第二日目

 

第二日目 2014.7.4(金)
黒岳石室 0430
北海岳 0540〜0600
間宮岳 0655〜0710
中岳温泉 0805〜20
裾合平分岐 0855〜0905
沼ノ平 1105〜20
愛山渓温泉 1230

爆音

天体観測などを楽しんで寝遅れてしまった代償は大きく、たった8名の宿泊者なのにものすごい爆音で眠りたくても寝られず寝返りを繰り返す羽目となった。
山小屋での必勝法は早い者勝ちなのだ。

話はそれるが、道は千歳空港の深夜運行を大幅に増やしたいらしい。
これまで深夜2便だったのを10〜15便にしてお金儲けをしたいようだ。
そうなったら地域住民はこの石室での一夜と同じ目に合うことになる。
逃げ出したくても逃げ出せない弱い立場の人間も居ることなんて知らないし知ろうともしないんだろうな。

ウトウトを繰り返し午前3時30分に起きだし、出発準備。
幸い桂月岳にご来光を見に行く方が居て、私の物音は気にならなかったはずだ。

外のベンチで簡単な朝食、お天気は上々で凌雲岳や北鎮岳が朝焼け色に染まりだした。
午前4時半、北海岳に向けて勇躍歩き出す。

 

雪うさぎ

北海岳の尾根に取り付くまでも雪は少なく、目算では昨年より3mは積雪が少ない。
聞く所では昨年泊まった白雲避難小屋は水場まで約2〜3m掘って水を採っていたが、今年は雪はすでに溶けているそうでテン場にも雪は無いという。
理由は分からないが、こんな年もあるんだな。

北海岳
朝日を受けつつ北海岳へ

 

石室では飲料水を確保できないので、北海沢で水を汲む。
とうとうと流れ出る冷たく美味しい水だ。

ここから尾根の取り付きへ向かっていると、目の前に子鹿が飛び出し跳ねている。
えっ! と良く見ると鹿ではなく雪うさぎ。
結構大きく、私を案内するかのように10mほど行っては立ち止まる。
それを何度か繰り返し、私が「もういいよ! 道は分かるから」と話しかけると、さも分かったように左手の草地に入り草を食み出した。
親切な人懐っこい雪うさぎが居るものですね。

雪うさぎ
雪うさぎ 中央に夏毛に変わり切っていない姿で

 

花ロード!

北海岳への尾根に取り付く。ここでも昨年より約3mほど雪は少ない。
尾根を登りだすと、途端に雪から花ロードに衣替えだ。

まずはコケモモ、珍しくも何ともないが朝露を頭に載せた姿が可愛いく思わず足を止めた。

コケモモ
コケモモ 朝露を頭に乗せて・・・こぼすなよ。

 

ユキノシタ科のクモマユキノシタ、チシマクモマグサが点々と咲いている。
どちらもとても可愛く、好きな花の一つだ。
チシマクモマグサはウメバチソウの咲き始めに雰囲気が似ているかな?


チシマクモマグサ

 

クモマユキノシタはいかにも大文字草の親戚。
よく見れば見るほど小さいのに複雑な姿で面白い。
これが虫を呼ぶ武器になるのだろう。


クモマユキノシタ

 

この他にもイワブクロが咲き始め、イワウメ、ミネズオウ、キバナシャクナゲ、エゾコザクラ、エゾノツガザクラなどが道の両側に咲き競っていた。

 

やったー! 大展望。

尾根を登り切り白雲岳を左手に眺めながらゆるやかな道を進んでいくと、思わず歓声が上がる。
「すっごい! やったぜ〜」
忠別岳から化雲岳そしてトムラウシが、良く来たねとズラリ勢揃いだ。

トムラウシ
北海岳からのトムラウシや十勝の山並み

 

薄い雲を従えて堂々と端座しているトムラウシ、何度見ても感動し素晴らしいと言葉を無くす光景だ。
昨年は視界が悪くかすかに見えただけだったが、今日は惜しげも無くその全容を見せている。

十勝連峰は頭を雲海の上に出している。
素晴らしい! カミさんにも見せてあげたい大景観、電話で感動を伝えようと思ったが携帯圏外だった。

目を北に向ければ、黒岳の向こうに先週歩いた平山と昨秋遊んだニセカウとアンギラスが。

黒岳
黒岳と桂月岳 その向こうにニセカウとアンギラス・平山

 

御鉢平を挟んで昨日登った北鎮岳や比布岳・安足間岳。

北鎮岳
北鎮岳(右) 比布岳(中央) 安足間岳(左)など

 

風が冷たく寒いぐらいだが、大満足で嬉しくて仕方ない。

山頂で
北海岳山頂にて

 

西端から北海岳山頂を見ると、逆光でシルエットとなった案内標識が十字架のように見えヨーロッパアルプスの山かと錯覚する。

山頂の十字架
ここは何処?

 

山頂の南側に黄色の点が幾つか見える。
近寄ってみると、キバナシオガマである。
小鳥の嘴のような花びらが特徴で可愛いい。
白黒で見る虫達には、この色合とコントラストが魅力的なのだと聞いたことがあるが本当かな?


キバナシオガマ

 

団地

凄い景観をプレゼントしてくれた北海岳山頂にありがとうを言い、間宮岳へと足を向ける。
稜線の左側には進むにつれ、白雲岳の陰からニペソツ山から音更山・石狩岳が順次姿を現し始める。


石狩岳〜ニペソツ山の山並み

 

松田岳を過ぎるとエゾタカネスミレの大群落、まさにキスミレの大団地。
ここから種が風に乗って雲ノ平へ、平山へ飛んでいったのではないかと思うほどである。


エゾタカネスミレの大群落が続く

 

 


エゾタカネスミレ

 

ジンヨウキスミレ程ではないが、メアカンキンバイも数多い。
金の雫が砂礫にばら撒かれているかのようだ。


メアカンキンバイ

 

裏旭

間宮岳からの裏旭の展望も一級だ。
大雪ならではの展望を楽しみ、中岳分岐へ向かっていく。

左手には熊ヶ岳と後旭岳そして旭岳が聳え、右手には御鉢平を挟んで黒岳が。
御鉢平の灰色の地形と有毒物質を含んだ川が何とも不気味ではある。


御鉢平と黒岳

 

中岳分岐へ向かう道は植生回復の作業が行われているらしくロープで保護されている。
作業のご苦労を感謝しつつ、自然保護の大切さを多くの人たちに知って頂きたいものだと感じる。
ただ程度問題で、自然保護の行き過ぎにもまた注意が必要だ。
樽前山のコマクサのように樽前の環境が好きで抜かれても抜かれても生き抜こうと懸命な花を、生えてくる度に無残に引っこ抜いて回るのは如何なものかとも思うのだ。

ここで今回の山旅では初見のヨツバシオガマを見つけた。
小さなものだったが逞しく花を付けていた。


ヨツバシオガマ

 

クモマユキノシタの姿も多かった。


クモマユキノシタ

 

中岳分岐から稜線を外れ、谷へと降りていく。
右手には昨日歩いた比布岳・安足間岳、当麻岳が並び、左手には熊ヶ岳と旭岳の北斜面が流れ落ちている。
旭岳から落ちる雪形はさすがに大きく見応えがある。

旭岳
旭岳の北斜面と雪形

 

この下り坂の途中で白花のエゾノツガザクラを見つけた。
色の薄いピンクの花は多いが、ほぼ純白のエゾノツガザクラは少ないかもしれない。


白花のエゾノツガザクラ

 

谷の地形は次第に険しい岩場となっていく。
そこを降りると、硫黄の臭いが立ち込め小さな露天風呂があらわれた。
中岳温泉である。

中岳温泉
中岳温泉

 

休憩し、試しに手を洗ってみると調度良い温度。
誰が来るかもわからないので入浴する勇気はないが、手と顔を洗っただけで気持ちはスッキリであった。

露天風呂のすぐ脇の岩から温泉が吹き出している。
硫黄で黄色くなった穴から泡と一緒に透明なお湯が吹き出していた。

温泉
温泉の吹き出し口

 

裾合平付近からは安足間岳から当麻岳に延びる稜線がハッキリ望まれ、前回愛別岳を登った時に歩いてチングルマの絨毯の見事さに感じ入ったのを思い出した。

当麻岳
安足間岳(中央右)から当麻岳(左)に延びる稜線

 

 

ワイルド!

裾合平から当麻乗越を経て沼ノ平への道は観光客も歩く裾合平から姿見の池の道と繋がっているとはいえ、全く別物と認識していたほうが良い。
よりワイルドであり、より自然が豊かであり、より静かである。

アップダウンも結構あり、不明瞭となるところもある。
靴を濡らさずには渡れない渡渉もある。
そのかわり花も多く、池塘と山岳との織りなす日本離れした景観も楽しめる。

裾合平からエゾコザクラやエゾノツガザクラに混じってショウジョウバカマ、サンカヨウ、ミツバオウレンなどの花々も咲いている。


ショウジョウバカマ

 

ミヤマダイコンソウやミヤマキンバイが所々にある岩場に咲いていた。


ミヤマキンバイ

 

そして驚いたことは、湿地や池塘にミズバショウが咲いていたことだ。
この地域・高度帯では時期的に今咲くのか? そんな思いにかられる。

ミズバショウ
ミズバショウ

 

時期を前倒ししたつもりでミツバオウレンも


しばらく前に見たような・・・

 

当麻乗越の少し手前でピウケナイ川を渡らなくてはならない。
秋などは水量も減り問題なく渡れるらしいが、雪解けの時期は滔々とした流れで川幅も4mほど。
流れも早く、深さもかなりある。
私はスパイク長靴だから楽勝と思いきや、油断すると水没しそうな深さ。
注意して何とか渡りきったが、山靴だったら脱いで裸足で渡ったほうが良いだろう。

ピウケナイ川
ピウケナイ川

 

 

ワタスゲ揺れる

かなり時間を要して沼ノ平に辿り着いた。
六の沼と半月の沼と言う比較的大きな沼を中心とした池塘群。
山と巨岩と湖沼群が作り出す山岳風景、ちょっと日本離れしている景観でもある。

沼ノ原
沼ノ原を見下ろす

 

雲に覆われ山は隠れてしまったが、ワタスゲ揺れる沼の表情などなかなかの風情だ。

六の沼
ワタスゲと六の沼

 


ワタスゲ
ワタスゲは水の風景によく似合う

 

来年も・・・

今回は一日行程としては結構な距離の山旅だったが、途中で一泊すれば古希を迎えた私でもまだ何とか楽しめる。

もう長時間歩くとか難しい所に挑戦するとかは若い人に任せて、楽しめることだけ楽しむようにしよう。

健康の有り難さを実感しつつ、来年も素晴らしい景観と花達に出会えるよう精一杯精進したいと思う。

でも、何時かは壊れるしへたばるんだよな〜。

 

 

 

2006.8の旭岳〜裾合平へ


 

 

 

 

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