道に入り込まないようロープが何重にも張られている。
山頂から降りてくると気付くのだが、7合目に張られているロープの先にはしっかりした道がある。
それが旧道なのだ。最近、旧道が復活したとの情報を耳にして、どんな様子なのか行ってみることにした。
まずはこの日歩いたGPSトラックを見て頂こう。
徳舜瞥山旧道コースのGPSトラック図
赤線が旧道で北の始点が登山口、青線が林道で車で通行可能だ。
鉱山跡コースは黄緑で示したルート。
登山口の標高は鉱山跡コースが約700m、旧道コースが約640m。
夫々の登山口から合流する7合目までの所要時間は、鉱山跡コースでは約35分、旧道コースでは約50分だ。登山口までは、三階滝公園から上野町に通じる鉱山跡コースへ向かうのと同じ道を約1.2Km進んだ左手に写真の林道案内標識が出ている。
林道の標識
この道がGPSトラック図で示してある青線である。
林道の終点には駐車場は無いが、4・5台は止められるスペースがある。旧道を歩いた感想は一概には言えないが、道は明瞭で迷うことはないと思う。
しかし長らく使われていなかった道なので倒木が何本もあり、登山口からしばらくは道全体がツタウルシに覆われていて、あまり気持ちの良い風情ではない。
尾根道と言っても幅広い尾根で樹林に覆われているため尾根を歩いている感じはなく、斜度も緩いのでキツイことはない。だが鉱山跡コースが沢沿いを歩き、流れを渡って尾根へと取り付くので変化に富み花の種類も多く楽しめるのに対し、旧道コースは単調な尾根歩きで花も同じようなものが多い。
また正確ではないけれど、ダニは旧道コースのほうが多い感じを受けた。またアプローチの林道も民有林林道で幅も狭く、作業を行う場合など迷惑をかけたり、トラブルの原因となることも予想される。
従って「歩いたことのないルート」をぜひにと言う場合以外は、鉱山跡コースを利用するのが賢明ではなかろうかと感じた。
以下、旧道を詳しく記述したいがあいにく霧と霧雨に妨げられ景観や風景はお目にかけられない。
簡単な印象と花の写真とでご勘弁いただきたい。
林道終点のスペースに車を停め、荒く笹刈りした道を歩き出す。
笹刈りしてあり道は明瞭なのだが、刈り残しの笹が邪魔をして歩きにくい。
「こんな道が続くなら大変だな」と思ったが、10分もしないうちに山道らしい道に合流。
どうやらこれが本当の旧道で、林道終点から旧道の間を通れるように笹刈りしてくれたようだ。旧道はいかにも古い感じだが同時に落ち着いた佇まいの印象を受ける。
道は殆どが丈の短い草に覆われ、見るとその大半はツタウルシ。
下手に触れば、かぶれてしまう。
草花の写真を撮る時、構図よりウルシに触らないよう気を使う。珍しくも何ともないが、ズタヤクシュやクルマバソウ、オククルマムグラなどが多い。
ズタヤクシュ
オククルマムグラ
背が低い草花だから膝をついたり、腹ばいになっての撮影を強いられる。
撮り終わってズボンの塵を払っていて悲鳴を上げた。
なんと大嫌いなダニが這っている、2匹も・・・。この道は注意しなくちゃ!
下手に草に触ればかぶれるし、ダニにも細心の注意が必要なのだ。
どの山でも登山道の脇に咲く花には癒やされる。
この旧道にもそんなおなじみの花達が点々と咲いている。
そんな花達を愛でつつ、写真を取りながらのんびりを歩く。
勿論、怖いダニとウルシには注意しつつだ・・・。まずはスミレ。
私はスミレの判別が苦手。どれもが同じに見えてしまうのだ。
ここでは2種類のスミレが咲いていた。まずは距の白いスミレ。
オオタチツボスミレ?
距が白く、葉に鋸歯がない。花が葉の付け根から出ているので「オオタチツボスミレ」かと思うのだが、大きさが約10cmと小さいのだ。
やはり???だ。
次に出てきたのは。
タチツボスミレ?
葉が尖って鋸歯があり、花に毛が無いので「タチツボスミレ」か「ミヤマスミレ」だと思うが、良くわからない。
ルイヨウショウマも結構多い。
葉の形が独特なので一度覚えれば忘れない。
花の形もなかなかのもの。
ルイヨウショウマ
ミツバオウレンは花の時期が過ぎかけているが、群生している所も。
白と黄色のコントラストが可愛く、好きな花の一つである。
ミツバオウレン
ナンブソウも大きな葉を広げ、小さな花を穂状に咲かせている。
ナンブソウの小さな花達
そしてハリブキも多く見られた。
間もなく花の時期だと思うが、まだ花穂を出しているのは無かった。
ハリブキ
旧道を歩き7合目までやってきた、歩き始めて約1時間だった。
閉鎖されているロープを潜り、鉱山跡コースに合流だ。
ここまでの旧道は、花以外には特段見るべきものも特徴もない単調な尾根歩きの印象だ。7合目で一休み、ドライフルーツを頬張り水分も補給する。
曇り空から霧に変わっていた天候が、霧雨に変わりだした。
それも「霧雨だ、濡れていこう」とはいかないほどの雨。
雨衣を着用、カメラもマクロレンズを付けた防滴の一眼を残して防水袋に入れザックに収容した。ここからは何回も歩いているルート、岩混じりの斜面を雨で滑らないよう登っていく。
ノウゴウイチゴが幾つも咲いている。
7枚の花弁が風車のようでもある。
ノウゴウイチゴ
ツバメオモトやサンカヨウなどの可憐な花達もお出ましになった。
涼やかで気品もあり、なかなかの絵姿だ。
可憐なツバメオモト
サンカヨウも美しさでは負けてはいない。
大きな葉の上にチョコンと座っている。
サンカヨウ
花を探して下ばかり向いていた目を上に上げれば、オオカメノキが花を付けている。
中心部にある小さな星状の花、良く見るとなかなか可愛いいものだ。
オオカメノキの花
霧だから時間が経てば晴れてくるのでは・・・と淡い期待もしていたのだが、晴れるどころか本降りに近くなってきた。
戻ろうか? とも思ったけれど、もう少しで山頂だ。
折角の機会だ、今年の徳舜瞥山の花は見ていこうと気を取り直す。そんな気持ちを励ますようにチシマキンバイが霧雨に濡れて待っていてくれた。
霧雨に濡れるチシマキンバイ
雨に濡れ、水滴を付けた花はどれもが良い表情を見せる。
チシマキンバイ
知らない草に薄いピンクの花が・・・、何だろうと良く見ると何かの花びらが落ちて葉にへばり付いているのだった。
上を見上げるとミネザクラが。まだ花を沢山付けている。
霧に煙る景色にミネザクラはよく似合う。
ミネザクラ
やはり桜は美しい。雨の桜も良いものだ。
ミネザクラ
コヨウラクツツジも壺形の花を付けている。
水滴を大きく膨らませたコヨウラクツツジ、何とも可愛いらしい。
コヨウラクツツジ
尾根の樹林が少なくなり、代わってハイマツが多くなる。
それまで樹林に遮られて音だけだった風が不意に大きく姿を現した。
帽子が飛ばされそうになり、慌ててフードを被る。7合目付近では色変わりをし始めていたミヤマエンレイソウ、標高が高いとまだ純白の花を咲かせている。
ミヤマエンレイソウ
ムラサキヤシオの花が風に翻弄され大きく揺れている。
そろそろ終わりを迎えつつある見納めの花。
ムラサキヤシオ
山頂へと飛び出した。
息も苦しいほどの風、南から霧を巻き上げ強烈に吹き付けている。
岩場と渦を巻き吹き上げる霧と雨、すさまじい光景だ。
僅か5m ほどの距離なのに、霞む山頂標識
山頂の岩場はアズマギクが満開。
強風に晒されながらも、懸命に耐えている。
だが、花が変だ。
良く見ると、黒い油染みのような汚れが全体に付いている。
何なのだろう?
他の花や草には付いていないアズマギクだけが黒く汚れているのだ、アブラムシか?
手にとって確かめなかったので分からないが、可哀想に。
汚れていて、とてもアップでは撮れなかったアズマギク
山頂直下までは緑の蕾ばかりだったカラマツソウ、山頂の花は咲きかけていた。
岩場の陽だまりは温かく居心地が良いのだろう。
カラマツソウ
岩場の影でハクサンチドリも雨風に耐え、咲きだしている。
よく頑張っているね〜! 思わず声をかけた。
ハクサンチドリ
岩陰の草むらに咲くハクサンチドリ、思い切り明るく可愛らしさを強調して撮ってみた。
ハクサンチドリ
この数日、北海道の内陸部やオホーツクでは猛暑日の日が続き日本一暑い場所になっていた。
ところがこの日の徳舜瞥山の山頂は寒いぐらい。霧で景観は全然だったし珍しい花もなかったけれど、それなりに楽しめた。
せっかく来た序でだ、ホロホロ山まで行き稜線の花も見てこよう。
そう思って稜線に足を踏み出す。山頂では岩陰に身を寄せて風を避けられていたが、稜線は吹きさらし。
まともに風を受けるとよろけてしまう。それでも花見たさにコル近くまで降りてきた。
そこに一段と強い風。雨粒が顔を打ち痛い。目に直撃され思わず怯む。何故か、とたんにテンションが下がってしまった。
「やーめた!」とぼとぼ力なく、下ってきた道を登り返す。
もう花を見ても写真を撮る気にもならない。山頂で立ち止まりもせず、山に挨拶もせず、無言で素通り、そのまま下山。
自分でもよくわからない気持ちの変化だ。途中、8合目付近で一組のご夫婦とすれ違う。
「車が駐車場になかったけど、何処から?」
「ええ、ちょっと違う所から・・・」7合目付近では山慣れした感じの女性二人連れと
「風はどうですか?」
「ホロホロとの稜線で負けました。すごすご退散です」7合目でロープを潜り、旧道を下降。
駐車した所からの刈分道に入らず、旧道をそのまま降りたら終点から約250m下で林道に出た。
もし旧道を行かれる方は、林道終点から少し戻って旧道へ入るのが良いと思います。三階滝まで戻って振り返ると徳舜瞥山は山頂を出そうとしている。
すれ違った方々は山頂で凄い展望を楽しまれたのかもしれない。
日頃の行いの差なのかな〜?なお車に戻った時、丹念にダニC'K。4匹を見つけ捻り潰す。
帰路の車中ではあちこちに違和感とかゆみ、ダニではないかと発狂しそう。
帰宅後、風呂場で入念に再C'K。顎の下の無精髭で隠れた所に喰い付かれていた。
上手く取れたと思ったが、一日経ったら赤く腫れてきた。
病院へ行かなくてはならないか、トホホ。