愛山渓〜(北鎮岳)〜お鉢巡り〜沼ノ平

 

永山岳・安足間岳・比布岳・北鎮岳・
黒岳石室・北海岳・間宮岳・裾合平・沼ノ平

 

大雪   (2014.7.3〜7.4)   晴れ

 


 

トムラウシ

 

 

第一日目

 

第一日目 20014.7.3(木)
愛山渓温泉 0400
滝上分岐 0525〜35
永山岳 0745〜0815
愛別岳分岐 0845
比布岳 0915〜25
北鎮岳 1035〜1100
黒岳石室 1230

開幕!

7月の声を聞くとあちこちの山から山開きのニュースが聞かれるようになる。大雪も例外ではなく本格的な山のシーズン・花のシーズンの開幕である。

昨年は層雲峡から黒岳・北海岳・白雲避難小屋・間宮岳から御鉢平を周り層雲峡まで、素晴らしい花達との出合いに感動した。
今年もその感動を再び味わいたいと出かけることに。

しばらくぶりに愛山渓温泉から愛別岳・北鎮岳を経て裏旭岳キャンプ場へ、翌日旭岳を経由して裾合平・沼ノ平を巡って愛山渓温泉のコースを考えたが、黒岳石室から間宮岳にかけての花の稜線も捨てがたい。

悩んだ末、北鎮岳から石室に向かい一泊、翌日お鉢巡りをして中岳温泉経由で裾合平に出るルートを選択した。

果たして今年も花達は美しい姿で待っていてくれるだろうか?
併せて素晴らしい大展望も見られると嬉しいのだが・・・。

 

長〜い!

愛山渓温泉は改修工事のため休業中、どうせ一人なのだからと車中泊。
翌朝早起きして午前4時にはイズミノ沢沿いの道を歩き出した。

前回訪れた時は朝露に濡れビショビショになった記憶があるが、今回はしばらく雨が降っていないせいか朝露の心配は必要ないようだ。


カラマツソウ

 


清流沿いの道を淡々と進む、ミゾホオズキやカラマツソウ、エゾノリュウキンカなどが点々と咲いているが暗くて三脚を出さないと写真も撮れない。
今流行の高感度カメラならOKなのかな〜?

イズミノ沢
風情ある朝のイズミノ沢

 

約1時間で村雨の滝、大きく勇壮な滝だが木々が邪魔して良く見えない。

村雨の滝
勇壮な村雨の滝

 

左岸を高巻きながらやり過ごすと平らになり永山岳分岐。
ここからやっと永山岳へ取り付くことになる。

村雨の滝
高巻きの道から見る、村雨の滝の一部

 

しばらくは笹とゴロゴロ岩の急斜面、見るものも無い辛く苦しい喘ぎ喘ぎの登りである。
「まだかよ〜!」あまりの長さについ愚痴も出る。

 

朝日に透ける花!

明けない夜は無いし、登り続けるだけの道も無い。
ようやく笹が途切れ始め、代わりにハイマツが現れる。

視界が開け始め、岩やハイマツの切れ目に赤や白い色が朝の陽光に光り輝いている。
思わず足が早くなる。


陽光に光り輝くエゾコザクラ まるで宝石のよう

 

低い角度からの差し込む朝日がエゾコザクラ、キバナシャクナゲ、コマクサ、チングルマ、ハクサンイチゲなどの花びらを透き通って発光しているようなのだ。
「いや〜、綺麗だ!」先ほどまでの愚痴はすっかり忘れ、花達の美しさに見とれてしまう。

コマクサ
透き通るコマクサ

 

ザックを下ろしてマクロレンズを付けた一眼を取り出し、夢中で花達の美しさを切り撮る。
「君は凄いね。 君も可愛いよ。 拗ねないでとっても綺麗だから・・・」


透けるエゾコザクラ

 

派手好きなコマクサは陽光を好み、控えめなイワヒゲは岩陰の日陰を選んで上手に住み分けている。
私達人間だって、人様を羨ましがらず自分にあった環境に満足し順応している方が幸せで楽なのかも・・・・と思う。
でも隣の芝生は青く見えるものだし、悩むのも人ならではのことだから仕方ないか?

コマクサとイワヒゲ
コマクサとイワヒゲ

 

日差しの方を向いているハクサンイチゲの背中もなかなか味があるように思えるから面白い。

ハクサンイチゲ
ハクサンイチゲとエゾコザクラ

 

地獄のぞき!

大きなお花畑には小沢が流れ「銀明水」という水場がある。
ここから稜線までは花の励ましを貰いながらもうひと頑張りだ。

永山岳
永山岳から安足間岳、比布岳へと続く稜線

 

永山岳山頂に到着、長かった! 4時間近く掛かっている。
前回は感じなかったのに、年齢を感じざるを得ない。
歩けるだけでも良としなくては。そんな思いが切実に感じられる。

山頂にて
永山岳山頂にて

 

今日はお留守番のカミさんにTel。
千歳は本曇で薄暗いとのこと。大雪は上天気で花も昨年同様素晴らしいと伝えると「私の分まで楽しんできて!」とエールが返ってきた。

永山岳から見ると旭岳はじめ大雪の山々は晴れ渡っていて視界も良好だ。
ただ上川や層雲峡の谷を覆っている雲が気温の上昇と共に湧き上がり押し寄せる気配なのが気にかかる。
すでに愛別岳は雲に巻かれている。

歩く稜線から左側は地獄谷とも大覗き谷とも呼ばれる日本離れした凄まじい迫力ある景観を見せ、近づくのも怖いぐらいだ。
安足間岳から当麻岳へ向かう分岐を右に見れば、愛別岳への分岐は間もなくだ。

大覗き
稜線の左側は特異な恐ろしい景観が広がる

 

稜線から北に外れて独立して立つ愛別岳、登高意欲が刺激される険しい山容をしているのだが、今は雲に巻かれより険しい表情を見せ始めている。


雲に巻かれ険しい表情を見せる愛別岳

 

愛別岳分岐でどうすべきか思案。
雲の中の愛別岳、わざわざ行くほどのことはないのでは? すでに何回か訪れているし・・・。
そう考えて、今回はパスすることに。

 

花の稜線!

愛別岳をパスし比布岳へ向かう、雲が迫ってくるようで気が急く。
それとは裏腹に稜線は花で染まっている。
少し黄色がかったチングルマが山肌を覆い尽くす。素晴らしい!

花の稜線
稜線は花模様

 

比布岳からは鋸岳と北鎮岳が眼前。
焦る必要はないけれど、雲が迫ってこないうちに北鎮へ登りたいとついつい急ぐ。

鋸岳
鋸岳と北鎮への稜線

 

右手には間宮岳から北鎮岳分岐へ続く稜線、旭岳と熊ヶ岳、中岳分岐から裾合平へ続く谷筋がスッキリ見えている。

裏旭
大雪らしい雪模様が爽快だ

 

山肌にはイワウメの群落もあちこちに。

イワウメ
イワウメ

 

二番手

比布岳から一旦下って鋸岳を巻きながら北鎮岳へ登っていく。
見た目には長いが、実際は斜度も緩くそう大変ではない。

振り返ると比布岳と安足間岳そして雲に巻かれた愛別岳がかすかに見えている。
結局、愛別岳の雲は取れなかった。


安足間岳(左)と比布岳(中央)そして雲から顔を覗かせた愛別岳(右)

 

北鎮岳山頂からは御鉢平が一望だ。
一見すると何でも無く歩けそうな気がするが、昨年結構大変なことだということを思い知った。

北鎮岳から大雪の山々、御鉢平の雪模様を見ていて昨年より大分雪が少ないように感じた。
昨年はもっとビッシリ雪が付いていたような気が・・・、でも今年は雪が少なかったというニュースも聞いていないし気のせいかな?

旭岳
北鎮岳山頂から旭岳(右)と御鉢平の西半分

 

白雲岳
御鉢平の東半分と奥に白雲岳

 

北鎮岳は丸く優しい自己主張しない形をしている。
大雪で二番目の高さの山だけど、二番手は何事も控えめなのが通例だ。
私も現役時代、常に二番手を歩き続けてきた。

山頂にて
北鎮岳山頂にて

 

北鎮岳山頂で今日二度目のお昼ごはん、クリームチーズとジャムを厚塗しただけのパンが美味しくお腹に納まる。
食べられるのは元気の証拠、自分で自分が嬉しくなる。

 

持て余す

今日の予定は黒岳石室まで、愛別岳をパスした分だけ時間は十分ある。
それどころか時間を持て余してしまう。
考えても妙案はない、花達に引き留められるのを期待しながらのんびり行くか。

北鎮分岐から黒岳方向に伸びる雪渓、明らかに昨年より小さい。
しっかりした階段状の踏み跡があり、何の不安もなく降りられる。

雪渓
北鎮分岐から黒岳方向に残る雪渓

 

道は御鉢平から離れ、平坦な雲ノ平へ。
この付近も大きなお花畑が広がる所。

チングルマとエゾノツガザクラが白とピンクで可愛らしい。


白とピンクの競演

 

数は北海岳・間宮岳間に多いジンヨウキスミレが雲ノ平でも目につく。
鮮やかな黄色が目に染みるようだ。
(友人からジンヨウキスミレではなくエゾタカネスミレであると指摘していただきました。
謹んで訂正いたします。この他にも間違いに気がついた方はご遠慮なくご指摘いただければ幸いです。)


エゾタカネスミレ

 

キバナシャクナゲが周りを白で飾っている、もう何度も見ていて新鮮さは無いけれど見過ごしてしまうのも可哀想な気がしてしっかり鑑賞。


見慣れたキバナシャクナゲに声を掛けつつ

 

ミネズオウもこんなにあったのか? と感じるほど多く咲いている。
薄いピンクのもの、赤に近いものと色の変化も多い花だ。
小さな花達が揃って口を開けているさまは大勢でおしゃべりを楽しんでいるかのように感じる。


ミネズオウ

 

アオノツガザクラを見つけた。
夕張山地や日高では結構見るが、大雪ではあまり見ない花だ。
新鮮で上品に見えるから希少な花は得をする。


アオノツガザクラ

 

イソツツジも数多く見られる花、何処にでもある感じがするが受ける印象は場所によって違うように思う。
雲ノ平のイソツツジは明るく華やかできれいな印象だ。

イソツツジ
イソツツジ

 

石室

ゆっくりのんびり歩いたつもりだったが、黒岳石室には12:30に着いてしまった。
今日の一番乗り、まだお昼休みの感じの管理人さんに宿泊をお願いする。
料金は小屋泊り¥2,000。 テント¥500だ。

石室
黒岳石室

 

管理人は二人、一人はいかにも山好きで働き者の目がクリクリした好青年、もう一人は私より少し若めの柔らかく丁寧な物腰の人だった。

敷きゴザと毛布一枚が支給され、小屋の中へ。
二段ベッドでぎっしり詰めれば100人ぐらい泊まれそうな広さ。
石室というだけあってしっかりした造りである。

少し昼寝を楽しんでから小屋の周辺を少し歩いてみる。
何度も訪れている石室だから珍しいものは無いけれど、丁度夏雲が湧き上がっていて一幅の絵を見ている感じがした。

夏雲
湧き上がる夏雲と烏帽子岳

 

三々五々到着する宿泊者達、長い行動をするのか大きなザックの人が多い。
35リットルのザックなど私だけ、豪勢で豊かな山行より質素で簡素な山旅のほうが楽なのだ。
その代わり、速乾性シャツやサポート機能スパッツ、GPS、軽量化など安全や機能性、快適さにはお金を惜しまない。
爺は自らの体力と能力で確保すべき安全と快適さをお金で買って補完するが、その他のものは我慢するのだ。

 

天体ショー

夕方になり黒岳ロープウェイ最終時間を過ぎると人通りも無くなって静かだ。
今日の宿泊者は小屋に8人、テント4張り。

年配の管理人さんが私の所にやってきて「千歳の方だそうですね?」
そうですと答えると「私も千歳なのです」

それを縁に少しお話すると、山が好きで小屋の管理人になったのではなく星や天体が好きで苫小牧の青少年センターで天体関係の専門職として長年勤めて居られたという。
定年退職後は星を存分に見られる場所でその能力を活かしたいと山小屋の管理人を志望したそうだ。

どうも第一印象で山男らしくない雰囲気と物腰の柔らかさを感じていたが、これで良く分かった。
私も趣味を活かせたらと思い、環境省の支笏湖パークボランティアとして環境整備や自然保護のお手伝いしていると話すと共感してもらえ、打ち解け合うことが出来て嬉しかった。

夕食も終わり皆さん明日に向けて休む時間の午後8時頃、「まだ月が出ていて明るいので星空観測には適していませんが、木星や月の観測ができますので希望者はどうぞ」というアナウンスがあり外に出てみる。

倍率100倍と言う天体望遠鏡がセッティングされ、管理人さんの丁寧かつ分かり易い説明で月のクレーターや木星のリング、夏の大三角形や明るい恒星に纏わるお話などを聞かせていただき、思わぬ収穫に喜んだ。

後日管理人さんからこの時に撮った星空の写真を頂いたので併せてご紹介しよう。

星空
大雪の山肌にかかる天の川

 

 

星
石室のお花畑と星空

 

とても素敵な星空ですね。
私も星空の写真に挑戦したくなりました。

今後、管理人さんによる天体観測が石室に泊まる人達のお目当ての一つになるのではないでしょうか?

 

 

 


 

 

 

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